イーグルス

2011年3月5日 音楽
 見事。とっても、良かった。彼らの熱心なファンではないが、ほとんど馴染みのある曲で、生活レヴェルに溶けたいい曲もちまくりなんだァと痛感もした。それで、見ていて頷かされたのは、ドン・ヘンリーは少し太めになったものの、ちゃんとアンチ・エイジングしているというか、見た目が過剰に老けていないこと。往年のロッカーははげちゃう人も少なくないが、みんな髪もフサフサしていた。で、そんな彼らは、みんな歌がうまかった。コーラスも本当にばっちり。複数歌える人がいるバンドは強いし、今イーグルスはコーラスの綺麗なグループとしてショウではアピールしようとしているのは間違いない。グレン・フライのポライトなしゃべり口にもセレブやなあと思わせられたか。

 大坂、名古屋、東京(2回)、というドーム会場ツアー。そのノリはおそらく海外でも同様なはずで、バンド充実期を過ぎても、こんだけ人気を獲得し続けている例も珍しいはず。客は中年以上だけだけど。

 だが、そういう人気の大きさに見合うように、胸を張って、面々はいろいろと変化をつけながら、イーグルスの曲を聞き手に届けていく。2部構成で、1部は1時間。2部は3曲のアンコールを入れて、2時間強。しかも、4人の現メンバーに加え、9人ものサポート奏者(4人はホーン・セクション)を連れている。うち、ほとんどの表に出るリード・ギター音/重要装飾ギター音を弾いていたサポート奏者のスチュアート・スミスはほぼ完璧に盤音を再現。フレイジングだけでなく音色、その微妙なニュアンスまでばっちり弾いちゃう。こんな名人がいたんだァと、ぼくは舌をまいた。

 そのぶん、ジョー・ウォルッシュの活躍するパートは確実に減っているし、リード・ヴォーカルを取る曲もないしィ、あまりバンドにいる必然性がないなあと感じていたら、1部の終盤に『ロング・ラン』に入っていたずっこけ曲「イン・ザ・シティ」でやっと彼は前に出る。で、2部のほうに入ると、途中からショウの流れを壊すような感じで、ごんごんフィーチャーされる。客とのお茶目なコール&レスポンスも、やんちゃ坊主たる彼の面目躍如。ソロとしても大成功したドン・ヘンリーが歌ったソロ活動曲でやったのは「ボーイズ・オブ・サマー」と「ダーティ・ランドリー」(ジョー・ウォルシュの影響を受けたようなこの曲に、ぼくは望外にグっと来ちゃった)の2曲なのに、ウォルシュがやった非イーグルス曲は「ウォーク・アウェイ」、「ライフズ・ビーン・グッド」、「ファンク#49」、「ロッキー・マウンテン・ウェイ」と4曲も。なんせ、ぼくが人生で一番聞いた回数が多いのがたぶんウォルシュの“ミラー・ボール”(76年ライヴ盤。この後に、彼はイーグルスに入り、ぼくをがっかりさせた)という人だけにそれはそれでうれしかったが、どうせならファンキー・ロックの金字塔的曲とぼくが信じる「タイム・アウト」(←昔、ヌーノ・ベッテンコートに取材したとき、彼もそれに同意)を聞きたかったなー。ただ、彼のパフォーマンスはイーグルスたる大人かつ豊穣な何かをぶち壊すもので、後半のウォルシュの出具合については苦々しく感じる聞き手も少なくなかったのではないか。でも、後から入ったウォルッシュにヘンリーやグレン・フライは好きに振る舞わせている。それ、度量がデカいと取っていいものか。俺でさえ、ティモシー・B・シュミットやフライがもっと前に出た曲があっても良かったと思えたもの。
 
 金持ち喧嘩せず。なんか、そんな言葉も頭に浮かぶ東京公演でした。

<今日の白い屋根>
 久しぶりの東京ドーム。何年か前にレッド・ホット・チリ・ペッパーズを見に来ていらい。あ、そんとき終演後にアリーナで知人女性と立ち話をしていたら、後通った小僧にベロンとお尻さわられたと言っていたな。なんと、大胆な。17時を少し回ってショウは始ったのだが、ドームは少し光を通すため、天井が明るい。日が長くなったんだあと実感。1部の「イン・ザ・シティ」の終わりのとき、ドームの白い屋根が俯瞰映像となってどんどん広がり、最後は地球を映した図になるという、グーグルの映像を拝借したものが背後に映し出される。どうってことないが、そういうのをぼくはうれしく感じる人間。それ、会場ごとに仕込み直して、客を湧かせようとしているんだろう。映像ヴィジョンはスクリーンの後に半円系のものがでっかく設置。曲によって、いろんな仕込み映像/実況映像が流されました。