キャラヴァン、ハット・フィールド&ザ・ノーツ、キャメルといったバンドの活動で知られる、カンタベリー派なんても言われる、歌心と奥行きにとんだUKプログ・ロック界から出た名ベーシスト/シンガーのソロ・パフォーマンスのショウを昼下がりに見る。代官山・晴れたら空に豆まいて。駅周辺は、人がいっぱい。このへん、ウィーク・デイとウィーク・エンドじゃ、ぜんぜん風景が違うんだろうな。

 へえ、こんなにマイペースな人なのか。神経質さ、ゼロ。始まる前から、鼻歌全開という感じで歌声を出し、呑気で、天然度高し。客電が落ちた後、なんか忘れ物したのか一度楽屋に戻りかけたり、熱心なファンがじっと見守るなか、改めてスタッフに始めていいのと聞いたり。その、自己完結している”よいよい”ぶりに接すると、65歳という年齢よりも上に感じるか。現在、彼はイタリアに住んでいるらしい。

 前半は、アコースティック・ギターの弾き語り。始まって、これがポルトガル語で歌っていたら、ボサ系ブラジル人のショウに来ているんだっけと錯覚したかもしれないと、一瞬思う。そんなにボサっぽい弾き方はしないが、脱力したなあなあ感がそっちのほうと繋がる味を持っているんだろうな。けっこう気ままに、自分の手癖や鼻歌(スキャット、多し)を気持ち良さそうに綴っていくと説明できるだろうパフォーマンス。ギター演奏自体はけっこうジャジーな抑え方もするし、淡い木漏れ日のような感覚を携え透明感ある歌心がすうっと場内に散っていく。

 そして、途中からは4弦フレットレス・ベースと6弦エレクトリック・ギターのダブルネック仕様ギターを弾きながら歌う。エレクトリック・ギターを弾きながら歌う方が多いが、ベース演奏のさいは少しジャコ・パストリアス的と思わせる場合もある。楽器音をループして重ねていくとかいう局面はじいさんらしく一切なく、ギターにしろベースにしろ、シンプルな歌と楽器の相乗表現をふんふんと開く。ちょい出来損ないのホーミーみたいな歌い方をするときもあり、その際はほんの少しエスノ濃度が上がりもしたか。

<今日の、4万人>
 ライヴ後、なんとチケットが売り切れになったという、味の素スタジアムでのFC東京とセレッソ大阪の試合に行く。この日曜の国立競技場(あそこに、ホントにあんな珍妙な建造ブツが五輪用に出来ちゃうの? 少し、周辺風景を脳裏に刻んだ)のJ2試合に続く、今年3度目のサッカー生観戦。いいタイミングで会場に着いたが、うわー観客4万人はやはりすげえ。がらがらのスタンドでダラダラ見るのは楽で好きだが、これはイヴェントに来ているという気持ちになれる。アがる。人気者がいろいろいるセレッソ効果による動員だろうが、一昨年&昨年のFC東京監督のセルビア出身でオーストリア人ランコ・ポポヴィッチと今年からFC東京の監督となったイタリア人マッシモ・フィッカデンティの能力の差があっさり出た試合と思えた。けっこう“地蔵”かと思っていたフォルラン(髭のばしはじめたのね。やはり、一度は生で見てみたかった)、いちおう走るじゃん。FC東京の2点目は、おしゃれ。とかなんとか、今日は“レコード・ストア・デイ”だったようだが、レコード屋には足を運ばず、終わってしまった。