ランディは前から、かなり見たかった黒人ジャズ・シンガーだ。

 90 年代はJVCから3枚のリーダー作を出しているのだが、LA出張時に同社プロデューサーの高級アパートに拉致され、契約して間もない彼女の音を聞かされ、コレはいいだろと自慢されたことがあった。じっさい聞いたら、純ジャズを超える広がりを覚えさせられ、その名前をぼくは頭に刻んだ。そしたら、すぐその後にキップ・ハンラハン(2003年8月9日、他)がレコーディングに彼女を呼び、大きく頷いたりもしたっけ。また、ミレニアムに入ってからは、日本のDJ系クリエイターが彼女を起用したことがあったと記憶するが、誰だったか。勘違いかな? ランディの大きなポイントは“ジャズ・シンガー・ソングライター”という活動指針を持つ事だが、そのスタンスをきっちり築いたのは、そのJVC時代だ。

 1954年(マイアミ)生まれだから、カサンドラ・ウィルソン(2008年8月11日、他)やダイアン・リーヴス(2008年9月22日、他)よりは少し年長。でも、早く(アルバム・デビューは30歳少し前)から自作曲を歌いたがり、ピアノができることもありアレンジも手がけ、絵も得意でジャケット・カヴァーを描いたりアート・ディレクションをしたり。てなわけで、ぶっちゃけウィルソンやリーヴスより当初から意思を持って自立し、広がりを持っていたとも言えるだろうし、その資質と比すとアンダーレイテッドな存在であるのは間違いない。その最新作『ソラメンテ』は墨絵のようなキーボード主体のサウンドを一人で作り、そこにワザありの漂う歌を載せた、ジャズを根に置く、オルタナティヴにしてメロウなアダルト・ヴォーカル作になっていて驚かされる。→追記)そのアルバム、彼女がレコーディング用に作ったデモが商品化されたという話もある。さもありなん、ではあるな。

 丸の内・コットンクラブ。ファースト・ショウ。そのパフォーマンスはピアニスト、縦ベース、ドラム、打楽器を伴ってのもので、打楽器奏者のみラテン系(だろう女性)で、他はアフリカ系だ。そんな設定が示すように、パフォーマンスは新作の内容には従わないもので、素直に凛としたジャズ・ヴォーカリスト像を出さんとするもの。年齢より十分に若く見える彼女(なかなか快活そうな人でした)は、伸び伸びとサウンドを乗りこなし、なめらかに歌を泳がせていく。やはり、自作曲を歌うことも大きいのだろうけど、普通のジャズ歌手とは一線を画す心智がある、と書きたくなりますね。後半はスタンダードも取り上げるが、清新さは維持。

 その後、知人に唐突に誘われ、ムーンライダース(2001年7月29日、2004年12月12日)の新年会に顔を出しちゃう。メンバー6人が勢揃い、還暦ぐらいにはなるだろうが、みんな頭髪もふさふさしていて、劣化が少ないのにはびっくり。改めて、充実した活動とともにいい歳の取り方をしているんだナと実感。鈴木博文さんには、大昔に編集者だったころ原稿を何度かお願いしたことがあり(その頃は、ファックスもない時代で、車をころがして原稿を持ってきてくれたりしたな)、お礼をのべる。

 ところで、昨日飛び込んできた、ハイチの大地震のニュースにはびっくり。被害のでかさにおののくとともに、世界でトップ級に貧しいと言われるあの国においての人々の生活の再興にはものすごい困難が伴うんじゃないかと危惧。いろんな災害や事件の報道にふれ、胸を痛めたり悲しくなったりもするが、そうしたなか今回のニュースには自分でもびっくりするぐらいえ〜んという気持ちになっている。自分のできる良なことはなんなのか。少しでも、動かなきゃ。一番古い黒人独立国家に光りあれ。←結局、募金だけ。。。。。。