ハウラーはフロント・マンがまだ19歳という、ミネソタ州ミネアポリスの若いバンド。なんでもザ・ヴァクシーンズの英国ツアーに前座として同行もし、いま本国以上に英国で注目を集めているよう。本来はキーボード奏者もメンバーにいたが、来日前に抜けてしまったらしい。が、別に不備は感じず、颯爽と前を見た情緒を持つギター・ロックをけれん味なく披露する。そんな彼らは曲の尻尾に甘酸っぱさ〜レトロな雫をたたえている(それゆえ、ギター奏者がセミアコのギターを弾いていても違和感がない)のだが、それも親しみやすさにつながっているか。

 そして、メイン・アクトはロンドンの4人組バンドのザ・ヴァクシーンズ。彼らが登場したとたん、観客が両手をあげてやんやの大喝采。おーちゃんとファンがついているんだな&当人たちも気分よくてしょうがないだろうなー、と思う。こちらのほうがちょい娯楽パンクっぽい部分も持つが、やはり曲に古くさい甘さを抱えているのは同様。ではあるものの、ぼくはずっとハウラーのほうが訴求力があると感じ、共感を持つ。ヴォーカリストは30分も歌わないうちにノドがヘロってしまい、あらら(そうすると、なんかフロント・マンが遠目にはジャック・ブラックに見えてくる)。次の時間が迫り、途中で会場を離れる。恵比寿・リキッドルーム。
 
 そして、六本木・ビルボードライブ東京で、ニューオーリンズのガンボじいさんのショウ。ぼくが前に見たのは2005年9月20 日、今回もバンドにはザ・ロウアー911 という名前が付けられているが、その顔ぶれは前回と重なりはない。ながら、ジョン・フォール(ギター)、デイヴィッド・バラード(ベース)、レイモンド・ウェバー(ドラム)ともにニューオーリンズの人たちで、弦楽器の二人はドクター・ジョンの過去作に参加していますね。また、ウェバーはザ・ダーティ・ダズン・ブラス・バンド(2007年5月15日、他)のメンバーだった。

 この4月にノンサッチ移籍作(プロデュースはノンサッチ所属のザ・ブラック・キーズのダン・オーバック)を出す彼だが、それとは関係なしに、これまで積み上げてきたものを和気あいあい無理なく出したと言う感じか。オープナーは十八番NOLA(ルイジアナ州ニューオーリンズの略。米国ではそう表記される)トラッド曲「アイコ・アイコ」、バンドの3人はみんなヴォーカルもとる人たちで彼らがコーラスするなか御大が登場し、ピアノに向い、歌いだす。うしし。ピアノと向かいあうようにオルガンもおいてあり、30パーセントはそちらを彼は弾く。ディジー・ガレスピーの「チュニジアの夜」のインストなども披露した。また、ギターを手にして歌う曲も1曲。ピアノはあまり力強くはなく、ピアノだけでセカンド・ラインのうねりを出すということはなかったが、よく意思の疎通のとられた仲間とのパフォーマンスが“ワン&オンリー”(と、最後にドクター・ジョンがステージをさるときにドラマーが連呼)であるのは間違いない。あのダミ声はほぼ衰えなし。「サッチ・ア・ナイト」を歌ってくれたのがうれしかった。

<今日の、マック・レベナック>
 1940年生まれなので、70代に入っているのか。だが、諧謔ももあもあと出すし、彼は元気だ。お腹はパンパンに出ていたが、一頃よりは精悍ではなかったか。というのも、彼が92年夏に来日したときにインタヴューしたことがあったのだが、もう杖ついてよろよろと歩き、息もすぐあがっているような感じで、これはそんなに長くないかもと思わずにはいられなかったことがあったから。若い時分はNOLAの持つミステリアス要素をうまく介しトリック・スターたらんともし、いろんな部分で無茶したこともあったはず。80年代には娘がラップやったりもしてたよな。この晩の様を見て、まだまだ何作も彼のアルバムを聞くことができそうだなと、ぼくは思った。