すげえな、ハーランド。ここまで、真摯なジャズ・マンであったとは! 生理的に高尚なグループによるジャズ表現が会場に満ち、ぼくは高揚と至福を得た。丸の内・コットンクラブ、ファースト・ショウ。なんか、音響もとてもいいなあと思えた。
 
 ドラムを叩きグループ表現の骨格をどんどん変化させるハーランド(2005年5月11日、2007年10月3日、2008年4月6日、2013年1月6日、2017年1月12日、2017年1月13日)に加え、テナー・サックスのウォルター・スミスⅢ(2009年3月26日、2015年11月10日、2016年2月3日)、ピアノのテイラー・アイグスティ(2009年6月24日、2013年2月2日、2013年3月19日、2013年9月11日、2015年11月10日、2016年2月3日、2017年1月23日)、アコースティック・ベースのハリシュ・ラガヴァン(2012年2月22日、2016年2月3日)という陣容なり。新作『Vipassana』(GSI)は歌をいろいろうまく使ったギター入り現代ジャズ作だったが、1ホーンのカルテットによる今公演はそれともまた異なる回路で尊いジャズ様式を開いたと言える。今回”Voyager"という副題が付けられて、それは彼の2010年作の今回来日メンバーと同じ顔ぶれでの録音作の表題なのだが、それともけっこう離れていたんものだったのではないか。

 本編は、1曲切れ目なしで1時間演奏する。いくつかの曲を連ねているのだろうが、その流れや展開が無理なく起伏に富み、秀逸。どうにでも動いていけるジャズの美点をそれは写し出すものであり、頷くしかない。そしてその奥にはジャズという即興音楽に対する深い愛や大志が横たわっている。各人はいろんな重なりかたや奏法を見せ、それは集まり、現代ジャズの一つの確かな形となる。

 ハーランドはすべてマッチド・グリップで叩く。ドラムのキット自体は大きくはないが、スネアは二つ置いてあった。よく分析すると4ビートなんか叩いていないんだけど、伸縮性を持つビートはジャズそのもの。曲によってはチチチチとハイハットをキープし、頭にもベース・ドラムを入れ、ある意味R&B〜ロック的とも言えなくもないのに、その細分化されたリズムは今のジャズの躍動として飛翔する。それから、ラガヴァンのベースと彼のキック・ドラムが重なって動いていく場面もあって、ほう。ジャズではそういうキックの使い方や韻の重ね方はしないわけで、そんなジャズの噛み合いかたって珍しい。とかなんとか、そういうことからもR&Bやヒップホップがメイン・ストリームになって以降のリアル・ジャズをハーランドたちはきっちり演奏しているとも痛感してしまうわけだ。アンコールは曲趣が立った10分弱の曲で、この日一番エモーショナルにスミスⅢがブロウした。

▶過去の、エリック・ハーランド
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20071003
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
http://43142.diarynote.jp/201701131141476377/
http://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
▶過去の、ウォルター・スミスⅢ
http://43142.diarynote.jp/?day=20090326
http://43142.diarynote.jp/?day=20151110
http://43142.diarynote.jp/?day=20160203
▶過去の、テイラー・アイグスティ
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201303221327416224/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130911
http://43142.diarynote.jp/?day=20151110
http://43142.diarynote.jp/?day=20160203
http://43142.diarynote.jp/201701240949045953/
▶︎過去の、ハリシュ・ラガヴァン
http://43142.diarynote.jp/?day=20120222
http://43142.diarynote.jp/?day=20160203

<今日の、(T-T)>
 友達の事務所に寄ったら、カップヌードルの“クリーミートマトヌードル”というのが置いてある。新製品らしい。同社のチリトマトヌードルというのは好みだったので、お言葉に甘え、お湯を注ぎテイスティングしてみたら……。ありゃ、激マズい。これ、どうなると社内プレゼンを通るのか? と、思わずにはいられない味だな。そのあと小一時間、とても情けないことをした気分になって機嫌悪し。