ヤコブ・ブロ・トリオ。ロイ・ハーグローヴ・クインテット
2017年3月2日 音楽 まず、現在ECMからアルバムを出しているデンマーク人ギタリスト(1978年生まれ)を、丸の内・コットンクラブで見る。
ベーシストのトーマス・モーガン(2012年6月24日、25日、2013年9月7日)とドラマーのジョーイ・バロン(1999年9月24日、2011年1月30日)、NYの新旧曲者を擁する。それ、2016年作『Streams』の録音メンバーと同じですね。3人はこじんまりと、ステージ中央に固まる位置取りで演奏をした。
1曲目を聞いて、ほおうと頷く。コードの分解的なくつろいだギター演奏を腹5分目感覚で繰り広げたから。後の長目の曲だと単音のソロをとるときもあったが、生理的に楽なギターの爪弾き音総体でオイラのジャズ・ギターの世界を表現するという意思あり。なんか“さりげなくも、さりげある”感が横溢。とともに、旧来のジャズ・ギタリストとは別の景色を見て演奏しているぞ、と思わずにはいられず。リズムや音色の改新だけが、ジャズの新局面の鍵ではないと、それは言っていたか。
ただし、途中でやった、ブルース曲のときは一変。エフェクターを駆使し、それで電気的下敷き音を作ったり、それまでと比すなら気がふれたという形容もできるだろう電子音的音色の採用のもと暴れたソロをとった。おお、ジキルとハイド? 基本、ギター音色は素直なのだが、後半の少しトロピカル目な曲においては、スティール・パンの音を模したような音を作って、ブロはソロを取った。
彼が“さりげなくも、さりげある”ものを出せたのは、リズムの腕の良さがあるからでもある。純度の高い、なんて言い方もしたくなる、トーマス・モーガンの明瞭な音質はかねてから一目置かれるものであったが、生で聞き、本当に多くのウッド・ベース奏者とは音の佇まいが違うと痛感。生真面目学生風情を残す彼はベースを舐めるような感じで丁寧に弾くのだが、それと音色は関係があるのか。
一方、かつてNYアンダーグラウンド・シーンの主任ドラマーという位置で活躍したジョーイ・バロンのドラミングも只者じゃなさすぎ。スキンヘッドの彼は見た目愛嬌たっぷりなのだが、すべてレギュラー・グリップを介し、曲趣に従いマレットやブラシを多用。特に、ブラシを持っての演奏の瞬発力と立体感溢れる様には惚れ惚れ。なるほど、スティーヴ・キューン(2006年11月2日)、ジョン・アバークロンビー(2010年2月5日、2014年10月18日)、ジョン・テイラー、ゲイリー・ピーコックなどの近年のECM諸作にもいろいろ名前が見られるのも納得した。そして、時にアクセント音として踏むキック・ドラムの音が超でかい音かつボワーンと響くもので、なんだかよく分からなくはあるのだが、それにもニヤリであった。
そんなジョーイ・バロンの演奏に触れながら、1990年ごろほぼ彼と似た位置で活躍していたボビー・プレヴィットのことを思い出す。リーダー作も活発に出し、彼も順調にキャリアを重ねているが、リーダーでもサイド・マンでもいいから来日しないものか。そういえば、チャーリー・ハンター(1999年6月22日、2002年1月24日、2006年4月17日、2009年1月16日、2015年2月18日)の近2作にでも彼は叩いていて、それらはいいんじゃないという仕上がりなのだが、それでやって来ないかなあ。
▶︎過去の、トーマス・モーガン
http://43142.diarynote.jp/201207031323242844/ 菊地雅章
http://43142.diarynote.jp/201210271744294415/ 菊地雅章
http://43142.diarynote.jp/?day=20130907 リー・コニッツ
▶︎過去の、ジョーイ・バロン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/september1999live.htm マサダ
http://43142.diarynote.jp/201102091715522875/ ロン・カーター ビル・フリゼール
▶︎過去の、スティーヴ・キューン
http://43142.diarynote.jp/200611071308560000/
▶︎過去の、ジョン・アバークロンビー
http://43142.diarynote.jp/201002072246423695/
http://43142.diarynote.jp/201410231404401926/
▶︎過去の、チャーリー・ハンター
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livejune.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-1.htm
http://43142.diarynote.jp/200604181149370000/
http://43142.diarynote.jp/200901171017206901/
http://43142.diarynote.jp/201502230940316504/
この晩はもう一つ、テキサス州出身トランペッター/フリューゲルホーン奏者であるロイ・ハーグローヴ(2003年2月18日、2003年9月21日、2004年12月2日、2007年9月10日、2008年9月16日、2009年6月24日、2011年2月22日、2012年3月23日、2014年2月19日、2016年1月27日)のクインテットを聞く。会場はブルーノート東京(セカンド・ショウ)、こちらも盛況だった。
当人に加え、アルト・サックスのジャスティン・ロビンソン(2011年2月22日、2012年3月23日、2014年2月19日、2016年1月27日)、在NYピアニストの海野雅威、ベースのアミーン・サリーム(2011年2月22日、2012年3月23日、2014年2月19日、2016年1月27日)、ドラムのクインシー・フィリップスという面々。新任のドラマーは、ハワード大学を出ているボルティモア在住の奏者だ。
力と娯楽性を持つ、今の王道ジャズ演奏を例により堂々展開。観客の反応も大きかった。娯楽性というのは、▶1曲目でハーグローヴが軽やかに踊り、それをロビンソンもすることを促したり(太っちょの彼がするとおおいに客が湧いた)、▶︎ハーグローヴは2曲でラヴリーに歌ったり、▶︎本編最後の曲は、最初に2管がステージを去り、演奏が続くその後も一人づつ降りて、最後に海野が一人残りピアノの調べを聞かせたり、するあたり。その海野フィーチャーには、ハーグローヴの思いやりも感じたかな。
少しお疲れなのか、いつも長く演奏する彼らにしては珍しく、僕が見たショウは80分の演奏時間であった。
▶過去の、ロイ・ハーグローヴ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-2.htm 18日、ディレクションズ・イン・ミュージック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-9.htm 21日
http://43142.diarynote.jp/200412111742300000/
http://43142.diarynote.jp/200709171108570000/
http://43142.diarynote.jp/200809171409066704/
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201102240921561671/
http://43142.diarynote.jp/201203260806527228/
http://43142.diarynote.jp/201402201343247604/
http://43142.diarynote.jp/201601301016081732/
▶過去の、ジャスティン・ロビンソン
http://43142.diarynote.jp/201102240921561671/
http://43142.diarynote.jp/201203260806527228/
http://43142.diarynote.jp/201402201343247604/
http://43142.diarynote.jp/201601301016081732/
▶過去の、アミーン・サリーム
http://43142.diarynote.jp/201102240921561671/
http://43142.diarynote.jp/201203260806527228/
http://43142.diarynote.jp/201402201343247604/
http://43142.diarynote.jp/201601301016081732/
<今日の、そういえば……>
ふと思ったんだけど、都知事が変わって以降ずっと汚染問題で騒がれている新市場予定地の豊洲って、1998年の第2回のフジ・ロックの会場となったところとは別なのか? あのとき、会場は東京ガスの土地だという情報提供はなされていた。ぼくはあの場所に、2日のなかの1日は東京を横断してスクーターで会場に行ったんだよなあ。今となっては、ほのぼのとした思い出だな。しかし、なんにせよ、かつて東京ガスの工業施設があったときのかの地の写真はとんでもなく凄まじい公害施設地域といった感じのものであり……。ところで、豊洲移転をすすめた前々知事は作家としての評価が相当に高いよう。ぼくはその著作を読みたくもないし読んだこともないので、それについては判断がしかねるが、彼の人間性や信条を伝え聞くと、文学とはなんと虚しいものかと思ってしまう。
ベーシストのトーマス・モーガン(2012年6月24日、25日、2013年9月7日)とドラマーのジョーイ・バロン(1999年9月24日、2011年1月30日)、NYの新旧曲者を擁する。それ、2016年作『Streams』の録音メンバーと同じですね。3人はこじんまりと、ステージ中央に固まる位置取りで演奏をした。
1曲目を聞いて、ほおうと頷く。コードの分解的なくつろいだギター演奏を腹5分目感覚で繰り広げたから。後の長目の曲だと単音のソロをとるときもあったが、生理的に楽なギターの爪弾き音総体でオイラのジャズ・ギターの世界を表現するという意思あり。なんか“さりげなくも、さりげある”感が横溢。とともに、旧来のジャズ・ギタリストとは別の景色を見て演奏しているぞ、と思わずにはいられず。リズムや音色の改新だけが、ジャズの新局面の鍵ではないと、それは言っていたか。
ただし、途中でやった、ブルース曲のときは一変。エフェクターを駆使し、それで電気的下敷き音を作ったり、それまでと比すなら気がふれたという形容もできるだろう電子音的音色の採用のもと暴れたソロをとった。おお、ジキルとハイド? 基本、ギター音色は素直なのだが、後半の少しトロピカル目な曲においては、スティール・パンの音を模したような音を作って、ブロはソロを取った。
彼が“さりげなくも、さりげある”ものを出せたのは、リズムの腕の良さがあるからでもある。純度の高い、なんて言い方もしたくなる、トーマス・モーガンの明瞭な音質はかねてから一目置かれるものであったが、生で聞き、本当に多くのウッド・ベース奏者とは音の佇まいが違うと痛感。生真面目学生風情を残す彼はベースを舐めるような感じで丁寧に弾くのだが、それと音色は関係があるのか。
一方、かつてNYアンダーグラウンド・シーンの主任ドラマーという位置で活躍したジョーイ・バロンのドラミングも只者じゃなさすぎ。スキンヘッドの彼は見た目愛嬌たっぷりなのだが、すべてレギュラー・グリップを介し、曲趣に従いマレットやブラシを多用。特に、ブラシを持っての演奏の瞬発力と立体感溢れる様には惚れ惚れ。なるほど、スティーヴ・キューン(2006年11月2日)、ジョン・アバークロンビー(2010年2月5日、2014年10月18日)、ジョン・テイラー、ゲイリー・ピーコックなどの近年のECM諸作にもいろいろ名前が見られるのも納得した。そして、時にアクセント音として踏むキック・ドラムの音が超でかい音かつボワーンと響くもので、なんだかよく分からなくはあるのだが、それにもニヤリであった。
そんなジョーイ・バロンの演奏に触れながら、1990年ごろほぼ彼と似た位置で活躍していたボビー・プレヴィットのことを思い出す。リーダー作も活発に出し、彼も順調にキャリアを重ねているが、リーダーでもサイド・マンでもいいから来日しないものか。そういえば、チャーリー・ハンター(1999年6月22日、2002年1月24日、2006年4月17日、2009年1月16日、2015年2月18日)の近2作にでも彼は叩いていて、それらはいいんじゃないという仕上がりなのだが、それでやって来ないかなあ。
▶︎過去の、トーマス・モーガン
http://43142.diarynote.jp/201207031323242844/ 菊地雅章
http://43142.diarynote.jp/201210271744294415/ 菊地雅章
http://43142.diarynote.jp/?day=20130907 リー・コニッツ
▶︎過去の、ジョーイ・バロン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/september1999live.htm マサダ
http://43142.diarynote.jp/201102091715522875/ ロン・カーター ビル・フリゼール
▶︎過去の、スティーヴ・キューン
http://43142.diarynote.jp/200611071308560000/
▶︎過去の、ジョン・アバークロンビー
http://43142.diarynote.jp/201002072246423695/
http://43142.diarynote.jp/201410231404401926/
▶︎過去の、チャーリー・ハンター
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livejune.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-1.htm
http://43142.diarynote.jp/200604181149370000/
http://43142.diarynote.jp/200901171017206901/
http://43142.diarynote.jp/201502230940316504/
この晩はもう一つ、テキサス州出身トランペッター/フリューゲルホーン奏者であるロイ・ハーグローヴ(2003年2月18日、2003年9月21日、2004年12月2日、2007年9月10日、2008年9月16日、2009年6月24日、2011年2月22日、2012年3月23日、2014年2月19日、2016年1月27日)のクインテットを聞く。会場はブルーノート東京(セカンド・ショウ)、こちらも盛況だった。
当人に加え、アルト・サックスのジャスティン・ロビンソン(2011年2月22日、2012年3月23日、2014年2月19日、2016年1月27日)、在NYピアニストの海野雅威、ベースのアミーン・サリーム(2011年2月22日、2012年3月23日、2014年2月19日、2016年1月27日)、ドラムのクインシー・フィリップスという面々。新任のドラマーは、ハワード大学を出ているボルティモア在住の奏者だ。
力と娯楽性を持つ、今の王道ジャズ演奏を例により堂々展開。観客の反応も大きかった。娯楽性というのは、▶1曲目でハーグローヴが軽やかに踊り、それをロビンソンもすることを促したり(太っちょの彼がするとおおいに客が湧いた)、▶︎ハーグローヴは2曲でラヴリーに歌ったり、▶︎本編最後の曲は、最初に2管がステージを去り、演奏が続くその後も一人づつ降りて、最後に海野が一人残りピアノの調べを聞かせたり、するあたり。その海野フィーチャーには、ハーグローヴの思いやりも感じたかな。
少しお疲れなのか、いつも長く演奏する彼らにしては珍しく、僕が見たショウは80分の演奏時間であった。
▶過去の、ロイ・ハーグローヴ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-2.htm 18日、ディレクションズ・イン・ミュージック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-9.htm 21日
http://43142.diarynote.jp/200412111742300000/
http://43142.diarynote.jp/200709171108570000/
http://43142.diarynote.jp/200809171409066704/
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201102240921561671/
http://43142.diarynote.jp/201203260806527228/
http://43142.diarynote.jp/201402201343247604/
http://43142.diarynote.jp/201601301016081732/
▶過去の、ジャスティン・ロビンソン
http://43142.diarynote.jp/201102240921561671/
http://43142.diarynote.jp/201203260806527228/
http://43142.diarynote.jp/201402201343247604/
http://43142.diarynote.jp/201601301016081732/
▶過去の、アミーン・サリーム
http://43142.diarynote.jp/201102240921561671/
http://43142.diarynote.jp/201203260806527228/
http://43142.diarynote.jp/201402201343247604/
http://43142.diarynote.jp/201601301016081732/
<今日の、そういえば……>
ふと思ったんだけど、都知事が変わって以降ずっと汚染問題で騒がれている新市場予定地の豊洲って、1998年の第2回のフジ・ロックの会場となったところとは別なのか? あのとき、会場は東京ガスの土地だという情報提供はなされていた。ぼくはあの場所に、2日のなかの1日は東京を横断してスクーターで会場に行ったんだよなあ。今となっては、ほのぼのとした思い出だな。しかし、なんにせよ、かつて東京ガスの工業施設があったときのかの地の写真はとんでもなく凄まじい公害施設地域といった感じのものであり……。ところで、豊洲移転をすすめた前々知事は作家としての評価が相当に高いよう。ぼくはその著作を読みたくもないし読んだこともないので、それについては判断がしかねるが、彼の人間性や信条を伝え聞くと、文学とはなんと虚しいものかと思ってしまう。