ティグラン・ハマシアン・トリオ。テイラー・マクファーリン
2014年9月26日 音楽 その耳慣れぬ名字が示すように、ティグラン・ハマシアンはアルメニア生まれで、2003年以降米国に住むピアニスト。エスノ・ジャズの文脈やジャズとポップを自由に行き来する存在として今かなり注目を受けている存在だけに、会場の丸の内・コットンクラブ(ファースト・ショウ)はけっこうな入り。めでたいな。
エレクトリック・ベースを弾くイラン系アメリカ人のサム・ミネイとドラムのアーサー・ナーテクとのトリオによる出演。普通は縦ベースを弾くメネイはハマシアンの片腕的なベーシスト。今回は4弦の電気ベースを抱えていた彼は、軽〜い“ペラ男”くん奏法は一切出さず、どっしり伸びる低音を加える作法に出ていて、ぼくはニコっ。彼のカルテット編成(ピアノレスの二管)による2013年作『Heyo!』(CD Baby)は強さと詩情を併せ持つ現代リアル・ジャズの傑作だ。一方、美味しい現代的アクセントを繰り出しているのにも関わらず全てレギュラー・グリップで叩いていたアーサー・ナーテクはまだ20代半ばのNY在住のスイス人。彼らは皆腕が立ち、息の合い方もばっちり。
そんな3人がデカい出音を介して編んでいくのは、かなりの構成と哀愁メロディ(それはときに少女趣味と思わせるものであり、アルメニアの属性がいかされたものだろう)を持ち、けっこうプログ・ロックぽい手触りも持つ。そして、どういう仕組みになっているかは分らぬが、癖と妙味たっぷりのトリオ音に効果的に電気音がかぶさる場合もある。その際は、レディオヘッド((2001年10月4日、2004年4月18日、2008年10月4日)的な音に対する共感も横たわっていたはずだ。
ハマシアンが歌やヴォイスを加える場合も散見されるが、その一方、実は普通のジャズのように延々とソロを取るという局面はない。が、短く入れられるピアノ・ソロは研ぎすまされ、質量感も持ち、彼が本来“選ばれたジャズ・ピアニスト”であることを痛感させる。そのソロの短さは、長くなると手癖になっちゃうので美味しくも新鮮な部分だけをさくっと出すのが吉と、彼が考えているようにも思えた。とともに、オレの表現ってジャズって取ってもらわなくていいも〜んと、彼は考えている?
本編最後の曲(新曲と紹介していた)とアンコール曲は作り込んだトラック(ゆえに、一応ベーシストもドラマーも音を加えてはいたが、彼らがいなくても平気だったはず)を下敷きにハマシアンがきっちり歌う。歌声も堂々しているな。それ、アルメニア(言葉も非英語であったはず)のジェイムス・ブレイク(2011年10月12日、2013年6月4日)と言いたくなるもので、かなり味がいいし、浸れる。パンチ・パーマがいびつに伸びたようなおやぢな髪型は演歌グループにいそうと思わせるが、センスいいやん。次作はもっとコンテンポラリー・ポップよりのものになるのかもしれない。いや、ぼくはそれを期待したい。
ところで、ハマシアンの実演を見て、UKサイバー派ポッパーであるジェイムス・ブレイクのことを想起するとは思わなかった。とともに、この後に見ることになっていた、テイラー・マクファーリン(2012年3月2日、2012年2月18日)公演に対する期待がもわもわ湧く。というのも、2日前にマクファーリンにインタヴューしたのだが、ヒューマン・ビート・ボックスには興味を失っていて、もっと歌やメロディに力を入れる方向に進みたいと、言っていたから。ライオット(2012年9月13日)から父親ボビー・マクファーリン(2004年2月3日、2012年3月2日)まで複数のシンガーを起用した2014年作『アーリー・ライザー』を彼は出しているが、そのヴォーカルを多用した総体はまさにジェイムス・ブレイクの流れにあるものと、ぼくは感じており、そんな発言から、今回の彼のパフォーマンスはそういう方向が強められるのではないかと……。うーぬ、それにしても、ジャズ側にいる人間のポップ・アーティスト一番人気は間違いないく(いまだ)レディオヘッドだが、ジェイムス・ブレイクはそれに続く存在になりえる。
米国西海岸のヒップホップ流儀の自在の拡大やジャズ要素の活用の面白さを提出しているブレインフィーダー所属アーティストであるマクファーリンのライヴは、渋谷・wwwにて。こっちも、混んでいたな。こちらは、キーボードや装置やマイクを扱うマクファーリンとドラマーの石若駿のデュオにて持たれる。1992年生まれの石若は10代半ばにして日野皓正(2005年6月5日、2006年11月3日、2011年3月28日、2011年7月25日、2011年9月2日 、2013年9月22日、2014年4月4日)のグループに関与したこともある、日本人俊英だ。
ん? あらら……。先に書いたように、もっと歌うパフォーマンスを見せるかと思ったら、プリセットのガイド音にあわせて、鍵盤を訥々と弾いて流れていくと説明できるものが結構多い。そして、ヒューマン・ビート・ボックスをときに披露したり、ヴォーカルを控え目に少しとったり、ヴォーカル・トラックを流したり。普通に接していれば、これも納得の内容ではあったろう。だが、先のハマシアンの達者な指さばきや力と精気を持つ歌を目の当たりにしたばかりだと、それはつたなく、脆弱と感じてしまう。うーん。これが、テイラー→ハマシアンと逆に接したなら、また別の感想を得たろう。音楽スケジュールの女神に意地悪をされてしまったな。
また、ハマシアン表現におけるドラマーの関与の仕方を聞いたあとだと、マクファーリンと石若のやりとりも物足りない。マクファーリンとしてはここ4年ぐらい一緒にツルんでいるマーカス・ギルモア(2007年11月21日、2010年7月24日、2010年8月22日、2014年5月15日、2014年6月19日、2014年6月20日)に同行してほしがったが、売れっ子ゆえスケジュールが合わず、石若に白羽の矢が立てられたのだという。石若も悪い奏者ではないが、リハの時間もそれほど取れなかったろうし、ここで密なインタープレイを要求するの無理がありますね。
と、なんか否定的なことを書いているが、基本テイラー・マクファーリンは目映いサムシングを孕む現代流動ポップ表現を作れる人物だとぼくは思っているし、今回のパフォーマンスに接してもその期待はぜんぜんしぼんでいない。そういえば、2度目のアンコールでやった、アカペラの出だしはもろに父親の自由さを聞き手に与えるそれを思い出させる。というか、かつて父が見せた変幻自在なマイク・パフォーマンスは息子からインスピレーションを得るものでもあったのではないか? あの父の息子、ひきついでいる多大な才能は絶対あると思う。蛇足だが、彼にはハタチちょいの妹がいて、けっこう才能あるんだそう。
なお、(ぼくの知る限り)テイラーくんのバイオには生年月日が記されているものがないが、今回の取材で自ら、今33歳なんだけどと言っていたので、年齢を隠しているということはなさそう。彼、すんごく育ちよさげなハンサムさんで、肌の色はお父さんと違いそれほど黒くなかった。
▶過去の、レディオヘッド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/200404180058130000/
http://43142.diarynote.jp/200810061856366600/
▶過去の、ジェイムズ・ブレイク
http://43142.diarynote.jp/201110161924242614/
http://43142.diarynote.jp/201306060730086224/
▶過去の、テイラー・マクファーリン
http://43142.diarynote.jp/201202200901013744/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120302
▶過去の、ライオット
http://43142.diarynote.jp/201209191239346073/
▶過去の、ボビー・マクファーリン
http://43142.diarynote.jp/200402051853580000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120302
▶過去の、日野
http://43142.diarynote.jp/200506120639310000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20061103
http://43142.diarynote.jp/?day=20110328
http://43142.diarynote.jp/201107310727152406/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110902
http://43142.diarynote.jp/201309260930584072/
http://43142.diarynote.jp/201404070654593139/
▶過去の、ギルモア
http://43142.diarynote.jp/200711290930350000/
http://43142.diarynote.jp/201007261045442770/
http://43142.diarynote.jp/201008261620103318/
http://43142.diarynote.jp/201405171309186867/
http://43142.diarynote.jp/?day=20140619
http://43142.diarynote.jp/201406210910441716/
<今日の、あらら>
コットンクラブに行く半蔵門線車内で、同性飲み会に向かう舞ちゃんのお母さん。有楽町駅エスカレーターで、のっぽの堀内くん。コットン公演が終わり駅に向かう国際フォーラム地下で、5年ぶりぐらいに会う鮎沢くん。渋谷駅からwwwに向かうときに、お洒落な小松さん。と、続け様に知り合いと会う。あら。普段はぼうっとしていて、相手が気づいて話しかけてくることがほとんど(目立つ髪の色しているし)だが、今日はぼくのほう、もしくは同時に気づく。こんなこともあるんだなー。
エレクトリック・ベースを弾くイラン系アメリカ人のサム・ミネイとドラムのアーサー・ナーテクとのトリオによる出演。普通は縦ベースを弾くメネイはハマシアンの片腕的なベーシスト。今回は4弦の電気ベースを抱えていた彼は、軽〜い“ペラ男”くん奏法は一切出さず、どっしり伸びる低音を加える作法に出ていて、ぼくはニコっ。彼のカルテット編成(ピアノレスの二管)による2013年作『Heyo!』(CD Baby)は強さと詩情を併せ持つ現代リアル・ジャズの傑作だ。一方、美味しい現代的アクセントを繰り出しているのにも関わらず全てレギュラー・グリップで叩いていたアーサー・ナーテクはまだ20代半ばのNY在住のスイス人。彼らは皆腕が立ち、息の合い方もばっちり。
そんな3人がデカい出音を介して編んでいくのは、かなりの構成と哀愁メロディ(それはときに少女趣味と思わせるものであり、アルメニアの属性がいかされたものだろう)を持ち、けっこうプログ・ロックぽい手触りも持つ。そして、どういう仕組みになっているかは分らぬが、癖と妙味たっぷりのトリオ音に効果的に電気音がかぶさる場合もある。その際は、レディオヘッド((2001年10月4日、2004年4月18日、2008年10月4日)的な音に対する共感も横たわっていたはずだ。
ハマシアンが歌やヴォイスを加える場合も散見されるが、その一方、実は普通のジャズのように延々とソロを取るという局面はない。が、短く入れられるピアノ・ソロは研ぎすまされ、質量感も持ち、彼が本来“選ばれたジャズ・ピアニスト”であることを痛感させる。そのソロの短さは、長くなると手癖になっちゃうので美味しくも新鮮な部分だけをさくっと出すのが吉と、彼が考えているようにも思えた。とともに、オレの表現ってジャズって取ってもらわなくていいも〜んと、彼は考えている?
本編最後の曲(新曲と紹介していた)とアンコール曲は作り込んだトラック(ゆえに、一応ベーシストもドラマーも音を加えてはいたが、彼らがいなくても平気だったはず)を下敷きにハマシアンがきっちり歌う。歌声も堂々しているな。それ、アルメニア(言葉も非英語であったはず)のジェイムス・ブレイク(2011年10月12日、2013年6月4日)と言いたくなるもので、かなり味がいいし、浸れる。パンチ・パーマがいびつに伸びたようなおやぢな髪型は演歌グループにいそうと思わせるが、センスいいやん。次作はもっとコンテンポラリー・ポップよりのものになるのかもしれない。いや、ぼくはそれを期待したい。
ところで、ハマシアンの実演を見て、UKサイバー派ポッパーであるジェイムス・ブレイクのことを想起するとは思わなかった。とともに、この後に見ることになっていた、テイラー・マクファーリン(2012年3月2日、2012年2月18日)公演に対する期待がもわもわ湧く。というのも、2日前にマクファーリンにインタヴューしたのだが、ヒューマン・ビート・ボックスには興味を失っていて、もっと歌やメロディに力を入れる方向に進みたいと、言っていたから。ライオット(2012年9月13日)から父親ボビー・マクファーリン(2004年2月3日、2012年3月2日)まで複数のシンガーを起用した2014年作『アーリー・ライザー』を彼は出しているが、そのヴォーカルを多用した総体はまさにジェイムス・ブレイクの流れにあるものと、ぼくは感じており、そんな発言から、今回の彼のパフォーマンスはそういう方向が強められるのではないかと……。うーぬ、それにしても、ジャズ側にいる人間のポップ・アーティスト一番人気は間違いないく(いまだ)レディオヘッドだが、ジェイムス・ブレイクはそれに続く存在になりえる。
米国西海岸のヒップホップ流儀の自在の拡大やジャズ要素の活用の面白さを提出しているブレインフィーダー所属アーティストであるマクファーリンのライヴは、渋谷・wwwにて。こっちも、混んでいたな。こちらは、キーボードや装置やマイクを扱うマクファーリンとドラマーの石若駿のデュオにて持たれる。1992年生まれの石若は10代半ばにして日野皓正(2005年6月5日、2006年11月3日、2011年3月28日、2011年7月25日、2011年9月2日 、2013年9月22日、2014年4月4日)のグループに関与したこともある、日本人俊英だ。
ん? あらら……。先に書いたように、もっと歌うパフォーマンスを見せるかと思ったら、プリセットのガイド音にあわせて、鍵盤を訥々と弾いて流れていくと説明できるものが結構多い。そして、ヒューマン・ビート・ボックスをときに披露したり、ヴォーカルを控え目に少しとったり、ヴォーカル・トラックを流したり。普通に接していれば、これも納得の内容ではあったろう。だが、先のハマシアンの達者な指さばきや力と精気を持つ歌を目の当たりにしたばかりだと、それはつたなく、脆弱と感じてしまう。うーん。これが、テイラー→ハマシアンと逆に接したなら、また別の感想を得たろう。音楽スケジュールの女神に意地悪をされてしまったな。
また、ハマシアン表現におけるドラマーの関与の仕方を聞いたあとだと、マクファーリンと石若のやりとりも物足りない。マクファーリンとしてはここ4年ぐらい一緒にツルんでいるマーカス・ギルモア(2007年11月21日、2010年7月24日、2010年8月22日、2014年5月15日、2014年6月19日、2014年6月20日)に同行してほしがったが、売れっ子ゆえスケジュールが合わず、石若に白羽の矢が立てられたのだという。石若も悪い奏者ではないが、リハの時間もそれほど取れなかったろうし、ここで密なインタープレイを要求するの無理がありますね。
と、なんか否定的なことを書いているが、基本テイラー・マクファーリンは目映いサムシングを孕む現代流動ポップ表現を作れる人物だとぼくは思っているし、今回のパフォーマンスに接してもその期待はぜんぜんしぼんでいない。そういえば、2度目のアンコールでやった、アカペラの出だしはもろに父親の自由さを聞き手に与えるそれを思い出させる。というか、かつて父が見せた変幻自在なマイク・パフォーマンスは息子からインスピレーションを得るものでもあったのではないか? あの父の息子、ひきついでいる多大な才能は絶対あると思う。蛇足だが、彼にはハタチちょいの妹がいて、けっこう才能あるんだそう。
なお、(ぼくの知る限り)テイラーくんのバイオには生年月日が記されているものがないが、今回の取材で自ら、今33歳なんだけどと言っていたので、年齢を隠しているということはなさそう。彼、すんごく育ちよさげなハンサムさんで、肌の色はお父さんと違いそれほど黒くなかった。
▶過去の、レディオヘッド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/200404180058130000/
http://43142.diarynote.jp/200810061856366600/
▶過去の、ジェイムズ・ブレイク
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▶過去の、テイラー・マクファーリン
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▶過去の、ライオット
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▶過去の、ボビー・マクファーリン
http://43142.diarynote.jp/200402051853580000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120302
▶過去の、日野
http://43142.diarynote.jp/200506120639310000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20061103
http://43142.diarynote.jp/?day=20110328
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http://43142.diarynote.jp/201404070654593139/
▶過去の、ギルモア
http://43142.diarynote.jp/200711290930350000/
http://43142.diarynote.jp/201007261045442770/
http://43142.diarynote.jp/201008261620103318/
http://43142.diarynote.jp/201405171309186867/
http://43142.diarynote.jp/?day=20140619
http://43142.diarynote.jp/201406210910441716/
<今日の、あらら>
コットンクラブに行く半蔵門線車内で、同性飲み会に向かう舞ちゃんのお母さん。有楽町駅エスカレーターで、のっぽの堀内くん。コットン公演が終わり駅に向かう国際フォーラム地下で、5年ぶりぐらいに会う鮎沢くん。渋谷駅からwwwに向かうときに、お洒落な小松さん。と、続け様に知り合いと会う。あら。普段はぼうっとしていて、相手が気づいて話しかけてくることがほとんど(目立つ髪の色しているし)だが、今日はぼくのほう、もしくは同時に気づく。こんなこともあるんだなー。