ソイル&“ピンプ”セッションズ。ビル・フリゼール、ロン・カーター、ジョーイ・バロン
2011年1月30日 音楽 昨年暮れにネット売りで出したカヴァー中心のコンセプト作『SOIL&"PIMP"SESSIONS presents
STONED PIRATES RADIO』を出したやんちゃ6人組の、同作をフォロウする公演。六本木・ビルボードライブ東京、ファースト・ショウ。チャールズ・ミンガスやマイケル・ジャクソンの有名曲のSOILヴァージョン等も披露しての、ジェットコースターのような1時間強。途中で、後藤篤(2004年8月20日)ともう一人トロンボーン奏者が出てきて、さらにメンバーのMC担当の社長もトロンボーンも手にし、3人で演奏するという普段の公演では見られない出し物も。フロントに立つ元晴(サックス)とタブゾンビ(トランペット)が自在のアクションとともに雄弁に音を重ねる様は、管楽器におけるサム&デイヴ、な〜んて言いたくなる? いろんな意味で娯楽性に長けているナと再確認。なお、この日、ドラマーのみどりんは33歳の誕生日であったとか。まだまだ、若いなあ。彼、髪型がクエストラヴ(2007年1月15日、他)みたいなアフロじゃなくなってしまったのは残念だけど、ますます好漢ぶりには磨きがかかってきたような。
その後は、丸の内・コットンクラブに行って、米国人通受けギタリスト(2009年5月8日、他)の公演に。いつも以上に会場で知り合いと会って、挨拶を交わす。なるほど、ちゃんと支持者を持っているんだナ。
一緒にやるのは、大御所ベーシストのロン・カーター(2010年5月6日、他)と、作/編曲の才にも恵まれたNY前衛/ボーダーレス音楽界を代表するドラマーのジョーイ・バロン(1999年9月24日)。フリゼールとバロンはジョン・ゾーン(2006年1月21日、他)のネイキッド・シティでの同僚であるほか、かつてはいろいろ顔を合わせた仲だが、ロン・カーターの参加には?となる人がいるかもしれない。が、バロンの97年作『Down Home』(Intuition)はアーサー・ブライス、カーター、フリゼールによるカルテット録音作だし、フリゼールの方はカーターとポール・モーシャンとのトリオ作を出していたよな。そのモーシャンは、フリゼールとジョー・ロバーノ(2008年10 月8日、他)とチャーリー・ヘイデン(2009年9月10 日、他)でワーキング・カルテットをやっていたことがある。
そんな3人による演奏は、現在のフリゼール流儀による、あっさりと淡い音を流し合うような方向にて進む。と、書いていいかな。演目は彼のECM時代の曲(「スルーアウト」)やロン・カーターのマイルス期時代の曲(「81」)から、サム・クック曲(「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」)やハンク・ウィリアムズ曲(「アイム・ソー・ロンサム・アイ・クッド・クライ」)まで。セットによってはスタンダードが多めになった日もあったようだが、なんにせよ、狼藉の先にある墨絵的紋様描きがあったのは間違いない。余裕こきすぎ、という感想も聞き、それも判らなくはないが、こんなことできるのはフリゼールしかいませんね。
ステージ中央に位置するバロンは終始、うれしそう。向かって左手に立つカーターはいつものようにバシっとスーツを着ていて、マイ・ペース。ながら、実は今回、一番ぼくの心をとらえたのは彼。なんか、ジャズ・マンたる威厳とともに、悠々と長い指で楽器を奏でて行く様は文句なく格好いい。そして、世代もバックグラウンドも異なる人達とのお手合わせだと、そのまっとうさが逆に新鮮でもあり、頼もしくあり。かつては、やれ音程が甘いだの、エフェクター使用の加工音色はコントラバスの音じゃねえとか、けっこう陰口をたたかれた彼だが、いやあ、超然としつつ、しっかりとジャズたる何かを彼は全身/佇まいで語っていて、ぼくはうなった。そういえば、フリゼールは2001年ノンサッチ盤で、その名も「ロン・カーター」という自作曲を演奏していますね。きっと、彼も同じような心持ちを得たのではないか。
<節分の、タブゾンビと社長>
2月3日夜に、故ジョン・カサヴェテスの命日に企画された、彼と朋友ピーター・フォークが出演した76年映画「マイキー&ニッキー」のプレミアム試写会に行く。映画冒頭に、パラマウント/ガルフ+ウェスタンの表示が……G+Wはアトランティックから切られたスタックスを一時買った企業ですね。現在アルツハイマーであるそうなフォークは「刑事コロンボ」でエスタブリッシュされた後もこんなチンピラおやじ役もやっていたのか。そういえば、この後に飲みに流れた際、「刑事コロンボ」は嫌いで「刑事マクロード」が大好きだったと言ったら、賛同者あり。まあ、歳がバレる会話ですね。と、そいうことを書きたいのではなく、映画上映後に、SOILの社長とタブゾンビが前に出てきて、数曲パフォーマンスをした。そのユニットは、ブルータル・リップスというらしい。タブゾンビは基本エフェクト付きトランペットを吹き(キーボードも少し)、社長はサンプラーを扱いフレキシブルに基本トラック出しを担当。巧みに映画中の印象的なセリフをサンプリングした流麗ジャジー・サウンドにトランペット音が響く。イメージは、ミレニアム版『死刑台のエレベーター』?
その後は、丸の内・コットンクラブに行って、米国人通受けギタリスト(2009年5月8日、他)の公演に。いつも以上に会場で知り合いと会って、挨拶を交わす。なるほど、ちゃんと支持者を持っているんだナ。
一緒にやるのは、大御所ベーシストのロン・カーター(2010年5月6日、他)と、作/編曲の才にも恵まれたNY前衛/ボーダーレス音楽界を代表するドラマーのジョーイ・バロン(1999年9月24日)。フリゼールとバロンはジョン・ゾーン(2006年1月21日、他)のネイキッド・シティでの同僚であるほか、かつてはいろいろ顔を合わせた仲だが、ロン・カーターの参加には?となる人がいるかもしれない。が、バロンの97年作『Down Home』(Intuition)はアーサー・ブライス、カーター、フリゼールによるカルテット録音作だし、フリゼールの方はカーターとポール・モーシャンとのトリオ作を出していたよな。そのモーシャンは、フリゼールとジョー・ロバーノ(2008年10 月8日、他)とチャーリー・ヘイデン(2009年9月10 日、他)でワーキング・カルテットをやっていたことがある。
そんな3人による演奏は、現在のフリゼール流儀による、あっさりと淡い音を流し合うような方向にて進む。と、書いていいかな。演目は彼のECM時代の曲(「スルーアウト」)やロン・カーターのマイルス期時代の曲(「81」)から、サム・クック曲(「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」)やハンク・ウィリアムズ曲(「アイム・ソー・ロンサム・アイ・クッド・クライ」)まで。セットによってはスタンダードが多めになった日もあったようだが、なんにせよ、狼藉の先にある墨絵的紋様描きがあったのは間違いない。余裕こきすぎ、という感想も聞き、それも判らなくはないが、こんなことできるのはフリゼールしかいませんね。
ステージ中央に位置するバロンは終始、うれしそう。向かって左手に立つカーターはいつものようにバシっとスーツを着ていて、マイ・ペース。ながら、実は今回、一番ぼくの心をとらえたのは彼。なんか、ジャズ・マンたる威厳とともに、悠々と長い指で楽器を奏でて行く様は文句なく格好いい。そして、世代もバックグラウンドも異なる人達とのお手合わせだと、そのまっとうさが逆に新鮮でもあり、頼もしくあり。かつては、やれ音程が甘いだの、エフェクター使用の加工音色はコントラバスの音じゃねえとか、けっこう陰口をたたかれた彼だが、いやあ、超然としつつ、しっかりとジャズたる何かを彼は全身/佇まいで語っていて、ぼくはうなった。そういえば、フリゼールは2001年ノンサッチ盤で、その名も「ロン・カーター」という自作曲を演奏していますね。きっと、彼も同じような心持ちを得たのではないか。
<節分の、タブゾンビと社長>
2月3日夜に、故ジョン・カサヴェテスの命日に企画された、彼と朋友ピーター・フォークが出演した76年映画「マイキー&ニッキー」のプレミアム試写会に行く。映画冒頭に、パラマウント/ガルフ+ウェスタンの表示が……G+Wはアトランティックから切られたスタックスを一時買った企業ですね。現在アルツハイマーであるそうなフォークは「刑事コロンボ」でエスタブリッシュされた後もこんなチンピラおやじ役もやっていたのか。そういえば、この後に飲みに流れた際、「刑事コロンボ」は嫌いで「刑事マクロード」が大好きだったと言ったら、賛同者あり。まあ、歳がバレる会話ですね。と、そいうことを書きたいのではなく、映画上映後に、SOILの社長とタブゾンビが前に出てきて、数曲パフォーマンスをした。そのユニットは、ブルータル・リップスというらしい。タブゾンビは基本エフェクト付きトランペットを吹き(キーボードも少し)、社長はサンプラーを扱いフレキシブルに基本トラック出しを担当。巧みに映画中の印象的なセリフをサンプリングした流麗ジャジー・サウンドにトランペット音が響く。イメージは、ミレニアム版『死刑台のエレベーター』?