純ジャズ界デビューを経て、今はポップ・フィールドで活動するシンガー/ピアニスト(2004年1月28日、2006年6月13日)の東京公演は、なんと渋谷・オーチャードホールで3日間。その中日を見る。

 出演者全員でフロア・タムを叩くなか、少し語りっぽい歌をかましていくカラムは堂々。おお、素敵な始まり方ではないか。

 半数はピアノを弾かずマイクを手に歌う彼に加え、電気とウッド両刀のベーシスト、ドラマー、ギター/トランペット/打楽器兼任奏者、テナー・サックス/キーボード/打楽器兼任奏者。皆、コーラスも取る。いいバンドだな。そんな彼らのサポートのもと、カラムは伸び伸び、やりやりたいほうだい。動きほうだい。いまだピアノに立ち、ジャンプして床に降りるなんてこともやっているのか。ぜんぜん、年取っている印象はないよなー。

 で、いろいろな曲趣や見せ方を持つものを、ナンデモアリの僕の世界という感じで開くのだが、その以前から変わらぬ見せ方に接し、その様はジャズ系エンターテイナーのライヴ流儀そのものなんだよなーと思う。ときに、二管を擁するジャズ・コンボ演奏になる場面もあった(皆、ちゃんとジャズを通っている奏者ですね)が、カラムはどんなに弾けようと、ポップに振る舞おうと、根にあるジャズ的な何かを愛で、その奥であたためているのは明白。逆に言うと、ジャズ的素養を通っても、尖ってはいないが、ちゃんと活きたポップ・ミュージックの輝きを彼の表現は持っている。彼の2013年作はヒップホップ畑のダン“ジ・オートメイター”ナカムラさんですね。同作で一番変てこな仕上がりの曲は、スタンダードの「ラヴ・フォー・セール」だったが、それも悠然と披露。とかなんとか、接していて、これは巧みな、ジャズ活用ポップ表現だと頷いた。

 バンドの面々が皆30代半ばふうで、カラムと同年代か。ベース奏者はまだ20代だろうな。で、かように同世代で固めているところがまたいいと思えた。そんな彼らがジャズと大衆的なポップスを自在に行き来している様がなんとも頼もしく思えてくるから。でもって、シナトラやベネットら大御所が昔いた位置を、このカラムは年齢相応のノリでちゃんと謳歌していると、思えた。

 一部ピアノ弾き語りなども披露したが、何をやろうとカラム印。改めて、小さな体格に似合わぬ野太い歌声は存在感るナと痛感させられた。


▶過去の、カラム
http://43142.diarynote.jp/200402051857060000/
http://43142.diarynote.jp/200606182131580000/

<今日の、危惧>
 この日は、ロス・ロンリー・ボーイズ(2004年9月17日、2012年2月7日)公演もあり。どちらに行こうか、当日まで迷っていた。前回見たのが2年ぶりと8年ぶり、という事実を天秤にかけて後者に決めた、という感じか。雨が降っていたので、家から近い会場にした、とは言うまい。ともあれ、オーチャードホールでの席が中央気味のすごい前であわわ。普段ブルーノートとかで見るより近いよ〜と、気後れ。シラフだと、なんか落ちつかね〜。だが、カラムが出て来て、すぐに多くが立ち上がる。ありゃー、ちゃんとしたホールでやる意味、ないじゃん。で、すぐに、床がぐらぐら揺れる。なんじゃあ、こりゃ。恐怖心を感じる。この会場はクラシック用途ホールだから、余計観客の身体の揺らし方に留意していないのかもしれないが、でもカラムの実演はそれほどビートは強くないわけで、これがもっとダンサブルな出演者だったら、この会場の揺れは一体どうなってしまうのダと一瞬マジで考えた。それから、いろいろ粗雑な使われ方をするピアノはカラム側の持ち込みか、レンタルか。普通はレンタルだろうが、だったら業者は真っ青だよなー、とか、そんな余計なことも考えた。