シングル・ヒットは79年から83年の間に集中している、オハイオ州出身の9人組セルフ・コンテインド・バンド。3年ぶりの来日となる。面々は黒のキャップ、シャツ、パンツで、カジュアルに身を固める。おや、前回みたと見たとき(2007年5月16日)より、少しルックスが若くなっているような。

 ちゃんとチェックしていないが、前回と顔ぶれは変わっていないんじゃないだろうか。リード歌手のマーク・ウッズが中央に位置し、その両側にはヴォーカル補佐担当。その3人はとくに前半部、一緒にいろいろと動いて、客を湧かせる。そして、演奏陣は6人。おもしろいのは、打楽器もときに担当する鍵盤ベーシストと普通のベーシストがそれぞれいること。それもまた、バンドの“腰”を出す? ギタリストのスティーヴン・ショックリーは背中にかけた装置でギター信号を飛ばす。ようはコードレスなので、弾きながら、自在に客席におりていけますね。まあ、常軌を逸した長さのコードを使い、演奏中に会場の後まで行って演奏することを是としたアルバート・コリンズのようなブルース・ギタリストもいたけど。いろいろ見せ場ありの、ばっちり楽しめるファンキー・ショウ。ヒット曲の一つ、ザ・ビートルズの「抱きしめたい」のカヴァーもこってり決まる。六本木・ビルボードライブ東京、ファースト・ショウ。

 その後は、ジャズ歌手のケイコ・リー(1999年8月29日。読み返すと、あの頃はブルーノートは禁煙じゃなかったんだな)を、南青山・ブルーノート東京で聞く。もともと声とフィーリングが飛び抜けている人だが、本当に力を抜いて素直に(崩さず)歌うようになっており、ちょっとした歌の隙間のようなところから、自分のジャズ観をおおいに出そうとしているのが、ここのところの彼女のポイントだ。昨年出た新作『Smooth』(ソニー)もその線で、行っていますね。

 リーは最初、かなり背中の出た妖艶なドレスで登場。中盤で一度ステージを降りて、黒のパンツ・スーツに着替えて、また出てくる。抑えて歌い、そこから香り立つ味で勝負という行き方は、ここでも存分になされる。MJ曲(「ヒューマン・ネイチャー」)、イヴァン・リンス曲(「ヴェラス」)、バカラック曲(「ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム」、クイーン曲(「ウィ・ウィル・ロック・ユー」。かつて、彼女の静謐ヴァージョンがタイアのTV-CFに使われたことあり)、ストーンズもライヴでやっていたスタンダード曲(「ニアレス・オブ・ユー」や同じくマリン・ガールズ(トレイシー・ソーン)が取り上げてもいたスタンダード(「フィーヴァー」)など、メロディアスな曲を主体に取り上げていたこともあり、彼女の歌は聞き手に優しく入り、余韻を残すものではなかったか。聞いていて、気持ちのいい癒し味があるなあとも、ぼくには思えた。伴奏は、実はリチャード・ティーのような弾き方をさせたら日本人で一番上手い野力奏一(キーボード、ピアノ)、そして岡沢章(電気ベース)渡嘉敷祐一(ドラム)という、ずっとやっているヴェテランたち。ただ、今の行き方なら、ギターでもキーボードでもサックスでもいいが、もう一つは楽器音がほしいとも思えた。それから、野力にはもう少しピアノを弾いてほしかった。というか、キーボードの音色がぼくの好みと合わなくて辛かった。なかには、リーがピアノを弾きながら歌う曲もありました。


<今日の神楽坂>
 二つライヴを見た後に、ぴゅうっと神楽坂に行っちゃう。むかし渋谷のミリバールで働いていたタイチくんが銀座のお店を経て、新たに出したお店“MANVAR”(マンワール)に、いろいろ知り合いが集まっているというので。おお、神楽坂のタイル地の小道を歩くなんて何時以来だろう。遅く行ったためワインを飲むだけで食べてはいないが、地中海バルを名乗り、シェフが二人もいる。今、一番忙しい時期だろうに、某誌の編集長もいて、びっくり。その後、さらに飲みたくて、渋谷で途中下車。そしたら、え〜ん。ぼくの人生、まだまだいろいろありそう。