ベティ・ライト。ロバート・ランドルフ&ザ・ファミリー・バンド
2012年2月28日 音楽 最初に、マイアミ・ソウルの女王(といっても、ローティーンでデビューしているので、まだ50代だが)を見る。ベース、ギター、鍵盤、ドラム、打楽器、3人の女性コーラス(うち、二人は娘)を率いて、山あり谷ありのショウ見せる。彼女は歌うだけでなく、曲やサウンド作りまで面倒を見ることができる人だが、けっこう鷹揚に他人の曲も披露したな。そういうおおらかさも、マイアミ的か? ホイットニー・ヒューストン追悼を込めて、「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」も娘らをフィーチャーして披露。クリス・ケナーやサム&デイヴからフランキー・ミラーまでいろんな人が取り上げているアラン・トゥーサンの名曲「シュー・ラ」も歌ったが、彼女も昔取り上げていて、それを弾力性豊かに披露。彼女はザディコと言っていたが、広義のニューオーリンズ/ルイジアナ曲という意味で使っていたのかな? サンプリングもいろいろされた彼女の72年当たり曲「クリーン・アップ・ウーマン」は途中で「セックス・マシーン」らJB曲フレイズやアイズリーズの「イッツ・ユア・シング」なども取り込む。ま、彼女はときに、ミニー・リパートン的な高音ヴォイスも得意げに出す。それ、昔からの売り。
さっくばらんに、どこか気高く。やはり、米国R&B史を飾るべき人であるとも痛感。彼女の場合は、マイアミに居住し続けた結果、ミレニアムになると、その旨味を求めるエリカ・バドゥ(2006年4月2日、他)やアンジー・ストーン(2011年2月10日、他)らに録音参加を求められるとともに、ジョス・ストーンのプロデュースなんかも依頼され、ラティモア、ティミー・トーマスら昔の仲間たちとタッグを組んでマイアミ・ソウルの持ち味を今にもってこようとした。そして、それはザ・ルーツ(2007年1月15日、他)と組んだ11年作『ザ・ムーヴィ』(S−カーヴ)も同様。地方性、ばんざい。彼女はスペイン語も話すそうだが、「マイアミに住んでいたら、しゃべれるようになる」だそう。ぼくはマイアミにはかつてジャマイカの行き帰りに泊まったことしかないけど、また行きてー(←あまりに、単純)。昔はマイアミというと多くの人はTV番組の「マイアミ・ヴァイス」(マイルス・デイヴィスら、ミュージシャンがちょい役でときに出演したりもした)だが、今は「CSIマイアミ」か。そんなに見ているわけではないけど、CSIシリーズのなかでは“マイアミ”が一番ぼくは好き。六本木・ビルボードライブ東京。
その後は、南青山・ブルーノート東京で、かっとび異端ゴスペルのペダル・スティール奏者のグループ(2003年12月10日、2009年7月24日)を見る。血のつながるリズム隊に、白人のギタリスト(一部、鍵盤も弾く)。以前はキーボード専任の人がメンバーだったわけで、その事実は暗にバンドの方向性がロックよりになっていることを示唆している? 確かに、彼らはゴスペルというよりも、肉感的なアーシー・ロックと言ってしまったほうが、すっきりするかもしれない。ちなみに、『ウィ・ウォーク・ディス・ロード』(ワーナー、10年)は名士T・ボーン・バーネットのプロデュース。また、昨年はロビー・ロバートソンやラファエル・サディーク(2009年6月30日)のアルバムに、ロバート・ランドルフはレコーディング参加している。
で、実演だが、前に見たときより、グっと来た。最初のペダル・スティールの一音がデカっ。前みたときは音量がそんなに大きくないという記憶があるのだが、やはり音の良さは重要だな。スティール・ギター演奏は音だけでいえば、より艶やかで込み入ったこともできるスライド・ギター演奏といった感じ。そのペダル・スティール音を中心に、皆でぐつぐつ演奏していく。曲はけっこう臨機応変にやっていそう。ロバート・ランドルフはけっこう朗々と歌えるのだから、もっと歌えばいいのに、とはしっかり感じる。そのほうが、対比的にスティール音は鮮やかに聞き手に伝わりやすいと思う。ギタリストも1曲リード・ヴォーカルを取ったが、それはジョン・レノンの「兵隊になんかなりたくない」。途中、1コードのブギー曲を演奏したさいは女性たちをステージにあげて踊らせたり、最後のジミ・ヘンドリックス曲では客をあげてギターを弾かせたり。前はこういうことをしていなかったが、シェアの精神も神のお告げ?
<今日の、ライトさん>
ライヴを見る前に、楽屋で、ベティ・ライトにインタヴューした。楽屋での取材だとライヴ開演少し前の夕方からというのが普通だが、この日は午後1時半から。で、ビルボードライブの中に入ると、なんとバンド員がそろって音を出している。え? 公演は昨日もやっていて、そのときサウンド・チェックは済んでいるはずで、連続公演をする場合は夕方に出演者は楽屋入りするのが普通のはずだが。だが、面々は観光もせずにちゃんと昼に会場入りして、ここはこうしようとか、煮詰めている。インタヴュー終了後は、彼女もそれに加わるのだろう。昨日見た人の話によると、疑問なくまとまっていたとのことだが、うわープロ? ところで、今回の彼女のショウはこの手のハコの常である1日2回公演ではなく、1回だけ。最初は2回公演として発表されていたものの、1回のショウで契約しているというライト側の主張により1回になってしまったという経緯を持つようだが、その変更も、最良の出し物を見せたいという、彼女のプロ意識ゆえと好意的に判断したくなった。この日のショウは90分ほどだった。
インタヴューはとってもいい感じで行われる。実はものすごいIQの高い人物という話を聞いたこともあるが、あながち与太話ではないかも。話していて、明晰さが伝わる。そんな彼女は太ってはいるが顔はツルツルで、若く見える。ステージには立派なアフロ・ヘアで登場したが、それはウィッグ。でも、普段も爆発したライオン丸のような髪型。カツラをかぶらなくても、十分にインパクトがあると思うが。取材中に彼女が一番うれしそうに反応したのは、新作はザ・ルーツとの連名作だけどマイアミ・ソウルの良さが出ていると指摘したとき。反対にとっても悲しそうだったのは、2005年に殺害されてしまった息子さんのことに言及したときだった。1991年にグロリア・エステファンのサポートでなんかの音楽祭に出るために来日しただけで、今回が2度目の来日。つまり、ちゃんとショウをやるのは今回が初めてという事実に、いささか驚く。だって、なんだかんだ来日公演経験を持つ担い手は多いわけで。
さっくばらんに、どこか気高く。やはり、米国R&B史を飾るべき人であるとも痛感。彼女の場合は、マイアミに居住し続けた結果、ミレニアムになると、その旨味を求めるエリカ・バドゥ(2006年4月2日、他)やアンジー・ストーン(2011年2月10日、他)らに録音参加を求められるとともに、ジョス・ストーンのプロデュースなんかも依頼され、ラティモア、ティミー・トーマスら昔の仲間たちとタッグを組んでマイアミ・ソウルの持ち味を今にもってこようとした。そして、それはザ・ルーツ(2007年1月15日、他)と組んだ11年作『ザ・ムーヴィ』(S−カーヴ)も同様。地方性、ばんざい。彼女はスペイン語も話すそうだが、「マイアミに住んでいたら、しゃべれるようになる」だそう。ぼくはマイアミにはかつてジャマイカの行き帰りに泊まったことしかないけど、また行きてー(←あまりに、単純)。昔はマイアミというと多くの人はTV番組の「マイアミ・ヴァイス」(マイルス・デイヴィスら、ミュージシャンがちょい役でときに出演したりもした)だが、今は「CSIマイアミ」か。そんなに見ているわけではないけど、CSIシリーズのなかでは“マイアミ”が一番ぼくは好き。六本木・ビルボードライブ東京。
その後は、南青山・ブルーノート東京で、かっとび異端ゴスペルのペダル・スティール奏者のグループ(2003年12月10日、2009年7月24日)を見る。血のつながるリズム隊に、白人のギタリスト(一部、鍵盤も弾く)。以前はキーボード専任の人がメンバーだったわけで、その事実は暗にバンドの方向性がロックよりになっていることを示唆している? 確かに、彼らはゴスペルというよりも、肉感的なアーシー・ロックと言ってしまったほうが、すっきりするかもしれない。ちなみに、『ウィ・ウォーク・ディス・ロード』(ワーナー、10年)は名士T・ボーン・バーネットのプロデュース。また、昨年はロビー・ロバートソンやラファエル・サディーク(2009年6月30日)のアルバムに、ロバート・ランドルフはレコーディング参加している。
で、実演だが、前に見たときより、グっと来た。最初のペダル・スティールの一音がデカっ。前みたときは音量がそんなに大きくないという記憶があるのだが、やはり音の良さは重要だな。スティール・ギター演奏は音だけでいえば、より艶やかで込み入ったこともできるスライド・ギター演奏といった感じ。そのペダル・スティール音を中心に、皆でぐつぐつ演奏していく。曲はけっこう臨機応変にやっていそう。ロバート・ランドルフはけっこう朗々と歌えるのだから、もっと歌えばいいのに、とはしっかり感じる。そのほうが、対比的にスティール音は鮮やかに聞き手に伝わりやすいと思う。ギタリストも1曲リード・ヴォーカルを取ったが、それはジョン・レノンの「兵隊になんかなりたくない」。途中、1コードのブギー曲を演奏したさいは女性たちをステージにあげて踊らせたり、最後のジミ・ヘンドリックス曲では客をあげてギターを弾かせたり。前はこういうことをしていなかったが、シェアの精神も神のお告げ?
<今日の、ライトさん>
ライヴを見る前に、楽屋で、ベティ・ライトにインタヴューした。楽屋での取材だとライヴ開演少し前の夕方からというのが普通だが、この日は午後1時半から。で、ビルボードライブの中に入ると、なんとバンド員がそろって音を出している。え? 公演は昨日もやっていて、そのときサウンド・チェックは済んでいるはずで、連続公演をする場合は夕方に出演者は楽屋入りするのが普通のはずだが。だが、面々は観光もせずにちゃんと昼に会場入りして、ここはこうしようとか、煮詰めている。インタヴュー終了後は、彼女もそれに加わるのだろう。昨日見た人の話によると、疑問なくまとまっていたとのことだが、うわープロ? ところで、今回の彼女のショウはこの手のハコの常である1日2回公演ではなく、1回だけ。最初は2回公演として発表されていたものの、1回のショウで契約しているというライト側の主張により1回になってしまったという経緯を持つようだが、その変更も、最良の出し物を見せたいという、彼女のプロ意識ゆえと好意的に判断したくなった。この日のショウは90分ほどだった。
インタヴューはとってもいい感じで行われる。実はものすごいIQの高い人物という話を聞いたこともあるが、あながち与太話ではないかも。話していて、明晰さが伝わる。そんな彼女は太ってはいるが顔はツルツルで、若く見える。ステージには立派なアフロ・ヘアで登場したが、それはウィッグ。でも、普段も爆発したライオン丸のような髪型。カツラをかぶらなくても、十分にインパクトがあると思うが。取材中に彼女が一番うれしそうに反応したのは、新作はザ・ルーツとの連名作だけどマイアミ・ソウルの良さが出ていると指摘したとき。反対にとっても悲しそうだったのは、2005年に殺害されてしまった息子さんのことに言及したときだった。1991年にグロリア・エステファンのサポートでなんかの音楽祭に出るために来日しただけで、今回が2度目の来日。つまり、ちゃんとショウをやるのは今回が初めてという事実に、いささか驚く。だって、なんだかんだ来日公演経験を持つ担い手は多いわけで。