まず、ブラジル音楽を紹介する長寿FM番組が主催する、ブラジル音楽と繋がった日本人アクトが次々出るイヴェントに行く。麻布十番・WAREHOUSE702。悪天候にもかかわらず盛況、女子率がけっこう高いと感じた。1番目に出てきたのは、カンタス村田とサンバマシーンズ(2010年12月27日)。相変わらず華と勢いのあるショウを繰り広げる。今回聞いててなるほどと思ったのは、サンバを根っ子に置きつつ、本当にいろんなポップ・ミュージックを好奇心旺盛に取り入れている、ということ。メンバー紹介の際のベースのリフはキング・カーティス&ザ・キング・ピンズの「メンフィス・ソウル・シチュー」。そんな彼らだからこそ、両手を広げた眩しいほどの娯楽性や親しみ易さが出てくると言ってもいいだろう。

 その次に、お揃いの衣装を来たパーカッション奏者がフロアに大勢登場、バイーア系の黒っぽい集団表現を送り出すBarraventoの演奏。ステージ上には怒濤の打楽器音群にグイ乗りして歌うシンガーや合わせて踊るヒップ・ダンサーたちも出てくる。男性シンガーは良く通る声の持ち主で存在感あり。その後は、ステージ上にパーカッション奏者やブラス奏者を擁する大所帯バンドのmocidade vagabunda bateria nota 1000が出てくる。リード歌手は男性で、やはりサンバをベースにファンク他のポップ語彙を重ねた躍動表現を展開。以上の3グループはともに男女混合で、和気あいあい。それがいいなあ。それにしても、いったい彼らを合計すると何人になるのだろう? この後、締めでSaigenji(2009年8月9日、他)が出てきたはずだが、次の場に移動する。

 赤坂・ブリッツ。出演者のmoe.は、米国では人気ジャム・バンドとしてならすイースト・コーストの20年選手バンド。90年代からいろんな人を呼んだ自前フェスを本国でやるなど、顔役的な位置を得ている彼らだが、なるほど広いステージに散る彼らは堂々、貫禄(と書くと、ちょい違うかもしれないにが)あるなあ。年季を感じました。2人のギター奏者とベーシストが前に位置し、ヴォーカルも取り、ステージ後方にはドラマーと打楽器奏者(ときにギターやマリンバも)が。さすが日々の実演で積み上げたメンバー間の噛み合いは良好、5人はそれぞれのソロ・パートをたっぷりとる長尺の曲を悠々と披露する。ながら、構成にも凝り、いい案配でヴォーカル/コーラス・パートも出てくるので、山あり谷ありという感じだな。やはり、米国ギター・ロックらしい大陸的な広がりがあって、そこがポイントになるか。2部制で、1部は1時間ちょい。それが終わった時点で次の会場に移動したが、9時までやったはず。

 そして、丸の内・コットンクラブ(セカンド・ショウ)。こちらのアクトはシャラマーを経て、87年からソロで活動しているジョディ・ワトリー。ここのところ、毎年きているような印象があるが、今回やっと見る。10年前ぐらいに電話インタヴューやったら、とても風通しの良いポジティヴィティの持ち主で感心し、ずっと一度は見たいと思っていたものの、過去の来日時は都合がつきにくかった。うれしい。

 開演前から、バンドのDJが回していて、いい感じ。サポート布陣は映像オペレイションも担うDJ、キーボード、ドラム、パーカッション。ちょいクラブ目のサウンドのもと声を泳がせるみたいな作りのアルバムを出しているので、その編成はよく判る。で、出てきたワトリーはすでに50歳を超えている(1959年生まれ)が、綺麗で若く見える。体型は昔から見れば太めになったが、上手く身体の線が隠れる衣服をきているので、そんなに気にならない。で、歌いだすと、思った以上にちゃんと歌える。キーの低い曲の場合は少し頼りなくなる場合もあるが、キーを適正なものにそろえていないのは、幅の広い曲趣を聞き手に出したいという、まっとうなプロ意識だろう。また、激しいダンスはしないが、さすが元々は「ソウル・トレイン」のダンサー出身だけに、手の動かし方やちょっとしたキメがかなり決まり、スタイリッシュ。曲によっては若い男性ダンサー2人が出てきたりもしたが、その絡みもアトラクティヴ。ようは、ダンス・フロア派生の同時代ソウルをきっちり提供しているナと大きく頷く。

 よく練り上げられたショウをすすめるなか、振る舞い/ステージ・マナーもとても好印象。簡単に書けば、ココロがあった。変則編成のサウンドも良質、打楽器がすげえ利いているナと思ったら、先日はファミリー・バンドで来日していたホアン・エスコヴェード(2011年1月19日)だった。なんかコットンクラブに着いたときはずっと立ちっぱなしが続いていたためけっこう疲れてもいたのだが、見に来て良かったァと感じることしきり。


<今日は降雪>
 おお、雪の日。けっこう、ごんごん降った。普段は履かない、ヘヴィー・デューティな靴を履いて出かける。まず、午後2時半からソニーミュージックの乃木坂ビルで、G・ラヴ(2008年10月9日、他)にインタヴュー。それだけだったら、車で出かけるところだが、そのあとライヴ(=飲まずにはいられませんね)を3つハシゴしようかと思っていたので、電車を使う。かなりG好きの私ではあるが、彼をインタヴューしたのは16年前に一度だけ。9月上旬、NYの変なビルの屋上でやった。Gがそのときのことを覚えていて、びっくり。ボストン在住なので、今日みたいな日は慣れていると言っていた。その新作は、カントリー色も強いフォーク・ロックの担い手ジ・アヴェット・ブラザーズと四つに組んでのもの。Gの音楽とバンジョーの音がこんなにも合うとは……。同作での2曲のデルタ・ブルースのカヴァーは、全盛期のストーンズがさもありなんと思えるほどに秀逸。それを、伝えると、Gはとてもうれしそう。そして、その後に、15時半麻布十番、18時赤坂、20時丸の内と次々と移動。タクシー拾いにくくて、困った。しかし、本日の3つの会場、見事に客層が違っていたな。