温かいと書いていたら。1日から急に寒くなっちゃって、雪もちらついた。ヘタすると、10度ぐらい、体感の温度差があるかも。ぶるる。

 在シカゴの、一言でいえば、特殊シンガー・ソングライター。浮世離れした感触を与える曲をやりつつも一方で現代的な局面も抱えた人で、ときにはアメリカーナなノリを漂わせるし、オールド・ジャズっぽい味付けをほどこすときもあり。いろんな形でライヴ・パフォーマンスをしているようだが、初来日の今回は完全ソロにて。会場は渋谷・クラブクアトロ。

 へえ、一人だと、こんなん。基本はヴァイオリンを持ち、ウクレレのように爪弾くピチカート音や素直な弓引き音などを拾い、ループさせて行く。サンプリングするのはときには鉄琴も。そして、そのループ音に同期して、もっと形の大きな弦楽器の調べが出てきたりもする。そして、そうしたサウンドのもと、彼はふんわか歌う。ときには、ギターを弾きながら歌ったりもする。そっかーと思ったのは、彼はヴァイオリンを弾く際、まっとう(?)な弾き方をしていて、複音を出して乱暴に乗り切るようなフィドル的な弾き方は一切しなかったこと。MCでもクラシックを15年やっていてとか言っていたが、今回のパフォーマンスは音源で触れるよりも、ずっとクラシック的な素養を感じさせたな(ネクタイ姿もそれにあっていた)。でも、だからこそ、性急な現代日常と離れつつも、どこか今っぽくもある不可解な裏切りの感覚を出しているとも、ぼくは思った。ケラー・ウィリアムズ(2000年12月17日、2007年10 月21日)のように機材を用いた一人多重パフォーマンスって、アクロバティックな感覚がどうしても出てくるものだが、それがなかったのはやはり彼がクラシック的要素を抱えていたためか。

 とにかく、実演に触れると、かなり変人ぽい人であることもよく伝わってくる。それ、マイナスの印象の材料にはまったくならない。彼に対する興味がより湧いてきて、世の中、おもしろいなーという気持ちになれる。アンコールのあたまの2曲(うち、1曲はボブ・ディランのカヴァーであったよう)はサンプラー不使用の生100パーセントのパフォーマンス。そのときだけ、彼はヴァイオリンをフィドル/アイリッシュ・ミュージックっぽく弾く。おもしろかった。次は、また別の顔を出すだろう、サポート奏者を伴ってのライヴを見たいな。