サマーソニックにも出演した、ニューオーリンズのブラス・バンドのショウをまず見る。取材がおして、会場のブルーノート東京入りしたのは、19時30分。前半の30分見れなかったが、彼らの要点はちゃんと掴めたかにゃ。

 まず、ふむふむと頷いたのは、その編成。手で叩くバスドラを中心とする打楽器奏者とスネアを中心とする打楽器奏者それぞれ1人、スーザフォン、テナー・サックス、2人のトランペット、2人のトロンボーンという、純パレード仕様の構成を保っていること。同地ブラス・バンド表現中興の祖たるザ・ダーティ・ダズン・ブラス・バンド(2002年7月30日、2004年7月27日、2004年9月17日、2007年5月15日 2004年9月17日、2015年3月5日)だって、ギタリストを入れるとともに、ライヴ・ショウにおいてはドラム・セットを用いていることを考えると、その編成は生理的に尊く見える。2人いる打楽器奏者は2人あわせてドラム・セットの音になるという感じもある。今回、バスドラの音があまり聞こえなかったのは残念だが。

 その一方、レパートリーはわざとニューオーリンズと繋がらないものを持ってきていると思わせる。ホール&オーツ(2005年3月21日、2011年2月28日)の「アイ・キャン・ゴー・フォー・ザット」やマイケル・ジャクソン「ビリー・ジーン」とか、もう畑違いのポップ曲をぽんぽんとやる。彼らは昔からレゲエもやっていたがそれも危なげない。アレレと思ったのは、彼らはヒップホップ要素を取り込んでいることでも知られるが、ぼくが見た45分ではそれが皆無であったこと。頭の30分はどうだったのだろう。

 曲によっては前列に立つ管楽器奏者の5人は一緒にヴォーカルを取る。そうなると、もうニューオーリンズ色もなくなってしまうわけだが、それを微妙なところでその立脚点とつないでいたのは、良く聞こえたスーザフォンによるベース音。ただし、そのエドワード・リーJr.の吹き口はどこがのぺっとした情緒を持っていて、それはどこか鍵盤ベースの音を思いだせはしなかったか。少なくても、R&Bにおける鍵盤ベースの恩恵をちゃんと知っている世代の奏者であると指摘したくなる味をスーザフォン奏者は抱えていた。とかなんとか、伝統/土着とそこからの飛び出し具合の共存のさせかたが変てこと思わせるものがいろいろあった。

 グループが結成されて四半世紀近くたつが、若いときからやっているはずで、面々はパっと見40絡みという感じか。って、オリジナル・メンバーが誰なのかは調べを入れていなれていないが。アンコールはもろにニューオーリンズ的曲調を持つもので、するとバンドの音色が濃くなり、ブラスの絡みもより活き活きとしたと、それを歓迎したぼくには思えた。

▶過去の、ザ・ダーティ・ダズン・ブラス・バンド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040727
http://43142.diarynote.jp/200410071540230000/
http://43142.diarynote.jp/200705181811530000/
http://43142.diarynote.jp/201503060912185943/
▶過去の、ホール&オーツ/ジョン・オーツ
http://43142.diarynote.jp/200503240456350000/
http://43142.diarynote.jp/201103031015296753/
http://43142.diarynote.jp/201204091013123643/

 その後、下北沢のシェルターに行って、フランスの新進エレクトニカ3人組のM.A.ビート!を見る。PC関連機器のサミー、キーボードやエレクトリック・ベースや縦笛のルイ、ドラムのエイドリアンの3人でフランスのナンシーで結成。EP『pushing forms』(BMM)をリリースしたときはサミーのソロ・プロジェクトであったが、今年出たフル・アルバム『Drowing for Love』(BMM。デジタル配信とアナログ盤、その二本立てによるリリース)から3人編成になっている。

 その『Drowing for Love』には、少し驚かされた。電気音と生音の風情あふれるタペストリーともいうべき音の流れは、フランス流ワビサビというべきものを存分に感じさせる仕上がりであったから。また、随所にエスノ的な音使いの粋があって、それはかつてワールド・ミュージック推進地となったフランス発の現代表現であるとも痛感させられる。そして、実際の演奏もCDから得た興味をいろいろと広げるものであり、さすがに生ではより太く、ダンサブルな展開を見せてもいて、それについてもまっとうと思わせた。
 
 しかし、そんなイケてる3人がまだ20代あたま(一人は大学生のよう)であるとは。確かに、顔つきはまだ若い。

<今日は、わりとすごしやすかった>
 (リハがおして)18時すぎに取材をしたのは、そのM.A.ビートの面々。今日はわりと涼しい1日で、喫茶店の外のテーブルでインタヴューをしたのだが、快適だった。そのグループ名は、ハイセンスな音と異なり、“おいらの、ちん○ん”という意味を持つそう。なんと彼らは8月2日から26日の間、日本をツアー中。ど暑い中、すでに半分以上の行程をこなしてきているはずだが、ぜんぜん困憊している様子がなく、若いっていいナと思うことしきり。彼らは日本的な音の差し込みを見せる曲目も持つが、琴とかを購入したく思っているようだ。いかにも草食系のドラマーは、アート・ブレイキーとかアイドリス・ムハマッドが好きだそう。そういえば、ブルーノートやプレスティッジにリーダー作を残す変則リード奏者のジョージ・ブライスが来日中で、この8月にいろんな所で日本人リズム隊と公演を行っているのを今日知る。20日はモーション・ブルー・ヨコハマでもやるが、え〜んすでに予定を入れてしまっていて無理かなー。