見た目よりも年長に見え、弾き口も趣味良く老成していると言えなくもない、1959年生まれ米国人ピアニストと1951年生まれスウェーデン人ピアニストの、ともにトリオの公演をはしご。両者ともリーダーとしての来日回数はそれなりに持つはずで、今回はそれぞれ、管奏者を一人ゲストに加えた設定でライヴをする。

 まず、南青山・ブルーノート東京で、ローゼンタール(2005年7月10日、2009年6月7日)のショウ。縦ベースはNYで10年は活動している日本人の植田典子、ドラムは同じくNYに住む(のかな?)カナダ人のテリー・クラーク。で、少し驚いたのは、リズム隊が持つごっつさのようなもの。これが骨太で、勢いや立ちの感覚を持つ。これじゃ、ローゼンタールの演奏だってただ瀟洒に流れるはずもなく、けっこうパッションを抱えた、引っかかりのあるピアノ・トリオ演奏を聞き手にブツけてくる。イエイ。そして、それは途中から日野皓正(2005年6月5日、2006年11月3日、2011年3月28日、2011年7月25日、2011年9月2日 、2013年9月22日)が加わるとより顕著に。演目は、「ウィスパー・ノット」、「ラウンド・ミッドナイト」、「ストレート・ノー・チェイサー」などスタンダードをやるが、もう演奏者の創意と矜持が絡み合うそれらにはふふふ。日野はピックアップで拾った吹き音を無線で卓に流す(それ、毎度のことだろうが)が、もう少し自然な音にはできないか。少し、コントロールが弱くなっている部分もあるのかな?  とはいえ、狂おしい情感を随所にまぜるエモーショナルにして、ぼくには閃きにも満ちる吹き口はやはり彼らならではのものであり、格調高い4ビートで吹きまくる日野を聞きたくてこの日の実演を見に来たぼくは、やはり満足。彼の演奏には、ジャズとしてあまりに重要なものが口惜しいほどある。

 その後は、六本木・STB139で、ラーシュ・ヤンソンのショウ。とても整備されたトリオに、そのままメンバーのようにテナーのイングマールソンは加わっていた。スウェーデン人たちによるこちらは、先のローゼンタールたちと比較するには、やはり物腰が柔らかい。しっとり、すうっと流れる、その質感にはやはりスカンジナヴィア的と思わされたか。ときに曲はメロディアス、また噛み合いに繊細に留意している部分も散見されるが、一方でブルース曲もいくつか凝らずにやったりするのは面白い。ジャズの原点確認をしている、な〜んてね。初めて見るヤンソンは紳士然としつつかなりお茶目なところもあり、それが音楽をする歓びに結びついたりもしていて、その様が良いとも思わされた。

▶過去の、ローゼンタール
http://43142.diarynote.jp/?day=20050710
http://43142.diarynote.jp/200906091637138003/
▶過去の、日野
http://43142.diarynote.jp/200506120639310000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20061103
http://43142.diarynote.jp/?day=20110328
http://43142.diarynote.jp/201107310727152406/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110902
http://43142.diarynote.jp/201309260930584072/

<今日の、もろもろ>
 ローゼンタール・トリオのギグは、本来は大御所ジャズ・シンガーのヘレン・メリル(1930年、NY生まれ。2005年7月10日、2013年4月9日)名義の公演だったものの、彼女が肺炎で入院し来日が不可能になってしまい、そのままサポートの面々でのリーダー公演になったもの。そりゃ、吹っ切れて、元気なことをしたくなるか? 日野皓正はメリル公演にもゲストとして名が入れられていたが、そうなったことで彼がフィーチャーされる時間はより長くなったというわけですね。一方、STB139は5月下旬で閉店する(最終日公演は、日野皓正が中心となる出し物のよう)ようで、ぼくは今日がこのハコに来るのは最後となるのかも。15年の歴史を持つということだが、もう少し長く営業していたような気もぼくはしてしまう。ぼくがここで見た最初のアーティストはヴァニラ・ファッジ(1999年2月のことだから、“ライヴ三昧”を始める少し前。これは1999年4月から書いている)。当初、このハコには米国レトロ・ロック勢がいろいろブッキングされたという記憶がある。
▶過去の、メリル
http://43142.diarynote.jp/200507161353300000/
http://43142.diarynote.jp/201304101851422199/