10年強前、ぼくに多大な共感を持たせた、ブラジルのファンク・ロック・バンドがペドロ・ルイス・ア・バレージ。今もグループは解散していないようだが(構成員がモノブロコに入っていて休業状態らしい)、昔は暴れん坊といった感じも受けたそのリーダーをここに来て、東京で見ることができようとは。それは彼が、ホベルタ・サーという現ブラジル音楽界でピカピカに輝く美形女性歌手と結婚しちゃったから。出てきた本人は真面目そうなとっちゃん坊や風情(それゆえ、セクシャリティにも欠けると感じる)の人物で、それには少し拍子抜け。なんでかな。俺は、美女と野獣的なものを歓迎する、メンタリティを持っているのか?

 サウンドの上で舞うように歌うサー嬢と小さな鳴りもの主体にときにギターと歌を披露するルイス(パレージの曲もやった)、サーの音楽的後見人のホドリーゴ・カンペーロ(ギター)、そしてエルシオ・カファロ(ドラム)という面々にて、パフォーマンス。曲によってはプリセット音もあっさり併用していたが、なんにせよ、そのサウンドにあるほんの隙間の感覚や光彩感など、いろいろ望外にうれしい。

 ブラジルの伝統と今を生きる彼らの創意や機微が有機的かつしなやかに重ねられ、その中央にはサーの滑らかかつ妖艶な歌声があるのだが、その歌は本当に誘いと滋味を持つ。うっとり。素敵な属性と素敵な個体の、おいしい出会いがここにはあると本当に思わせられ、心躍りまくり。今年有数、と思わせる、いい公演でした。

 恵比寿・リキッドルーム。本編とアンコールを終えた後、4人はステージ中央に並んで、心からうれしそうに歓声に応える。その肩を組んだ4人の佇まいの良いこと。それ、間違いなく、今年No.1?