ステージ上には、初っぱなから3人の奏者があがった。ベーシストのロン・カーター(2001年6月7日、2004年1月14日、2010年5月6日、2011年1月30日、2012年3月3日、2012年12月11日)を二等辺三角形の頂点に置くように、ラリー・コリエル(2013年3月8日)とピーター・バーンスタインという2人のギタリストが左右に座る。なるほど、そう来たか。ギタリスト2人は別々に出て来て、それぞれデュオ演奏をするとぼくは思っていから……。3人はスーツ姿で、ネクタイ着用。カーターはいつでもそうかもしれないが、コリエルは普段着だった前回来日時と比すとかなり違って見える。先がヒッピーあがりのスーダラじじいという風情だったのに対し、今回は老大学教授ふう。馬子にも衣装?

 本来『アローン・トゥゲザー』(マイルストーン、1972年)というデュオ名盤を持ち合うギタリストのジム・ホール(1930年12月3日NY州バッファロー生まれ、2013年12月10日NYCで逝去。2005年1月18日、2012年6月4日)とロン・カーター(2001年6月7日、2004年1月14日、2010年5月6日、2011年1月30日、2012年3月3日、2012年12月11日)のデュオ公演が本来組まれていたが、昨年12月のホールの逝去を受けてトリビュート公演に変更となっての出し物。だが、よく考えてみれば、ジャズ・ギターの決定的な魅力を体現したホールのギター演奏はまぎれもなくホールだけのものであり、他の誰がカーターとのデュオ相手役をやっても荷が重いものだろう。だったら、持ち味の異なるギタリスト二人掛かりでホール敬愛の情をだしたほうが、理にかなっているというものだ。その2人は、カーターが声をかけている。

 演目は『アローン・トゥゲザー』収録曲やホールが取り上げていたスタンダードなど。また、中盤にはバーンスタインとコリエルのソロ演奏曲も1曲差し込まれる。バーンスタインはホールから教えを受けていたことを如実に語る明晰な演奏であり、コリエルはアコースティック(フォーク)・ギターに持ち替え、透明感に溢れた調べを披露する。1960年代にジャズ・ロック調演奏で注視されたコリエルであり、今もその流れを汲むライヴ盤を出していたりもするが、今回の彼は3人で演奏するときもフル・アコースティックのギターを持ってしみじみと演奏した。

 すっくっと立つカーターは相変わらず格好いい。曲によって臨機応変、ソロはとったり、とらなかったりしたが、ちゃんと自らが土台を抑えた三位一体パフォーマンスであるのは、随所から伝わる。曲目も、1曲づつのギタリストたちのソロ・パフォーマンスを除いては、彼が決めたようだ。そうした1時間強の出し物に接して印象に残ったのは、重なりの妙を意識し、抑制の美がとられていたこと。手癖で突っ走ろうとすれば、いくらでもそれで流れることができるはずだが、ホールへの思慕が安易な方向に行くのを良しとしなかったのダと、ぼくは思った。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。

▶過去の、ホール
http://43142.diarynote.jp/200501222324430000/
http://43142.diarynote.jp/201206110916017268/

▶過去の、カーター
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm 2001年6月7日
http://43142.diarynote.jp/200401140000000000/
http://43142.diarynote.jp/201005071023536171/
http://43142.diarynote.jp/201102091715522875/
http://43142.diarynote.jp/201212141028575543/ (ジュリアード・ジャズ・トリオ)
▶過去の、コリエル
http://43142.diarynote.jp/201303110415585115/


<今日の、遠い目>
 まだ日がさす16時半ごろライヴに行くために最寄り駅に向かう道すがら、ジョギングする人たちと何人(組)か会う。この寒いなか、皆すごいなあ。ぼくなら、風邪を引く危惧を抱いてしまい、尻込みする。と、書いて、我ながら、なんて虚弱なのかと自覚。真冬にも平気でサッカーの試合やスキーをやっていた(って、スキーは真冬しかできないが)ことがあったのが、まるで嘘のよう。そういえば、先日スポーツ・チャンネルでアメリカ/カナダのアイス・ホッケーNHLの試合を放映していたのだが、それが寒々しさにも程があるといった感じの野外リンクでのもので、びっくりしたことがあった。そこに、客が白い息はきながらいっぱいいるー。欧州のサッカーの試合やアメリカン・フットボールの試合なども吹雪のなかフツーに観客が見ていたりもし、ありゃーと思わされることがあるが、あちらの方々のスポーツ観戦の根性の出し方はワケ分らんなー。と、書きつつ、自分のヘタれさにあきれる。