フジ・ロック・フェスティヴァルに出演した熟達米国黒人音楽家の出るショウをはしごする。両会場ともかなりな入り。そして、お客さんが皆うれしそうで、いやーなによりなにより。

 まず、シカゴ・ブルース界の2人の重鎮をフロントに置いたライヴを南青山・ブルーノート東京で見る。前半はエディ・ショウ(ヴォーカル、テナー・サックス)が歌い、中盤以降は90歳らしいヘンリー・グレイ(ヴォーカル、ピアノ音色のキーボード)がフィーチャーされる。サポートはギターのシュン・キクタ、6弦エレクトリック・ベースのフェルトン・クルーズ、昨年はシル・ジョンソンのサポートでフジに出たというドラムのデリック・マーティン(2014年7月29日)。リズム・セクションは今のブルーズ・バンドとしては上位にあると言えるだろう。マーティンは視覚的にも見せようとする人で、曲の最後にいつもジャンプをする。ハハ。

 ショウもグレイも巨匠ハウリン・ウルフのバンドに関与していたということで、“・ウルフ・トリビュート”のお題目がつけられていたが、グレイのほうは「スタッガ・リー」とかいろんな曲をやって、我が流儀を突き進んだという感じか。ショウの歌は濁りがあり、グレイのほうはほつれの感覚がぐいぐい体内に入ってくる。濁りもほつれも、ブルースの重要要素であると思わされることしきり。ぼくはグレイのほつれのほうがより魅力的に感じられて、グっと来た。

▶過去の、デリック・マーティン
http://43142.diarynote.jp/201408051721103640/

 そして、渋谷・クラブクアトロで、日本の好ジャンプ・バンドとデキサス州ヒューストン生まれ/在住の個性派女性ヴォーカリストの共演を見る。ぼくが会場入りしたのは、ブラウンが出て来てブラッデスト・サキソフォンに重なった少し後だったようだが、ものすご〜く良かった昨年の両者の共演ステージ(2014年6月28日)をばっちり超えるもの。もうジュエルの剛毅な歌の味、ブラッデスト・サキソフォン(+ピアノの伊東ミキオ)の伴奏、その両者の信頼関係ある重なり、もう完璧と言いたくなる出来ではなかったか。で、去年より両者が一緒にやる時間が3倍になっていたのではないか。イエイ。とにもかくにも、ジャズ←→ブルースの醍醐味をがぶりっと鷲掴みし、精気と歓びに満ちたものとして送り出されたものを受け止める興奮と幸福感たるや。米国黒人音楽として重要なものがただただ横溢、素晴らしすぎました。

▶過去の、ブラッデスト・サキソフォンとジュエル・ブラウン
http://43142.diarynote.jp/201406291238493838/

<翌日の、宝石>
 ジュエル・ブラウンのさよならパーティ会場で、彼女とブラッデスト・サキソフォンを率いる甲田伸太郎(彼はパーティのシェフとしても活躍)にインタヴューする。ブラウンさん、もうステージで見せる様と同じ、ガハハな好おばあちゃん。ほんと、いい味を持っている。なんと、今回は単身で来日したという。1960年代のルイ・アームストロング楽団にいたときの映像を見ると可愛らしくキラキラ輝いていてなるほど“ジュエル”だと思わされるが、それはお母さんからつけられた愛称であるという。
追記)インタヴューのテープを起こしたら、ジュエルさんの声のデカいこと! うひゃあ。8月売りのジャズ・ジャパン誌に掲載、なり。