丸の内・コットンクラブで、現ニューオーリンズ・ファンクのNo.1ドラマーであるスタントン・ムーア(2000年8月13日、2000年12月7日、2001年10月13日、2002年7月28日、2004年2月5日、2007年12月11日、2010年3月29日、2012年7月27日、2012年7月30日、2013年1月30日、2014年10月28日)のジャズ・ピアノ・トリオを見る。

 ギャラクティックを長年続けるかたわら、スター・ドラマーらしく数作のソロ作も出している彼だが、このトリオは彼がジャズ表現にのぞんだ2014年新作『カンヴァセイションズ』(ザ・ロイヤル・ポテト)と同じ顔ぶれによるもの。

 1956年生まれのデイヴィッド・トウカノウスキー(ピアノ)、1955 年生まれのジェイムズ・シングルトン(ベース)、1972年生まれのムーア(ドラム)の3人は、皆ネクタイ着用(下はジーンズだったり、派手なパンツだったり)。シングルトンとムーアは間違いなくニューオーリンズ生まれ。トカノウスキーの生誕地は不明だが、彼の1988年ラウンダー発『Steppin’ Out』はニューオーリンズ・ジャズ界の元締め的存在であるエリス・マルサリス(2012年9月8日)がライナーノーツを書いていたりもするので、ニューオーリンズで音楽教育を得ているのは間違いないと思われる。トウカノウスキーにせよシングルトンにせよ、ジャズ以外のレコーディングにも関わっていて、トカノウスキーはアーロン・ネヴィル(2004 年9月18日、2012年5月14日)やジョージ・ポーターJr.(2007年2月2日、2007年2月4日、2008年8月12日、2009年7月25日、2014年1月17日)やアーマ・トーマス(2011年12月1日)ら、シングルトンはジョニー・アダムス、シャーメイン・ネヴィル(2007年2月6日)、ザ・ホームズ・ブラザーズ(2004年9月18日)らニューオーリンズ/南部在住者の作品に入っている。

 モンク曲からオリジオナルまで。初っぱから立ったドラム演奏(ドラム・キットのセッティングは普段のファンクもの演奏時と少しかえていたかな?)をフィーチャーする部分を持ち、さすがはドラマーがリーダーの公演であると思わせるし、ムーアの叩き口ゆえにニューオーリンズのトリオであることを意識させる。そんなわけなので、少しまっとうではないピアノ・トリオであり、デコボコした表現が送り出されたと、説明できますね。ピアノ演奏はわりとフツーだが(ちょい性格悪そうな感じが出るのが少しイヤ)、ベースもまたときに暴れた指さばきを繰り出す。実は、そのシングルトンのリーダー・アルバムの数はスタントンのそれよりも多い。ハネた曲よりもしっとりした曲のほうが何気に妙味が出ているような気に、ぼくはなったかも。最後の曲はニューオーリンズのパレードをすぐに想起させるタンバリンの独奏から始まり、途中までは右手にタンバリンをスティック代わりに持って、ムーアはドラムを叩いた。

▶過去の、ムーア
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm ギャラクティック(バーク・フェス)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm ギャラクティック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm ギャラクティック(朝霧ジャム)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm  触れていないが、ギャラクティックで出演し、ジョージ・クリントンが飛び入り
http://43142.diarynote.jp/?day=20040205
http://43142.diarynote.jp/200712161021270000/
http://43142.diarynote.jp/201004080749482839/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120730
http://43142.diarynote.jp/201301311053069360/
http://43142.diarynote.jp/201410301514399746/
▶過去の、エリス・マルサリス
http://43142.diarynote.jp/201209191209186663/
▶過去の、アーロン
http://43142.diarynote.jp/200410121001170000/
http://43142.diarynote.jp/201205221056242128/
▶過去の、ポーター・Jr.
http://43142.diarynote.jp/200702090041480000/
http://43142.diarynote.jp/200702121118370000/
http://43142.diarynote.jp/200808140129280000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090725
http://43142.diarynote.jp/?day=20140117
▶過去の、トーマス
http://43142.diarynote.jp/201112091410372738/
▶過去の、シャーメイン・ネヴィル
http://43142.diarynote.jp/200702122331460000/
▶過去の、ザ・ホームズ・ブラザーズ
http://43142.diarynote.jp/200410121001170000/

 そして、南青山・ブルーノート東京へ。テナー・サックス奏者のボブ・ミンツァー(2009年3月23日、2012年6月21日、2014年1月15日)率いるビッグ・バンドの公演。構成員にはアルト・サックスのボブ・シェパード(2004年2月13日)やテナー・サックスのボブ・マラック(2008年3月17日、2009年5月23日、2013年8月8日)などを含むが、皆いい吹き手なんだろう、出音がでかいし、フィーチャーされるソロも頷かせる。ある曲におけるトランペッターの丹精なソロには唸ったな。面白いのはアフリカ系奏者が一人もいないこと。それは意識的な人選なのだと思う。

 長年ビッグ・バンド・ジャズ表現に関与してきているミンツァーが秀才だなと思えるのは、同表現の限界を知っていること。と、書くとネガティヴな意が出てくるかもしれないが、やっぱり米国エンターテインメント表現を支えてきたビッグ・バンド表現には踏まなければならない回路があり、それをちゃんと通ったうえで表現を展開しようとしていると思えた。彼はいろんなビッグ・バンド表現を精査したうえで、その長所を引き継ぐ現代大型表現を出している。秀才という書き方にははみださないという意味も含んでいるが、音のデカさに表れているように、これだけ臨場感豊かにビッグ・バンド音を開けるなら、いいではないか。

 また、クールな彼は、それゆえに、新しい広がりの素、触媒をちゃんと用意する。すくなくても、近年の日本公演においては。前回(2012年6月21日)はブラジル人ギタリスト/シンガーのシコ・ピニェイロやジャズ歌手のカート・エリング〜そういえば、八代亜紀(2012年11月9日、2014年3月13日)のライヴ盤も出ているNYバードランドでの2013年3月のジャズ公演を音楽面で面倒を見たのは彼なんだってね〜を同行させていたが、今回は男女二人づつという構成を持つコーラス・グループのニューヨーク・ヴォイセズ(教えているバークリー音楽大学での授業の都合でリーダーは来日ができず、男性の一人は代役であったよう)がゲスト。半分(強)ほどで、4人はステージに立ち、オケと無理なく重なったり、ア・カペラを披露した。「オールド・デヴィル・ムーン」とか聞いていてとてもリッチなショウであり、大人の“ハレの場”として相当なグレードを持つ出し物と思わされたか。アンコールでは、ミンツァーはピアニストと二人で出て来て、黒くならないブルース・コード曲を披露。パフォーマンス時間は90分をこえていたはず。

▶ボブ・ミンツァー
http://43142.diarynote.jp/200903260425159549/
http://43142.diarynote.jp/201207031311348277/
http://43142.diarynote.jp/201401171005571275/
▶過去の、シェパード
http://43142.diarynote.jp/200402171832080000/
▶過去の、マラック
http://43142.diarynote.jp/200803201208100000/
http://43142.diarynote.jp/200905250112267742/
http://43142.diarynote.jp/201308110828525647/
▶過去の、八代
http://43142.diarynote.jp/201211170926496101/
http://43142.diarynote.jp/201403151023031434/

<今日は、盛況>
 3連休の初日、天気もいいし、街行く人の表情も柔らかいような。両会場とも盛況、とくにブルーノート東京のほうは立ち見も出てのパンパンで、ビッグ・バンドものの人気を再認識。ニューヨーク・ヴォイセズはGRP と契約していたころ同旧店舗で1週間の帯公演をやったこともあったはずで、すこぶる豪華な出し物でもあるのは間違いないわけだが。その後にぼくの知人と知人がジョインし、1時間半の間にワインをスカっと3本開栓。