レデシー

2010年1月8日 音楽
 今年、最初の仕事はbmr誌の09年度のベスト10の選出と選評。優柔不断なところもあるのでけっこうその手のセレクションは迷うのだが、そうしたなか、レデシー(2002年6月12日、2007年11月12日、2009年1月25日)の『ターン・ミー・ルース』はまっさきに該当作として思い浮かぶ傑作だ。ライナーノーツ担当盤なので褒め上げるのも気がひけるが、まったくもって今のR&B王道盤として非の打ち所のない出来をしめす。

 美容院に行ったあと(Boy Uの後藤くん、いつもありがとう)、六本木・ビルボードライブ東京へ。ファースト・ショウ。定時にサクっと出てきたバンドは全9人(キーボード2、ギター、ベース、ドラム、トランペット、テナー・サックス、女性コーラス2)! おお、ホーン・セクションを率いてきたのは初で、どんどん彼女が力を得ているの分かる。MCで新作収録曲の「ゴーイン・スルー・チェンジズ」がグラミー賞(女性R&Bパフォーマンス部門)にノミネートされたと言っていたけど、そうかあ。斜に構えたぼくは米国業界人の身内お祭り会という感じのグラミー賞にそれほど権威を感じておらず、“グラミー賞グラミー賞”と騒ぐ人を見るとバッカじゃねえのと思わなくもないのだが、当初は自己インディからアルバムを出したり、一時は状況の変化を求めてシスコの家や車を処分してNYに勝負しに出たり、と、いろんな苦労を前向きにしている彼女だけに、グラミー賞ノミネートは本当に良かったなぁと思えてしまう。

 ステージに出てきた(ソウル・ショウとしては珍しく、バンドによる前奏はなしで、初っぱなからヴォーカル曲)、レデシーを見てまたびっくり。新作ジャケに載せられているような、ミニのボディコンを着ていて。確か、前々回はロング・ドレスで、前回はジーンズだったはずで、今回が一番派手に弾けますと言う感じが出ていたし、なにより今回が一番若く見えると思った。もちろん、ときにフェイクやスキャットもかましもするが、過去のステージで見せていたジャジー/4ビート調で歌う局面はなし。というわけで、広い素養を持ってはいるが、今回は新作同様に100%R&Bで突き進むレデシーだったのだ。で、抜群の喉力やおいしい余裕などを示しつつ、1時間強のショウを披露。レデシーこそは今最も油がのっていて輝いている女性R&B歌手だと、断言できますね。

 その後に、夕方から行われているはずの、某邸での新年会に。お土産として少し珍しいワインを持っていったので、少し肩が凝った。かつて、乱暴なぼくは移動中にワインの瓶を割ってしまったことがある。この雑さは、もう直らないんだろうな。そういえば、レデシーのショウは50分ぐらいやったあと、一度彼女は引っ込み、コーラス陣がリード・ヴォーカルを取り、奏者たちもそれぞれソロを回す曲をやり、その後にもう1曲だけレデシー出てきて歌って本編はおしまいという構成を取っていた。雑というわけではないが、普通の人間の生理に合わない(?)その流れについては些細な事ながら少し疑問を持ったかな。それとも、このセットだけの進め方だったのだろうか(そういう、感じもします)。