ジョーンズは80年代中期に一世を風靡したシンセサイザー使用ポップの英国人担い手で、今もいろいろ思慮を持つことをやろうとしているが、今回は、彼が過去築いた財産だけを提供しようとするもの。六本木・ビルボードライブ東京で、ファースト・ショウはデビュー作『ヒューマンズ・リブ(かくれんぼ)』(1984年)、セカンド・ショウはセカンド作『ドリーム・イントゥ・アクション』(1985年)をやりますという企画のもと開かれた。なんでも昨年、このルパート・ハイン制作の初期作2枚を本国でやる出し物をやって好評、この4月にも同様のネタで英国ツアーをやるようだ。ともあれ、『ヒューマンズ・リブ』は同年のトップ10に入ると思えるほどに気に入って聞いたアルバムで、ぼくはファースト・ショウに行った。

 本人が出てくると、すぐに前のほうの人たちが無条件で立ち上がり、立ち続ける。そういう光景はまれだな。ステージ上には、プリセット音をコントロールする機材担当者と、電気ドラム担当者も。そして、プリセット音に合わせて、キーボードを弾きながらジョーンズは歌う。マイクはヘッドセットされ、キーボードを弾かないでいろいろステージ上を動いて歌ったりも、彼はする。握手なんかもマメにこなし、彼はかつてアイドル的な人気を得ていたことを思い出した。けっこう、有名曲ではお客さんは歌っていたな。

 とっても感激でき、甘酸っぱい思いに浸れるはずだったのだが、ぼくの場合は、思ったほどではなかった。残念ながら曲がアルバム順ではなく、ショウの盛り上がりを鑑みてのものであったのは、その所感に影響を与えているかもしれない。また、現役である自負もあってか、当時まんまのアレンジではなかったのも微妙であったか。
 
 アンコールは、まず新作『オーディナリー・ヒーローズ』の日本盤に入っているという、「ビルディング・アワ・オウン・フューチャー」という曲をキーボードの弾き語りで披露。彼は昨年の地震や津波に対するくやみを表明した後に、この前向きな曲を歌う。座席には、この曲の英語歌詞と日本語訳が印刷されたものが置かれていた。そして。さらに2作目に入っている全米5位曲「シングス・キャン・オンリー・ゲット・ベター」も披露した。

 その後は、青山・ブラッサオンゼで、リオデジャイロに住んでショーロ道を極めんとしているフルート奏者の公演を見る。クラシックをやっていたものの、瀟洒優美なショーロの存在を知り、当初は二足のわらじをはいていたもののショーロ一本で行く事に決め、2004年以降ブラジルに居住しているよう。

 2人の7弦ガット・ギター、バンドリン、カヴァキーニョ、パンデイロ奏者、5人の日本人奏者たちが和気あいあいとサポート。本人は各種フルート演奏だけでなく、一部はキーボードを弾いたりも。ジャズよりも長い歴史を持つ、即興も持つインストゥメンタル表現が演奏されるなか、曲によってはお客さんが男女でダンスを踊ったりもした。それを、演奏者は優しく見守る。なんか、温かい雰囲気が充満しているなと痛感。

<今日の、モンティ・パイソン>
 少し前に、往年のモンティ・パイソンのTV番組を光回線チャンネルで見た。あれれ、なんか、あまり面白くない。70 、80年代はこれを分かってこそ、英国ロックの機微も理解できるなんても思い、たいそう楽しんで見ていた記憶があるのだが。途中で、チャンネルかえちゃった。ぼくの趣味の変化、時代が変わったからこそ? で、試しに昼間に、モンティ・パイソン結成40周年を祝うロイヤル・アルバート・ホールでの09年実況版『ノット・ザ・メシア』を見たが、それは楽しくクククと見れて、ホっ。もうバカバカしい筋を生真面目に、オペラ歌手やフルオーケストラや合唱の人々などステージ上に200人以上もの人を用意して、壮大な大人のやんちゃ音楽をやる。これを仕切る国営放送のBBCもすごい。首謀者のエリック・アイドルは老けていい感じの顔になっていた。また、テリー・ギリアムも出てきて、思わず彼の『未来世紀ブラジル』も見ちゃう。好きな映画です。