ロックス

2010年11月2日 音楽
 六本木・ビルボードライブ東京、ファースト・ショウ。ジャマイカとイランの血をひく、新進の英国人女性歌手。それなりに活動歴は持っているようだが、デビュー・アルバムはラフ・トレイドから今年だした。それはアリシア・キーズ作に関与していた人物が制作していて、アリシア・キーズ・ミーツ・エイミー・ワインハウス、なんて言われ方も一部でされたか。ステージに出てきた彼女はおきゃんな髪型と生足ホット・パンツ姿で溌剌、歳は20代前半〜中盤? バンドはキーボード、ギター、ベース、ドラム、男女バックグランド・ヴォーカルというもの。肌の白い人と黒い人の混合編成で、なんとなくUKっぽいと思わせたか。過剰に上手いとは思わないが、重なりは確かで、かつダブっぽい演奏の時には見事にその旨味をきっちり生音で出していて、感心した。前方にもキーボードが置いてあって、あれれ彼女ってピアノを弾きながら歌う人なのと思ったら、立ってマイクを持ちながら歌い、それは使用せず。

 そして、ショウが始まると、なるほど、ある意味、コレは傾向外だなと、頷く。
 ポップスと言うには少し憚られる 喉力をちゃんと持つが、いわゆる純R&B的ではない。それは、基本マイナー・キーのくすんだ、R&Bぽくない曲調のものが多いためもあるだろうが、それとともに、それは彼女の声質に負うのではないのか。その声はとても愁いや悲しみの余韻(それをぼくは、青白い光を宿す、なんて書きたくなるかも)を持つのだが、それがブルース文脈とはつながらない感覚を持っていたから(だが、ゴスペルっぽいサウンドは一部で効果的に採用)。最初は接していて、なんとなく落ち着かないゾと思わなくもなかった。だけど、それは米国産のR&Bとは見事に一線を画す味を存分に抱えているわけで、存在するべき理由がありますね。

 あと、少し感心したのは、ショウの進め方の意外な巧みさ。たとえば、途中できっぱりと立ちなさいよと言って、客を立たせたあたり。それ、かなり強引とは思わせるものの、屈託なく爽やかパワフルに働きかけて、見事に客をコントロールしていた。また、アンコールで最後の曲よと言ってやった曲が落ち着いた曲(ここで、彼女は初めてキーボードの前に座った)で、これでいい感じで終われるのかと疑念を抱いていたら、途中から怒濤の盛り上げ&高揚を見事に作り出していたあたり。へーえ。