ノルウェーの個性的サックス奏者であるカール・セグレムの公演は新作『Nordic Balm』(Ozella)と同じ顔ぶれにて来日した。1961年生まれの当人に加えて、ピアノのアンドレアス・ウルヴォ、ダブル・ベースのスィッガード・ホール、ドラムのヨナス・ハウデン・ショバーグ。その3人は30 代か。新宿ピットイン。

 演奏者の質は高い。リーダーのセグレムは曲によっては、同地のトラッド楽器である角笛を吹くというのがポイント。それ、山羊の角を用いたプリミティヴな楽器で、片方から出した声が増幅されて出る。つまり、音程はすべて最初に発した声に準ずるという代物。でも、彼はその使い熟しをモノにしていて、完全にバンド表現に用いる。また、彼はテナーを吹いている際も時に角笛を吹くのと同様に声を出し、それは朝顔からマイクで拾われる。最初、編成にないメロディ音が出てきてプリセット音も併用しているのかと思ったら、セグレムによるものだった。

 と、そういう楽器採用や奏法だけでも普通のジャズのフォーマットから離れているのに、楽曲やサウンドもまたある意味オルタナティヴ。例えば、1曲目はとても牧歌性の高い曲で、ぼくはジム・ペッパー(http://43142.diarynote.jp/?day=20140517 参照)を想起した。聞く人によっては、ヤン・ガルバレク(2002年2月13日、2004年2月25日)を思い出す人もいるか。他はもう少しメランコリックだったりする曲調やどこかパット・メセニー(1999年12月15日、2002年9月19日、2010年6月12日、2012年1月25日、2012年3月3日、2013年5月21日、2015年9月27日)を思い出させるような牧歌的な曲もやるが、それらは雄大な自然を思い出させる手触りがたっぷり。伴奏陣もジャズ素養/器量が高いのは間違いないのだが、そうした曲想に沿うように、一筋縄でいかない〜ジャズの王道流儀から離れた演奏をしていて興味深いったらありゃしない。ピアニストの効果的な弦の押さえ方や、ベースの軽く弾いているようで絶妙の音選びの深さ、ドラマーは実はほあまり4ビートっぽい叩き方を見せなかったりと、飽きることがなかった。

 このクインテットのあり方が、最新のジャズのモードを持っているとは思わない。だが、自ら抱える属性を存分に活かしつつ、個性の追求を思うまますると、こうしたジャズ・ビヨンド表現は現れるのだなと納得しまくった。

▶過去の、ヤン・ガルバレク 
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200402251031510000/
▶過去の、パット・メセニー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/201006181520054406/
http://43142.diarynote.jp/201201271245417497/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201305260927026044/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/

<今日の、ミス>
 ライヴ後に知人と流れ、その後もふらふら、ふわふわ。わあ、カリーム・リギンズ(2005年9月15日、2015年9月6日)が出る深夜イヴェントがあるのをすっこ〜んと忘れる。その話を、沼澤尚としたばかりなのに。。。そういうポカもOK。だからこそ、飽きずにライヴ通いができるのダと思おう。
▶過去の、カリーム・リギンズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20050915
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/