昨日に続く帯公演で、場所は同じく、都立大学・パーシモンホール。やはりステージ上にはグラウンド・ピアノが1台。あとは、登場するパフォーマー次第という、設定。簡素さは、すごい広がりや自由を生むのだな。

 最初に舞台に出てきたのは、平井真美子。ぼくは初めて接するが、昨日会場で会った人は映画の音楽を作っているといっていたので、普段は作曲家として活動しているのかもしれない。ポロポロと自らの記憶にある宝石を拾い上げるように、品良くすうっと鍵盤音を紡いで行く。何の根拠もないが、もっと激しい演奏が魅力的なのではないかとも、ふと感じる。どこか端々に、情熱を感じたからか。

 そして、2番目に登場したのは、ジェーン・バーキン(2007年11月20日、2011年4月6日)の海外公演のサポートや今NHKの大河ドラマの劇中音楽を担当している中島ノブユキ(2005年10月21日、2011年4月6日)。ゆったり、意のまま。途中MCで、汗びっしょりですみたいなことを言っていたが、緊張感や優美な音の流れに至るまでの演奏者のなかの細胞活動の高まり(いい言葉がパっと出てこないので、この変な言い方でごまかす)ってすごいのかもしれぬ。彼は途中で、マルグリット・デュラス原作/脚本/監督の映画「インディア・ソング」のテーマ曲(その映画の音楽を担当したカルロス・ダレッシオと、デュラスの共作)も演奏。そのどこかブルージーでもあり諦観と退廃を重ねたような曲種を持つその曲はキップ・ハンラハン(2000年1月12日、2001年5月15日、2011年12月8日)が1992年デビュー作でも取り上げていたが、やはりこの曲の訴求力は抜群だ。

 この後、ドイツ人のニルス・フラーム(見たかった。彼は電気キーボードも用いたようだ)と、高木正勝(2004年4月27日、2013年8月28日)が出て来たはずだが、“しがらみ食事会”の予定が入ってしまい、会場を退座する。

▶過去の、中島
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http://43142.diarynote.jp/?day=20110406
▶過去の、ハンラハン
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▶過去の、高木
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<今日の、都立大学駅>
 上りのホーム(だけ)に、無骨かつ乱暴に鉄柵ががっつり埋めてあって、驚く。電車のドアの部分はもちろん途切れているのだが、ここのところけっこう設置されている開閉式の柵ではなく、簡素な鉄パイプ柵がホームに埋め込まれているのを見るのは初めて(のような)。なんか東横線のイメージには合わないと思った。って、どういうイメージよ? それが必要なほど、この駅は朝混むのだろうか? 

 シンガー/ギタリストのラウル・ミドン(2003年7月20日、2005年10月24日、2007年9月1日、2007年11月26日、2009年10月8日、2011年9月2日)と、エレクトリック・ベーシスト/シンガーのリチャード・ボナ(2000年12月6日、2002年1月9日、2002年9月19日、2002年12月14日、2004年12月15日、2006年2月16日、2008年10月19日、2010年2月5日、2010年6月6日2011年1月25日、2012年5月14日、2012年12月15日)の名前が重なった公演。異なる出自を持つものの、同じくニューヨークをべースとするミュージシャン同士であり、1966年と1967年生まれと、同年代の二人でもある。この興味深い組み合わせで2年前に欧州ツアーしており、ミドンの近く出る新作にもボナは関与しているらしい。

 その2人の重なりは火花を散らすという感じではなく、双方共通する部分を愛で、磨き合うという感じか。で、その最大公約数は、所謂AORという持ち味にて聞き手には届けられたか。曲はお互いの持ち歌が中心だが、ヴォーカルは共にとり、ハーモニーを付け合ったりもする。とかなんとか、音楽のムシであり、音楽を最良のコミュニケーションの手段と位置づけているのが手に取るように分るやりとりを、ミドンとボナは基本ほんわか披露した。

 その2人をサポートするのは、キーボード奏者のエティエンヌ・スタッドウィック(2012年12月15日、他。スリナム出身と紹介されていた)とドラマーのルドヴィグ・アフォンソ(キューバ出身とか)。彼らは、ボナ人脈の奏者。途中で、かつてボナが単独公演のとき嬉々として披露していたウェザー・リポート(尊敬する、ジャコ・パストリアス作曲)の「ティーン・タウン」も演奏する。2人はその曲で掛け合いを見せたのだが、そのさいミドンはボナにひけをとらない優れたインプロヴァイザーであることを示しもした。

▶過去の、ラウル・ミドン
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http://43142.diarynote.jp/200711290931440000/
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▶過去の、リチャード・ボナ
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<今日の、どーでもいい考察>
 エスカレーターの片側は歩いて登る人なのために、開けておく。それ、関東圏だと右側で、関西圏だと左側だそうな。その違いについての誰かの講釈を見たか聞いたかしたことがあったが、ピンとこなかった(ゆえに、論旨も忘れた)。ぼくがその件について、思い当たるとしたら、関東圏のほうが謙譲の気持ちを強く持っているからではないか。まず、人は右側通行という刷り込みがあるのを前提としての話であるが。
 右は“正”の列であり、左は“副”の列。本来、エスカレーターは階段と異なり動かず、立って用いるものであり、そういう傾向外の使い方をしようとする人は“副”の側を行くべきというのが、関西の考え。一方、関東のほうは、すみませんねえ急ぐ人がいるのにのんびり立ってという思慮のもと、立ち止まる人は副たる左の列に立つ。ぼくは、そう解釈している。それ、関東のほうが卑屈でもあるということ? 完全に東側文化で育ち、生活してきているぼくではあるが、うどんは関西風のほうがいいな。

 サンプラーを巧みに用いたシンガー・ソングライターであり、彼女が生まれ住むアルゼンチンの創造性の高さもあっさり示しもしちゃうファナ・モリーナ(2002年9月7日、9月15日。2003年7月29日、2011年8月1日)の公演は、やっぱりファナ・モリーナの妙味全開だった。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。

 5年ぶりとなるはずの新作『ウェンズデイ21』(クラムド・ディスクス)のタイトル・トラックがショウのオープナー。付属音送り出し奏者とドラマーを従え(プリセット音も過剰にならず用いる)、清新にしてほのかな流動性や刺も持つ設定とともに、今っぽい歌心をすうっと放出。コンテンポラリーだが、その襞にはアルゼンチンで育まれてきた揺れや情緒が息ずいていると思わせるのも、うっとりできる。
 
 アンコールの1曲目だかで、彼女はギター弾き語りでパフォーマンスを始める。その素の瑞々しい実演に触れて、まずは生身の実演能力が秀でた人であることを再確認。確か途中から、サンプラーを使い出した(ここらへんの記憶が曖昧)はずだが、1曲ぐらいは、まったく裸のパフォーマンスを披露してくれても良かったかも。そうすると、彼女の飛躍力もまた明快に伝わるはずだから。

▶過去の、ファナ・モリーナ
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<今日の、徘徊>
 ライヴのあとに知人と2軒流れたあと、共通の知り合いがいるクラブに乱入。うひゃあ。クラブにふらりと行くなんていつ以来だあ。

 今年20年ぶりのヴォーカル曲主体の新作『Love, Gratitude and Other Distractions』をリリースした、在NY の売れっ子セッション・ベーシスト(2008年12月7日、2009年8月19日、2012年8月21日、2012年11月26日)のリーダー公演だが、ステージに出て来た本人を見てあらら。もともとスリムな人だけど、より痩せた。腰回り、細っ。ちょい病気とか、思ってしまう感じもアリ。が、前と同様に動いているし、問題ないんだろうな。デイヴィッド・サンボーン(2012年3月3日、他)も1990年代のいつごろか病気をへて急に痩せたけど、その後もその細い体躯でフツーに創作/ライヴ活動を維持しているしな。

 丸の内・コットンクラブ、ファースト・ショウ。リーにつく、ザ・フレンズと名付けられたバンドの面々は、ドラムのスティーヴ・ガッド(2004年1月27日、2006年11月20日、2010年12月1日、2012年11月26日、2013年9月3日)、ギターのチャック・ローブ(2004年1月27日、2012年11月26日)、いろんな楽器を担当するジュリオ・カルマッシ とキーボード奏者のオリ・ロックバーガー。前回のウィル・リー単独公演(2012年11月26日)とまったく同じ顔ぶれですね。

 鍵盤、トランペット、テナー・サックス、ギターなどを曲趣に合わせて器用に持ちかえるカルマッシは相変わらずほうと思わせる。1981年イタリア生まれの彼はなんと、パット・メセニー(2013年5月21日、他)の新クインテットであるパット・メセニー・ユニティ・グループの一員に抜擢されてしまった。同グループはパット・メセニー・ユニティ・バンドの4人にカルマッシを加えた編成で、ザ・パット・メセニー・グループ的な広がりある楽曲を演奏するという主題を持つ。その新グループは来年2月にアルバムをリリースするとともに、半年にわたるツアーを行うことがすでに決定。日本公演はその終盤の秋となるようだ。もちろん、カルマッシもそれに同行する。

 イナセなファンク・インストで始まったショウは新作の収録曲(チャップリンの「スマイル」のカヴァーも)はもちろん、前ソロ・アルバム収録曲や、彼の知名度を(特に日本で)広めた24丁目バンドの曲まで、いろいろとエンターテインメント性を全面に掲げつつ開示する。そして、受け手には、彼の山ほどの音楽活動の質や奥行きがなんとな〜く、でも確実に伝わるというわけ。

 話はとぶが、12月中旬にプロモーション来日したパット・メセニーにカルマッシ参加の顛末を聞いたら、「ウィル・リーから、僕のグループに入るのが夢のイケてるイタリア人がいると言ってきたから」との返事。あなたは忙しいのに推薦を受けるとちゃんとミュージシャンをチェックするのかと問うと、「まあできるだけ広く門戸はあけたいとは思うけど、そこは(信頼できる)ウィル・リーからの話だったからさあ」。さすが、リーさん、同業者からの信任が厚いですね。彼の口利きレコーディング人事については、過去にはこんなこともありました。→http://43142.diarynote.jp/201009010955348098/

 ウィル・リーの原点にあるのは、ザ・ビートルズ。そういえば、24丁目バンドの同僚にして現在USポップ音楽界セレブのスティーヴ・ジョーダン(2005年11月13日、2006年11月20日、2006年12月22日、2010年10月26日)もザ・ビートルズ・クレイズで、かつて24丁目バンドで来るたびに、東京のビートルズ・ショップに行っているという話があった。ともあれ、リーは楽しみとしてザ・ビートルズ憧憬コピー・バンドであるザ・ファブ・フォウと名乗るバンドを嬉々として組んでいて(もともと彼が伴奏者関与していた、<ザ・デイヴィッド・レターマン・ショウ>派生のユニットかも知れない)、この秋には全米6カ所をツアーしたはずだし、次はそれで日本にやってこないかな〜。

▶過去の、ウィル・リー
http://43142.diarynote.jp/200812150312308154/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090819
http://43142.diarynote.jp/201209180912154167/
http://43142.diarynote.jp/201212101904379741/

▶過去の、ガッド
http://43142.diarynote.jp/200402051855170000/
http://43142.diarynote.jp/200611221236140000/
http://43142.diarynote.jp/?page=26
http://43142.diarynote.jp/?day=20130903
http://43142.diarynote.jp/201212101904379741/

▶過去の、ローブ
http://43142.diarynote.jp/200402051855170000/
http://43142.diarynote.jp/201212101904379741/

▶過去の、ジョーダン
http://43142.diarynote.jp/?day=20051113
http://43142.diarynote.jp/200611221236140000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20061222
http://43142.diarynote.jp/201010301012548114/


<今日の、今年最初>
 その後、某雑誌社の忘年会に顔を出す。そして、そこで会った人たちを2軒つれまわす。どーも、すみません。

 ケルト系の担い手が出る年末恒例音楽公演、錦糸町・すみだトリフォニーホール。

 最初にでてきたのは、アイルランドのトラッド・グループのルナサ(2001年10月19日、2003年4月11日、2010年12月11日)。余裕にして、機智、ユーモアあり。アコースティック・ベース奏者はエクストラだそうだが、これがなかなかの使い手。彼のベース音がより奥行きや誘う力を喚起していたのは間違いない。一部には、カナディアン・タップダンスとフィドルのステファニー・カドマンが加わり、まさしく華をそえる。

 2番目は、スコットランドのハープとフォドル奏者のユニット、カトリオーナ・マッケイ&クリス・スタウト(2005年2月1日、2008年11月9日、2009年12月6日、2009年12月12日)が、優美にして積み重ねが導く皺のようなものを表出する。オフではあっけらか〜んとしたマッケイ嬢は相変わらず派手ハデな格好、短い丈のスカートでハープを両股で挟むというのは、ある種のアダルトな娯楽性喚起を狙っているのだろうか。

 そして、3組目はアイルランドの国民的アコーディオン奏者のシャロン・シャノン(2003年12月20日)。なんと、10年ぶりの来日となるのか。スケジュール、なかなか抑えられないのかな? 彼女の新作『聖人と悪党』はシェイン・マガウアン(2005年7月29日)やウォーター・ボーイズやジャスティン・アダムズ(2010年10月11日)らいろんな人を迎えていたが、2人のギター(1人はヴォーカルも曲によってはとる)やフィドル奏者を従えてのショウはトラッドを下敷きにしつつ、なかなかに広がりを持たせていて、ほおうと頷く。そういう広がりある音楽性を持ってこそ、多大な人気を博してもいるわけか。披露した曲のなかには、スティングの「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」やザ・バンドの「アケイディアン・ドリフトウッド」を思わせるテイストのものもあった。

▶過去の、ルナサ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-4.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20101211
▶過去の、マッケイ&クリス
http://43142.diarynote.jp/200502041827080000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20081109
http://43142.diarynote.jp/200912091113106654/
http://43142.diarynote.jp/201001051620426983/
▶過去の、シャノン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-12.htm

<今日の、しょぼん…>
 ちょい前、シャワーを浴び、ロクに髪をかわかさず濡れたまま就寝したら、朝起床時に扁桃腺の腫れを感じる。端的に言えば、風邪を引いた。熱っぽいけどまあいいかと放っているが、インタヴュー時に咳が出るのは、(とくにシンガーの場合は)まずいと気付く。ものすごーく久しぶりに、ライヴを見た後に流れず、静かに家に帰った。
 多大な評判を取った前回公演(2012年12月17日)から、ちょうど1年ぶりの来日。南青山・ブルーノート東京で丸4日間持たれる帯公演の初日、ファースト・ショウ。ほぼ、満席。その盛況の様には、初来日であった前回時の受け手のはち切れんばかりの期待をそのまま保っているナと思わせる。
 
 シュナイダーが指揮するのは、全19人。サックス・セクション6人、トランペット・セクション4人、トロンボーン・セクション4人、そして、ピアノ、アコーディオン、ギター、縦ベース、ドラムが、一人づつ。サックス奏者が前回より一人増え(今回新たに参加し、1曲ソロ・パートも与えられたスティーヴ・ウィルソンって、クリス・クロスやストレッチ/GRPからいろいろリーダー作を出していた御仁?)、トランペット・セクションは半数顔ぶれが変わっていた(うち、一人は逝去。シュナイダーは1曲をそのローリー・フランクに捧げた。彼女は黒田卓也に個人教授をしていたはず)が、他は前回と同じ人たち。おお、顔ぶれが安定している。いい状態にあるんだろうな。

 瀟洒にして、悠然。受け継がれてきたジャズ・ビッグ・バンド様式を踏まえつつ、ありったけの創意と工夫としなやかな突っ張りをいろいろと介し、清新な手触りやもう一つの文様を持つ、同時代のジャズ 的集団表現を浮き上がらせる。やはり、秀でた現代ジャズ・オーケストラ、最たる存在ですね。ながら、その生理的に気張った音群はシュナイダーの高潔な人間性もあるのだろう、けっして肩肘張ったものでも、難解なものでも、過度の強度や暗さを持ったものでは一切ない。微笑みにあふれた音楽の天使たちが舞っている感じを持つことは、多くの聞き手が認めるところだろう。MCでブラジル音楽の効用にちらり言及していたが、つきるところ、彼女は今という環境の中で大きく呼吸をしながら作曲/編曲し、思うままアメリアの風景を描いているのだと、ぼくは思った。

 しかし、少女っぽいというか初々しさを保ちつつ、彼女は本当にうれしそうに指揮をする。そんな、映えと誉れある様に触れつつ、ジャズの世界の女性リーダーの歴史について、思いはとぶ。奏者よりも何気に、龝吉敏子(2013年4月30日)やカーラ・ブレイ(1999年4月13日、2000年3月25日)といった大型表現に邁進して名声を得た女傑たちがすぐに思い出されるのは偶然か。そういえば、シュナイダーは学生時代に龝吉敏子のオーケストラに触れて、おおいに感化されたんだっけ。才気ある女性ビッグ・バンドの系譜、何気に美しいな。

 お客さんにはビッグ・バンド関与者比率も低くはなかったのだろうが、ジャズ楽器奏者の浪漫のようなものが会場には流れていて、それにもぼくは甘酸っぱい気持ちになったか。ぼくはロック・バンドの経験しかない人間だが、大勢で一つの楽曲/テーマに向かう団体表現にはコンボ活動では味わえない醍醐味や達成感が山ほどあるのだろう。それ、戦術徹底のもと個人がクリエイティヴに動く秀でたサッカー・チームのレギュラー選手が勝ち試合で得る心持ちと重なるのかな? ともあれ、送り手側と受け手側の共通意識/快感の交換がそこにはあったような。。。。

 彼女のショウはけっこう各セットごとあまり演目がダブりがない形でなされるようだが、このセットは新曲も披露。そんな彼女の久しぶりに出た2013年新作(相変わらず、アーティストシェア〜http://43142.diarynote.jp/201106280315179045/ を参照のこと〜 を介して、制作されている)は、クラシックの女性ソプラノ歌手をフィーチャーし、クラシック的な環境/自作曲で勝負したアルバム。悪戯っぽい、澄んだ眼差しを持つ彼女はこの後はどんなんことをやるのだろうか。

▶過去の、シュナイダー・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/201212190844487864/
▶過去の、龝吉ジャズ・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/201305071422511328/
▶過去の、ブレイ・ビッグ・バンド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm

<この10日間の、困惑>
 風邪ひいて、微熱が続いている。で、鼻の粘膜がずたずた、ダルさを感じるとともに、それが一番発熱しているのを実感させるか。例により医者には行く気はまるでないが、さすが薬局で風邪薬を購入。が、飲んでも眠くなるばかりで、効く感じもないので、それもやめ。あ“—。
 体調不良であることは活発さをぼくから確実に奪い、ライヴ行きもいくつか辞めさせている。受けた原稿やインタヴュー(エルヴィス・コステロの取材が直前にとんだが、咳がけっこう出ていたので、残念と思うよりも、ホっとしました)は通常通りちゃんとこなしているものの、はてさて。多少は体調改善の兆しあり(食欲はそれなりにずっとあったんだけどね)と感ずるのか、忘年会に顔を出した日もあったものの、ライヴ行きとしては本日10日ぶりに公演会場に出かけた。ま、いつまでも若くはないし、タラタラ行きます。

カニサレス

2013年12月18日 音楽
 フアン・マヌエル・カニサレスは、かつてジャズ/フュージョン方面でも多大な知名度を持ったスペイン人ギタリストのパコ・デ・ルシアのバンドに第2ギタリストとして在籍していたという。怖い顔つきが苦手なこともあり、ぼくはデ・ルシアの演奏にそれほど触れてきていないが、この晩のカニサレスの広がりある流儀や、セカンド・ギターとしてついたフアン・カルロス・ゴメスの同様に光る演奏に触れて、デ・ルシアはやはり達人であったのだろうなと、孫引き的に感じた。新宿文化センター、大ホール。

 絶妙に絡む2人のギタリストに加え、カスタネットと手拍子(パルマ)と踊り(バイレ)とのチャロ・エスピーノ(女性)、カホンと手拍子と踊りのアンヘル・ムニョス(男性)が加わる。その2人、ちゃんと踊った曲は少ないのだが、スタイルがあまり良くない男性の踊りは凄いと思わせられたな。

 そういう編成だけを取るとフラメンコの伝統に沿った実演を聞かせる感じだが、これが違っていて(オラっとかいう、フラメンコに欠かせない掛け声があまり聞こえない実演でもあった)、へえええという感じで見きってしまう。端的に書けば、洗練があり、俯瞰する視野の広さを存分に出すわけだが、秀でたギター技量を中央にばっちり置きつつ、えも言われぬグラデーションを悠々と出していく様にはほう。ショウの1部の中盤ぐらいまではクラシックの素養を存分に活かしていると感じたが、どんどん様相は広がりまくり、ある種のスペクタクル性がどんどん膨らんで行く。うぬ、これはめくるめく現代フラメンコ・ギター表現じゃ、と首をふりました。

 ステージ背後には、でかい画面で、手元などを映す映像が映される。左手にせよ、右手にせよ、カニサレスは本当に繊細にして凝った指裁きをしていて頷く。ただ、実際の出音と映像はほんの少しタイム・ラグがあって、それは残念。

 しかし、トマティート(2011年11月10日)といい、ビセンテ・アミーゴ(http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-5.htm、2013年10月17日)といい、今回のカニサレスといい、ぼくが見たことがあるフラメンコのギタリストはちょっと見、色オトコふうに決めるなー。

▶過去の、トマティート
http://43142.diarynote.jp/201111141214381161/
▶過去の、アミーゴ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-5.htm
http://43142.diarynote.jp/201310181020496675/

<今日の、天候>
 降雪が報じられ、真冬用の厚いコートとヘヴィ・デューティな靴を履いて出かける。が、雪にはならず、雨が降るばかり。コドモなぼくはどこかで雪がチラつくのを期待したか。そういえば、スキーにはまっていたときはこの時期になると、スキー場の降雪情報にそわそわしていたよな。この晩は、新宿荒木町で飲む。吐く息が白く見えた。

ザ・ルーツ

2013年12月19日 音楽
 現代米国ポップ・ミュージック界の重要人物であるクエストラヴ(こんもりアフロ、辞めた。少し、痩せた)率いる、人力ヒップホップ・バンド(2002年12月29日、 2003年12月2日、2004年9月19日、2007年1月15日)のホール公演、渋谷・0-East。スーザフォン奏者を含む7人編成にて、1時間45分をノンストップで遂行。自在のサウンド展開に、ブラック・ソウトのラップや奏者ソロがいい感じで乗る。実はクエストラブの所には2本のマイクが立てられていて、うち1つはメンバーへの指示出し用のもののよう。その指示をプレイヤーたちはイアーフォン型のモニターで聞いて演奏していたみたい。うーん、さすが敏腕プロデューサー。彼のドラムの音、よかったなー。ニューオーリンズのブラス・バンドに不可欠な低音金管楽器であるスーザフォン奏者はベース音と重なり音が拾いにくいところがあったが、そういう酔狂な楽器奏者を入れる姿勢が重要ナリ。軽いプラスチック製ではなく金属製のものを使っていたが、それって子供をおんぶして演奏するようなものか。それで、派手にステップを踏んだり、ステージを走り回ったり、半回転ジャンプを決めたりするデイモン・ブライソンは化け物と言うしかない。歌もときにつけるギタリスト(キューバ出身のかっとび打楽器奏者/歌手のペドリート・マルティネスに髪型ともども似ている)、ベーシストはかなり整備された動きやフリも取る。これまで見た中で一番質が高く、娯楽性も高かったが、その奥から随時イケたグルーヴとともに”繋ぎ”たい=統合や俯瞰するぞという意志があふれており、それに大きく頷く。クール&ザ・ギャングやカーティス・メイフィールド曲等も差し込んだりもし、途中にはZeebraがちょい出て来たりもした。満足度、とても高し。ステージに両端にはマイクが立てられていたが、この晩のショウがライヴ・アルバム化されても、なんら問題ないだろう。終演後、メンバーたちはプロっぽいパフォーマンスとは裏腹に、だらだらとアマチュアっぽく(?)ステージに残り、観客とコミュニケーションを取った。その落差にも、なんかほんわり。26日の毎日新聞夕刊に、ライヴ評が出ます。

▶過去の、ザ・ルーツ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040919
http://43142.diarynote.jp/200701201415300000/

<今日の、懺悔>
 かつてこの項で書いたことがあるけど、ぼくは偏屈だけど広角型でもあった英国人ロック・ミュージシャンであるジョー・ジャクソンの大ファンだった。同じころに世に出て、似たような位置にいたエルヴィス・コステロ(2002年7月5日、2004年9月19日、2004年12月8日、2006年5月31日、2006年6月1日、2006年6月2日、2011年3月1日)なんか、目じゃないほどに。だが、基本ずっとメインストリームでい続けつつ、いろんな方面にも着手したアルバムをいろいろ出す機会を持つコステロと異なり、ジャクソンはどんどん存在感が薄くなり傍系の人になってしまい、実際アルバムの面白さも曲作りの部分で翳りが見られもし、ぼくの興味は減じてしまった。まあ、もともと彼は作曲に関しては、ジョー・ウォルシュ(2011年3月5日)のあり方とも似ているのだが、ワン・パターンなところもけっこう持つ。だが、ファンだとそのネタの重なりも愛おしく感じる部分も出てくる……とは、思っているのだけれど。 
 個人的には、なんか昔の財産に頼ったライヴ盤が散見されたのも、ミュージシャンとしての輝きが減じているような気がして、悲しい気持ちを得た。だって、バンド・サウンドだって、昔のほうが良かったと思えるし。ただし、2010年の欧州ライヴ盤ではイアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズの洗練フュージョン曲「インビトゥイーンズ」のカヴァーを披露していて、これは注目したい。あの曲、ぼく大好き。と、ここまで前書きで、以下本題……。
 そんなジョー・ジャクソンがなんとクエストラヴをドラマーとして起用していたアルバムを出していたのを、今になって知った。2012年リリースの『ザ・デューク』(レイザー&タイ)。米国黒人音楽史上もっとも優美で成熟した集団表現を作り出したなデューク・エリントンの楽曲を取り上げ、彼なりに披露した内容をそれは持つ。エリントン・トリビュート盤というと、必ずその側近だったビリー・ストレイホーン単体による楽曲も収められるのが常だが、ジャクソンはきっちりエリントンの名が作者としてクレジットされている曲を選んでいて、そのこだわりはとても彼らしい。
 フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)のサンプル音使用や他のドラマーが叩く曲もあるが、クェストラヴもしっかり参加。わー、今年ザ・ルーツとエルヴィス・コステロはブルーノートから双頭リーダー作を出しているが、クエストラヴはコステロとやる前にジョー・ジャクソンとも絡んでいたのか。でもって、ザ・ルーツ同行メンバーであるキャプテン・カーク・ダグラス(ギター)やデイモン・ブライソン(スーザフォン)の名もそこにはある。さらには、ディープR&B歌手のシャロン・ジョーンズや真性ロッカーのイギー・ポップ、ジャズ界からはベーシストのクリスチャン・マクブライド(2000年11月1日、2006年9月17日、2007年12月18日、2009年8月30日、2012年9月8日)やヴァイオリニストのレジーナ・カーター(2006年9月17日、2008年7月19日)も同作には参加。内容的には、ベスト10に入れようかと悩むものではないが、ジャクソンの洒脱や好奇心や捉えどころのない資質はそれなり百花繚乱的に出ていて、手の伸びるところに一応CDを置いておきたいナという気持ちにはさせる。ちなみに、ジャケはエリントン御大の顔の写真を少し処理したもの。JJさま、あなたの力作を見落としていて、本当にごめんなさい。

▶過去の、コステロ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm
http://43142.diarynote.jp/200410121003440000/
http://43142.diarynote.jp/200412111752390000/
http://43142.diarynote.jp/200606071933120000/
http://43142.diarynote.jp/200606071936190000/
http://43142.diarynote.jp/200606101341360000/
http://43142.diarynote.jp/201103040825532252/
▶過去の、ウォルシュ
http://43142.diarynote.jp/201103091707591166/
▶過去の、マクブライド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm
http://43142.diarynote.jp/200609190457510000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20071218
http://43142.diarynote.jp/200909120642135954/
http://43142.diarynote.jp/201209191209186663/
▶過去の、カーター
http://43142.diarynote.jp/200807200958460000/
2006年6月2日、2011年9月9日
▶過去の、ジョー・ジャクソンを扱った記述
http://43142.diarynote.jp/?day=20060602
http://43142.diarynote.jp/201109151818437240/
 南青山・月見ル君想フ。まず、トール・トール・トゥリーズのマイケル・サヴィーノが一人出て来て、パフォーマンスをする。おお、優しい顔つきながら、ガース・ハドソン(2013年8月2日)のような立派な髭をたくわえている。

 トール・トール・トゥリーズはNY在住のシンガー/バンジョー奏者であるサヴィーノを中心とするグループとして組まれ、既発の2枚のアルバム(http://www.talltalltrees.com/music.htmlで、全曲聞くことができる)はグループの音として録音されている。バンジョー音が中央にあったり、カントリー/フォーク(マリアッチ調とかまで、ときにいろいろ広がる)を芯にもっていることもあってか、本国ではフリート・フォクシーズ(2012年1月20日)やマムフォード&ザ・サンズ(2013年7月30日)などを引き合いに出して、彼らは紹介されていたりもする。シャープなロック感覚や現代感覚が奥に息づいているということではフォクシーズの島のほうにぼくは入れたくなるが、トール・トール・トゥリーズの音像は捩じれた部分はあるもののもっとシンプルだ。ま、フォクシーズにせよ、マムフォーズにせよ、東京公演は大バコのスタジオコーストでやっているわけだが、まさかあまり話題になっていない日本でトール・トール・トゥリーズを見ることができるとは思わなかった。

 初来日で、日本にはツアーをしていたドイツから来たそう。今は完全にサヴィーノ個人のユニットとして活動しているようで、堂にいった一人実演による出音はアルバムで聞くことができるものとは異なる。弓で弾いたりバチでバンジョーの皮を叩いたり(その叩き方が、ボーランのそれを想起させる。彼はアイリッシュ・ルーツなのかと思ったり。その苗字だと、イタリア系?)、バンジョー1本でいろんな弾き方を見せ、その音をサンプリングしまくってサウンドを作り、そこに歌心アリの歌をのせる。いろいろ音を重ねても、ケラー・ウィリアムズ(2000年12月17日、2007年10月21日)のような大道芸臭は出てこない。

 そんなサヴィーノはカスタム・メイドのバンジョーを使っていて、丸いボディの裏はオープンにして音を拾うマイクを付けていて、ときに顔をそこに寄せて歌いそこからも歌声を拾わせたりもする。また、ボディ背面をスピーカに向けてのフィードバック音送出も時に見せる。そのバンジョーには小さな電球群も仕込んでいて、光の色がときどき変わった。他愛ないけど、そういう所作に顕われているような、愛らしさが彼にはあったのも間違いない。いろいろ、おもしろかった。また、見たい!

 そして、休憩を挟んで、日本人の両親のもと米国で生まれ育ったカオル・イシバシの個人プロジェクトであるキシ・バシの実演。彼は歌とヴァイオリンを担当、サヴィーノと同じく、音色設定を足元で行いつつ、サンプラーを駆使する。彼は素直なそれと、サンプラーに繋いだそれ、2つの歌用マイクを使い分けてもいた。そんなイシバシはバークリー音大を出ているようだが、なるほどヴァイオリン(エレクトリック・ヴァイオリンではなく、通常のウッディなヴァイオリンを使用)をちょろちょろっと弾いただけでも、ちゃんと弾ける人なのだなというのがすぐに分る。

 ドリーミーなチェンバー・ポップと玩具箱をひっくり返したようなストレンジ・ポップ(その際は、中近東ぽいのとか、ワールド・ミュージック趣味が出る場合もある)の間を行き来と、キシ・バシ名義のライヴ・パフォーマンスは説明できるだろうか。チェンバー・ポップみたいな行き方をする場合、ササっと音を重ねて弦楽四重奏のような音群を作ってしまう手腕は鮮やか。アンドリュー・バード(2010年2月3日)を思い出させたりもする局面もあるが、イシバシのほうが屈託なく、明るく、ポップだ。彼は地声とファルセットをともに用いるが、地声のほうはかなり朗々とした手触りを持つ。そんな彼は、ケヴィン・バーンズがリーダーシップを取るオブ・モントリールのメンバーだったことがあるようで、レジーナ・スペクターのライヴのサポートもやっていて、それで彼女の日本公演(2010年5月6日)にも同行していた。

 多くの曲には、先に出て来たマイケル・サヴィーノと日本でつけたドラマーがつく。イシバシはトール・トール・トゥリーズの実演のときにも1曲出て来て一緒に演奏し歌ったが、2人は本当に仲がいいのだな。そのじゃれ合うようなやりとりを見ていて、普段から付き合いをもっているのだろうなと思わされた。春ごろにはキシ・バシの新作が出るようだが、そこにサヴィーノも入っているといいな。そういえば、2人とも、母親から今年のクリスマスにはいないのねと言われたと、ステージで言っていた。アンコールのとき、サヴィーノはサンタクロースの赤い帽子をかぶって出て来たが、髭とぴったり合っていました。

 その後、北青山・プラッサオンゼに行って、シンガーの吉田慶子(2012年4月25日)とギタリストの笹子重治(2002年3月24日、2007 年11月2日、2007年11月27日、2011年3月25日、2011年12月21日、2012年4月25日)のデュオを見る。月見ルも混んでいたが、こちらも盛況。出演者に負うところが大きいのだろうが、他のハコも師走はけっこう混んでいると聞いたりもする。

 ナチュラルなボサノヴァ歌いとして知られる吉田慶子の新作はピアノとのしっとり清新なデュオ・アルバムだが、普段ライヴをやっている単位にての実演。新作を基にするライヴをやるならちゃんとしたピアノが置いてあるところか、きっちりレンタルする必要があるわけで、弦楽器は本当に身軽で、融通が利く楽器だな。

 ブラジルの機智と日本人ならではの“正”の思慮がかさなりあう。潤いある手作り表現の数々……。ブラジル曲を原語にて披露の様はさりげないんだけど、すうっと聞く者のなかに入って来て覚醒する確かな味あり。無理がなく過剰さは何もないんだけど、心地よい誘いや含みが山ほどあって、やはりボサノヴァに選ばれた日本人歌手(とうぜん、ギタリストは言わずもがな)なんだろうなと思わずにいられず。来年2月に、この2人のライヴ音源が配信発売されるという。

▶過去の、ハドソン
http://43142.diarynote.jp/201308110826574632/
▶過去の、フォクシーズ
http://43142.diarynote.jp/201201271242599633/
▶過去の、マムフォーズ
http://43142.diarynote.jp/201308021400578638/
▶過去の、ウィリアムズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm
http://43142.diarynote.jp/200710221206190000/
▶過去の、スペクター
http://43142.diarynote.jp/201005071023536171
▶過去の、バード
http://43142.diarynote.jp/201002051635443280/
▶過去の、吉田
http://43142.diarynote.jp/201205080617258733/
▶過去の、笹子
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm
http://43142.diarynote.jp/200711101231280000/
http://43142.diarynote.jp/200711290932200000/
http://43142.diarynote.jp/201103271554196130/
http://43142.diarynote.jp/201112261518003058/
http://43142.diarynote.jp/201205080617258733/


<今日の、立派な髭>
 サヴィーノの髭面に接し、映画チャンネルで先日放映されていて、ダラダラ見ちゃった西部劇を思い出す。主演のシャロン・ストーンがすっぴんぽく見えるメイクで頑張っている、1995年公開の「クイック&デッド」という映画。で、そこに出てくる男性陣の格好が初期のザ・バンドのアーティスト写真におけるメンバーの服装を想起させ、ぼくは大層うれしくなってしまったんだよお。なるほど、ザ・バンドの5人は、当時彼らが持っていたアメリカ音楽追求/憧憬を西部開拓時代のファッションを借りることで具現していたのか。何気に、巧みなイメージ作り。それとも、当時のフロンティア精神に引っ掛けて、俺たちは新しいアメリカ音楽を開拓するという意気込みを表したかったのか。こういう深読みは、楽しいなあ。ガース・ハドソンやリチャード・マニュエルみたいな髭の人も、映画では散見されました。ともあれ、お茶目なマイケル・サヴィーノは西部劇調コスプレで、ショウをすべきではないのか。

 長寿(昨年で結成50年)アカペラ・コーラス・グループのちょうど1年ぶり、通算2度目となる来日公演を見る。丸の内・コットンクラブ、ファースト・ショウ。彼らの輝かしいトピックについては去年の項(2012年12月26日)にしっかり書いたが、その実演は、改めて米国黒人音楽が育んで来た芸能の奥深さや素晴らしさを照らし出すものだった。やはり大きな感慨を得て、2013年締めのライヴにふさわしいとも感じました。

 アカペラのグループだから、ステージ上には歌を歌うメンバー5人だけ。だが、有機的にして巧みな重なりを見せる彼らを前にして、これ以上なにを必要とするのか。歌うことは人類の表現の原点であり、至高の行為だァ。なぞと、したり顔で言いたくなる、精気と技巧と気持ちに満ちた、無伴奏肉声表現の数々……。そして、それはブルースやゴスペルを根にいろんなヴァリエーションを生んできたアフリカン・アメリカン・ミュージックを束ねるような感覚もどこか持つ。

 そんな彼らはいろいろな曲をやったが、なかにはU2(2006年12月4日)の「アイ・スティル・ハヴント・ファウンド・ホワット・アイ・ルッキング・フォー」も。それを聞きながら、U2のボーノと元ホット・ハウス・フラワーズのリアム・オ・メンリー(1999年9月23日、2000年10月3日、2001年7月28日、2009年5月20日、2011年12月6日、2011年12月7日、2011年12月10日、2011年12月12日)と元ザ・フレイムズやザ・スウェル・シーズンのグレン・ハンサード(2009年1月15日、2009年5月20日)らがクリスマス・イヴの夕方にダブリンでホームレス救済基金応援のための路上パフォーマンスに参加しているという話を思い出す。

 「終わりなき旅」という邦題も持つそのU2曲は“おいらはまだまだ行ける”、といったポジティヴな内容を持つ曲なはずだが、ザ・パースエイジョンズの面々が重厚にかさなると清新なゴスペルに聞こえるか。彼らのフランク・ザッパのレーベル“ビザール”発の1970 年デビュー作(昔、今はなきポリスター・レコードから日本盤が出されたことがあった)を聞き直したら、アイデアと本能と勢いと風情ありまくりの、ストリート感覚にもあふれたライヴ・アルバムで驚いた。それ、諸手を挙げて推奨します。

 本編最後は歌いながらメンバーたちはステージをおり、客席を握手して回る。しかし、オリジナル・メンバーの2人は結構な年齢だろうが、喉が衰えていないのがすごい。特にベースを担当するジミー・ヘインズは天晴のかぎり。ショウは75分、伴奏陣がいなく、ほぼ歌いっ放しなしで、この尺をきっちりこなすのには驚く。この後、もう1ショウがあるわけだし。しかも、彼らは歌いながらステージをおりて、楽屋に帰らずに、そのまま会場後方に用意されたサイン会用テーブルについて、客接待を始めた。あなたたち、どんだけタフなの? これもまたショービズの修羅場をいろいろとくぐって来た彼らの矜持の顕われであるのだと思う。

▶過去のザ・パースエイジョンズ
http://43142.diarynote.jp/201212271217268622/
▶過去の、ボーノ
http://43142.diarynote.jp/200612070141170000/
▶過去の、オ・メンリー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm
http://43142.diarynote.jp/200905221027321644/
http://43142.diarynote.jp/201112171632304826/
http://43142.diarynote.jp/201112171633334584/
http://43142.diarynote.jp/201112191446481626/
http://43142.diarynote.jp/201112191500441741/
▶過去の、ハンサード
http://43142.diarynote.jp/200901161818098587/
http://43142.diarynote.jp/200905221027321644/

<12月の、スパム>
 師走に入って、新手のスパム・メールが海外から入ってくるようになった。デルタ・エアラインとかUSエアウェイズとかの名を語って、E.チケットをダウンロードして印刷してね、という内容のもの。来年4日のピッツバーグ行き(222.03ドル)とか、17日発のスポーケン行き(623.38ドル)とか。で、シート番号は記してあっても、便名や乗機地がわからねえ。それ、ポチると、承知できるの? たぶん、米国国内線なのだろうな。近年航空機に乗るのに腰が引くようになっちゃったぼくだが、いやあ思わず、空港に行きたくなっちゃう?
 なんかスパムとか打っていたら、ここのところけっこう肉を食べているはずなのに、久しぶりにスパムを食べたくなった。毒のカタマリみたいな気がし(それ、加工肉全般に言えるのか。つい先日も、サブウェイ〜ほぼ利用しないけど、ファストフード・チェーンのなかでは嫌いじゃない〜で用いている加工肉の一つに問題アリの添加剤が用いられているというニュースが流れる)、ずっと食べる機会を得ていないが。あれ、そういえば、近ごろ米国ではマーガリンが発売禁止になったのだっけ? 前からカリフォルニア州では禁止になっていたと記憶するが、関連企業のロビー活動も激しいだろうに、それでもかの国で御法度になったというのはよほど有害なのだろう。でも、保存食品とか油っぽいお菓子とか、ぜんぶマーガリンに類する化学アブラが使われているような気がしちゃう。安価な外食店も同様に……。
 そういえば、家のポストに、利益がどんどん下がっていると言われるマクドナルドの宅配のチラシが入っていた。7:00〜23:00の時間帯で1500円(朝マックは1000円)以上の注文を受け付け、300円の配達料を取る、と記されている。
 食の安全に関しては、人生が滅法情けないものになるので、深く考えずに食せ、と言う知人がいるが、賛同したくなるかもしれぬ。そういえば、数日前のネット・ニュース記事でシュガーレス・ガムもかなりヤバいという記事が出ていたな。オレ、間違いなく、普通の人よりガムを噛んで来ている。あひ〜。
 ありゃりゃ、2013年最後の文章なのに、明るいとは言えないこと書いているなー。明後日までに400字換算で60枚は書かなきゃいけない(本当は新年5、6日の締め切りなのだが、普通の会社員の日程で休む予定を入れてしまっているので、気合い入れまくり也)ことと関係ある?