エドゥ・ロボ

2016年4月4日 音楽
 おお、1943年リオ生まれの、鬼才シンガー・ソングライターの公演を日本で見ることができようとは。六本木・ビルボードライブ東京、セカンド・ショウ。盛況なり、満を持してここに来た人も少なくなかったんだろうな。
 
 彼の曲を歌っている、ブラジル人逸材はたくさん。あ、E.W.&F.も彼の「ザンジバル」(1973年作『ヘッド・トゥ・ザ・スカイ』に収録)を取り上げていた。そんなロボはセルジオ・メンデスとマブダチで、1970年前後には米国に居住し(MCも英語でしていた)、メンデスのプロデュースで1971年に米A&Mからアルバムをリリースしたこともあった。そのころ、彼はメンデスの日本公演に同行、それ以来の来日であるという。

 彼の名前を知らなくても、彼のブラジルの無形のワクワクとつながったフックを持つ曲を耳にしたことがある人は少なくないのではないか。ぼくが彼の曲を最初に耳にしたのは、当時ブルーノート・レコードのA&Rもしていた広角派ジャズ・ピアニストのデューク・ピアソンの『アイ・ドント・ケア・フー・ノウズ・イット』(ブルーノート、1970年)かも。ピアソンはそこでロボの「ウッパ・ネギーニョ」を女性歌手を擁してカヴァーしていて、その不思議な聴感には驚いた。エリス・レジーナのヴァージョンでも良く知られるそれがロボの曲であると知ったのは後のこと、同曲はクラブ・ミュージック基準においてはトップ級にヒップなブラジル曲となっている。

 すでに70歳ごえ、動きはゆっくりしていたが、思ったほどはおじいちゃんではなかった。驚いたのは、ピアノ、アコースティック・ベース(かつてジョイスのサポートでよく来ていたジョージ・エルデル)、ドラム、フルート/サックス(カルロス・マルタ。2000年8月4日)というジャズ仕様と言えなくもない設定のバンドを従えていたこと。面々は1曲、主役ぬきでインストも披露した。また、想定外であったのは1曲いがい(それも音がほとんど聞こえなかった)、彼はギターを持たずに、歌うことだけでショウをまっとうしていたこと。そのヴォーカルはかなり音程があまく、それにも少し驚く。だが、悪びれず、これがおいらとばかり悠々と歌っていく姿を見ると、この名ソングライターでもある彼の積み重ねに思いを巡らしつつ、それでも価値があると思えてきちゃうよなあ。

 途中と最終曲(「ウッパ・ネギーニョ」。この晩披露した数少ないアップ・テンポ曲ですね)では息子のペナ・ロボ(40歳ちょいか)が加わり、一緒にデュオ風で歌う。彼も音程はあまかった。

▶過去の、ジョイス
http://43142.diarynote.jp/200407151608250000/
http://43142.diarynote.jp/200507161357340000/
http://43142.diarynote.jp/200708051737070000/
http://43142.diarynote.jp/200809081534510000/
http://43142.diarynote.jp/200910021138591223/
http://43142.diarynote.jp/201008111723131487/
http://43142.diarynote.jp/201108101628235325/
http://43142.diarynote.jp/201208201259398163/
http://43142.diarynote.jp/201308021400578638/
http://43142.diarynote.jp/201407161154441780/
http://43142.diarynote.jp/201508091203108498/
▶︎過去の、ジョージ・エルデル
http://43142.diarynote.jp/201404251643448230/
http://43142.diarynote.jp/201404260858553785/
▶︎過去の、カルロス・マルタ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm

<今日の、新作>
 アルト・サックスを中心とするマルチ・プレイヤー/シンガーの泉邦宏(2006年7月3日、2011年7月10日、2012年4月21日)から、新しいCD『もがりぶえ』(キタカラレコード K-25)が送られてきた。裏ジャケ写真が素敵、ネ。彼はなんか年にアルバムを2枚は作っていそうで、しかもジャズ、広義のエスノ、シンガー・ソングライターものまで、1枚ごとに内容が散っていて、手元にCDが届くたびに今度はどんな内容なのかなと胸がときめく。で、今回はなんと尺八を吹いたアルバム。で、それを本当にいろんなスタイルで扱っている。“電波”なブツもあって、とても尺八を吹いているとは思えないものもある。なんにせよ、毎度のように、音楽の自由の行使や人間性謳歌の様に、ぼくは胸が一杯になる。配給はメタ・カンパニー→http://metacompany.jp/shop/index.php?main_page=product_info&cPath=1_2_379&products_id=1054
 また、ぼくの大好きなシンガー・ソングライターの、ANEIKY A GO GO!/山浦智生(2009年5月16日、2011年1月15日、2013年3月2日、2013年10月22日)も新作『ロックなたましい』(SPY)を4月1日に出した。ロッキッシュに突っ走るアニーキー→http://www.amazon.co.jp/ロックなたましい-ANIEKY-GO/dp/B01CYO2D7W/ref=sr_1_2?s=music&ie=UTF8&qid=1459716488&sr=1-2  やはりトップ級にアンダーレイテッドな日本人ポップ音楽家だと思う。
▶過去の、泉邦宏
http://43142.diarynote.jp/?day=20060703
http://43142.diarynote.jp/201107111327576732/
http://43142.diarynote.jp/201204221307297965/
▶過去の、アニーキー・ア・ゴーゴー
http://43142.diarynote.jp/200905181017287290/
http://43142.diarynote.jp/201101171218542943/
http://43142.diarynote.jp/201303070813599854/
http://43142.diarynote.jp/201310241000242214/
 日本武道館。開演時間ちょうどに客電がおり、定時ぴったしにメンバーたちがステージに出てくる。武道館は観客の入場が手間取り、開演時間がそれなりに押すことが常なのにこれはとっても珍しい。

 ギターのデレク・トラックス(SGタイプの1本でスライド・バー演奏も通常演奏もすべてをこなす。チューニングはどうなっていたんだろ? 2004年5月20日、2006年11月20日、2014年2月11日)、ヴォーカルとギターのスーザン・テデスキ(2014年2月11日)に加え、3人の管(テナー、トランペット、トロンボーン。トロンボーンは女性)、3人のコーラス(男2、女1。前に出来て,2、3曲リードを取った男性はデレク・トラックス・バンドで歌っていた御仁か。記憶ある顔を見て、そう思った)、ベース、2人のドラム、キーボード/フルート。総勢、12人。

 脈々と積み重ねられて来た米国の様々な黒い市井の音楽の素晴らしさ、大所帯で音楽をすることの素敵があふれまくっていた公演。しかも、面々が楽しみつつ、本当に気持ちをこめてパフォーマンスしていたので、これは高揚しちゃうし、いい気持ちになれる。

 とともに、前回のテデスキ・トラックス・バンド公演のときとけっこう構成はかわっていて精進している、自らの音楽に“水”を与えている、と思わせるところも、すこぶるよかった。たとえば、前回時はほぼソロを取らなかったテデスキが今回はかつてブルース・レイディとしてピンの活動していたときのように、3曲でしっかりソロを取ったこと。特に、二つのブルース曲においてはかなり長目に。彼女は基本眼鏡をしていたが、途中は外していたりもしたな。
 
 コーラス陣3人が前に出来てゴスペル調コーラスを取り、曲に繋げる場面も。また、アフリカ系のテナー・サックス奏者が1曲で大々的にフィーチャーされたが、その自分を出した、定石から離れた創意あるソロに驚き、頷く。わあ、カマシ・ワシントン(2014年5月28日、2015年10月31日)やローガン・リチャードソン(2016年2月3日)より、独創的で変てこじゃあないか? また、2分の1のドラマーのJ.J.ジョンソンの演奏も凄っ。とか、ジャズも知っているいい奏者をちゃんと揃えつつ、“合奏”しているよな。本編終盤は多くのメンバーがさがり、ドラム2人とベースだけをバックにトラックスは延々とソロを取った。

 アンコールの最後の曲は、ザ・ビートルズの「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」のスケールの大きな、ソウルフルなカヴァー。その際の、テデスキの適切にくずしまくっていた歌唱は素晴らしいの一言。また、一発かました渾身のシャウトは鳥肌もの。この人、シンガーとしてどんどん成長している!

 ああ、アメリカの味、合衆国の襞……。てな、2時間15分。

▶過去の、テデスキ・トラックス・バンド
http://43142.diarynote.jp/201402121439433317/
▶過去のデレク・トラックス・バンド
http://43142.diarynote.jp/200405200442460000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20061120
▶︎過去の、カマシ・ワシントン
http://43142.diarynote.jp/?day=20140528
http://43142.diarynote.jp/201511040742444324/
▶過去の、ローガン・リチャードソン
http://43142.diarynote.jp/?day=20160203

<今日の、大人数>
 九段下駅、武道館公演があるときはいつも混んでいるが、今日は花見客(まさに、旬。夜は雨が振り残念。ぼくもライヴ後に入っていた花見をやめた)もいて、すごい混み様。そうか千鳥ヶ淵と靖国神社と、花見名所が重なるのか。昼間、1965年パリのオランピア劇場で録られた2枚組『モータウン・レヴュー・〜ライヴ・イン・パリ』(タムラ、2016年)を聞く。14曲も、追加。ザ・ミラクルズ、マーサ&ザ・ヴァンデラス、スプリームス、スティーヴィー・ワンダー(2005年11月3日、2010年8月8日、2012年3月5日)、そしてアール・ヴァン・ダイクがリーダーとなるバック・バンド(2006年4月11日)のジャジーなインストもある。それを聞いて、至福の時間を過ごせた。けっこう剛毅にやっているなど、新しい発見もあった。今年のリイッシューNo.1候補となりえるな。……同好が集い、ときに助け合い、大人数が集まってこそのショウを浮かび上がらせる。そんなテデスキ・トラック・バンドのありかたも、その延長にあると言えるかもしれない。
▶過去の、スティーヴィー・ワンダー
http://43142.diarynote.jp/200511130015240000/
http://43142.diarynote.jp/201008261618276388/
http://43142.diarynote.jp/201203062006429595/
▶過去の、ファンク・ブラザース
http://43142.diarynote.jp/200604141318090000/

 歌心とサウンド飛躍を併せ持つ米国大人気バンドであるウィルコ(2003年2月9日、2004年9月19日、2010年4月23日、2013年4月13日)のリーダーのジェフ・トゥイーディ、18歳だかの息子スペンサーとのユニットであるトゥイーディの実演。アルバムはアンタイから2014年に出ているので、スペンサー君は二十歳ぐらいになっているのかな? ジェフとベーシストはテンガロン・ハットを被っていた。それをかぶると、イナカの感じが出るよな。恵比寿・リキッドルーム。テーパー(ライヴ自家録音者)が2人、テーパー許容なのか。ウィルコもそうなのかな?

 ギター(生と電気)を弾きながら歌うジェフ、ドラムのスペンサー、エレクトリック・ギター、キーボード/エレクトリック・ギター、エレクトリック・ベースという編成でのパフォーマンス。途中から、女性コーラスも出てきた。

 ジェフがウィルコでの生ギターを持つパートをほのぼの気味に拡大……という説明はありか。頷いたのは、スペンサーのドラミングの味の良さ。リヴォン・ヘルム(cf.ザ・バンド)を少し重くした感じのそれはかなり好み。一曲、ザ・バンドの「アップ・オン・クリーク」みたいなドラム・パターンで始まる曲があってニンマリ。その曲では、サイド・ギタリストがあっち側を求めるようなソロを取る。それ、ガース・ハドソン(2013年8月2日)のオルガン・ソロをギターに置き換えようとした?←それは、ないと思います。

 中盤で、バンドの面々がステージからさり、ジェフ・トゥイーディの生ギター弾き語り(1曲目、ハーモニカ付き)が始まる。けっこう、ウィルコの曲もやったのかな。これが和み傾向ながらきっちりやり、30分はやったか。ある曲の間奏はとってもフォークロア調であった。バンドのトゥイーディとして出来る曲がそんなになかったからかもしれないが。この後、会場を後にしたが、スペンサーの弟やジム・オルーク(2000年3月25日、2001年2月20日、2006年4月18日、2006年10月22日、2007年4月20日、2008年8月24日、2010年4月15日、2010年11月17日、2011年1月8日、2013年4月21日、2013年5月24日、2014年10月11日、2015年4月9日)もステージに登場したそう。シカゴを拠点としたジェフとオルーク、そしてグレン・コッチェ(2010年4月15日、2010年4月23日2013年4月13日)はルース・ファーというグループを組んで、2000年代に2枚のアルバムを出している。

▶過去の、ジェフ・トゥイーディ/ウィルコ
http://www.myagent.ne.jp/%7Enewswave/live-2003-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200410121003440000/
http://43142.diarynote.jp/201004250658039897/
http://43142.diarynote.jp/201304150854159566/
▶過去の、ガース・ハドソン
http://43142.diarynote.jp/201308110826574632/
▶過去の、ジム・オルーク
http://www.myagent.ne.jp/%7Enewswave/live-2000-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200604210538510000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20061022
http://43142.diarynote.jp/?day=20070420
http://43142.diarynote.jp/?day=20080824
http://43142.diarynote.jp/?day=20090531
http://43142.diarynote.jp/201004180836405961/
http://43142.diarynote.jp/201011181757468769/
http://43142.diarynote.jp/201101111201402329/
http://43142.diarynote.jp/201304230829016302/
http://43142.diarynote.jp/201305280923275394/
http://43142.diarynote.jp/201410210814495715/
http://43142.diarynote.jp/201504131107563912/
▶過去の、グレン・コッチェ
http://43142.diarynote.jp/201004180836405961/
http://43142.diarynote.jp/201004250658039897/
http://43142.diarynote.jp/201304150854159566/

 その後は、ここのところ毎年来日しているNYサルサの名ピアニストのラリー・ハーロウのオーケストラ(1999年8月28日、2014年1月25日、2014年1月28日、2015年1月15日)の公演を見る。南青山・ブルーノート東京。ハーロウに加え、2ヴォーカル、2パーカッション、ドラム、電気アップライト・ベース、2トランペット、トロンボーン/ヴァイオリン、バリトン・サックスと陣容にて。プエルトリカン2人だったシンガーの一人がキューバ出身者にかわったが、甲高い声を持つ彼はいい感じではなかったか。

 初っぱなから、場内は“発情ハウス”の体。やっぱ、ラテン(だけではないが)は踊りありきだよなあ。演目は結構過去と重なっているのかもしれないが、うひゃひゃひゃひゃとならないはずがない。シンガーとトランペッターがペアでフロアに降り、トランペッターのソロをシンガーのワイヤレス・マイクで拾うなんてこともしていた。それから、ここのドラマーのキットって、あんなにデカかったっけか? ドラマーはときに猛烈に叩き込んでおりました。

▶過去の、ラリー・ハーロウ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm オーシャン・ブルー・ジャズ・フェスティヴァル
http://43142.diarynote.jp/201401271737069409/
http://43142.diarynote.jp/201401291105093975/
http://43142.diarynote.jp/201501161004061742/

<今日の、憔悴…>
 知人に、なんかため息が出ているねと指摘される。そーなんです、やらなければならない仕事が連なっていて青息吐息。あ"ー。それを分りやすく外に出してしまうとは、我ながら器が小さい(苦笑)。でも、誘われるままに(?)、深夜花見をやっちゃう。明日も10時から長時間根をつめる外でやる作業が入っているのに、いいのかい? 桜はほとんど開花していて(でも、花びらは散っておらず)、いい感じじゃないか! 今、来日中のミュージシャンたちも花見が楽しめますように。
 イスラエル出身、在NYの奔放ロッキッシュ派ギタリストのトリオ公演、丸の内・コットンクラブ(セカンド・ショウ)。4日間もやるなかの初日ながら、盛況。けっこう、人気があるのだな。

 ノイ(2007年7月3日)に関してジョン・スコフィールド(1999年5月11日、2001年1月11日、2002年1月24日、2004年3月11日、2006年3月1日、2007年5月10日、2008年10月8日、2009年9月5日、2012年10月10日、2013年10月21日、2015年5月26日)に薫陶を受けた演奏をするという印象も持っていたが、そう言うとスコに失礼になると思わせたか。今回、けっこうコードの分解演奏をとおしてアシッドな感触を出そうとしていたかもしれぬ。スライド・バー奏法はあまり上手ではなく、やらないほうがいいと思う。

 元イエロージャケッツ(2009年3月23日、2014年1月15日)の賢人エレクトリック・ベーシストであるジミー・ハスリップ(2004年3月24日、2004年12月17日、2010年7月9日、2010年10月1日)に関しては、6弦電気ベース嫌いなこともあり(だったら、ギター弾けばいいぢゃんとロマンのないぼくは思ってしまう)、過去の項で彼の演奏に賛同出来ない主旨の文章を書いたこともあるが、“ペラ男”奏法濃度が低い演奏を彼はした。今日の演奏だと、鍵盤ベースでやっても問題ないと感じさせる音とも指摘できるが。

 メンバー紹介で一番声援が高かったのが、ドラムのデイヴ・ウェックル(2009年6月18日、2010年6月6日、2012年6月13日)。それを見越してか、ドラムは真ん中の前面に位置(ようは、ギター、ドラム。ベースが横一線に並ぶ)。知らない人が見たら、ドラマーがリーダーの公演だと思うだろうな。綺麗なマッチド・グリップのもと、リストの効いた演奏を披露。重さとタイトさや切れを併せ持つ演奏はやはり耳を引く。やはり、相当な実力者。ファンに言わせると20年前の教則ヴィデオとなんも変わっていないそうだが、お金はとれる。彼、スネアの横にフロア・タムを置いたり、小さなシンバルを効果的に使ったりしていて、生の場だといろいろなことが分る。右の奥にはカホンもセッティングに組み込んでいたようだが、それは使わなかったよな。

▶過去の、オズ・ノイ
http://43142.diarynote.jp/200707041026510000/
▶過去の、ジョン・スコフィールド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live2.htm 5.11
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-1.htm 1.11
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-1.htm 1.24
http://43142.diarynote.jp/200403111821250000/
http://43142.diarynote.jp/200603011148430000/
http://43142.diarynote.jp/200705181809270000/
http://43142.diarynote.jp/200810111558046727/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090905
http://43142.diarynote.jp/201210111837516874/
http://43142.diarynote.jp/201310210730403296/
http://43142.diarynote.jp/201505271549266046/
▶過去の、イエロージャケッツ
http://43142.diarynote.jp/200903260425159549/
http://43142.diarynote.jp/201401171005571275/
▶過去の、ジミー・ハスリップ
http://43142.diarynote.jp/?day=20040324
http://43142.diarynote.jp/200403241554160000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100709
http://43142.diarynote.jp/201010030954188035/
▶過去の、デイヴ・ウェックル
http://43142.diarynote.jp/?day=20090618
http://43142.diarynote.jp/201006071818281946/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120613

<今日の、スパム>
 ここのところ、海外から舞い込むZipフォルダー添付スパムがある。朝起きると、同様のものながら、個人名(ファイナンシャルの副社長とか、ビジネスなんとかのディレクターとかいろいろな肩書きあり)で表題が<Bill N-******>というやつが10個近く一気に入っている。別に届いていたら削除すればいいのだが、キブンはよくないよなー。この手のスパムって衰勢があって突然来なくなったりするが、これはいつまで送られてくるだろう?

-M-

2016年3月28日 音楽
 -M-とは、“ポ、ポポポ、ポップ・ミューヂック”と歌われるテクノ・ポップ曲を1979年に大ヒットさせた英国人のロビン・スコットのMではなく、1971年生まれのフランス人ロッカーのマシュー・シェディットのほう。父親は人気ポッパーで叔母さんは詩人/作家をするなど、恵まれた環境にあり、見事にフランスの音楽界で人気者になっている。聞けば、日本での知名度の低さは承知のうえで、自ら私費を投じ、公演を打ってしまったんだそう。代官山・ユニット。

 告知が行き渡らずチケット(前売り8800円というのはちょい高いな)の売れ行きは良くないと聞いていたが、あけてみればフル・ハウスなり。というのはともかく、その9割は誇張抜きでフランス人だったのではないか。なるほど、フランスでは大スターだというのは、あっさり実感。で、ショウが始まると、それはより痛感させられてしまう。

 最初は、エフェクトのかかるアコースティック・ギターを持っての弾きがたり、すでに3曲目で女性客をあげてコーラスをつけさせるなど、アタマのほうからいろんな趣向を出して客に働きかけ、臨機応変に(アナログな感覚で)パフォーマンスを続ける。

 終始フロア側からは声がかかり、曲が始まると嬌声が起こり、ずうっとシンガロング状態となり、場が生理的に膨張する。ナンカ凄イトコニ来チャッタゾ……。曲間にブレイクが入り無音になったときには、サッカー場のようなチャントが始まる。わあ、これはやっぱり日本での公演の感じじゃない。

 4曲目からはギタリストと黒人ドラマーが加わってバンドでコトはすすめられるのだが、とにかく見せ方は多彩。サイドの2人を大々的にフィーチャーするときもあるし、自らジミ・ヘンドリックス演奏をぶち噛ますときもあり。また、和太鼓3人や不思議なパフォーマーが入るときもあり、最後はお坊さんがお経や仏教なりもので加わった。電飾を頭につけて客を沸かせもしちゃうし、次から次へと新たなネタを繰り出し、軽妙なフランス語MCで客にはたらきかけ、とにもかくにもライヴは見せる。下世話という形容はちょい違うかもしれないが、本当に屈託なく両手を広げて、-M-はお楽しみ精神に長けたパフォーマンスをこれでもかと遂行。彼の多大な本国人気は、訴求力の大きなライヴ・パフォーマンスが導いた所もあったのだろう。

 音楽性はフレンチ・ポップと英米ロックのあかけあわせ。レゲエとかへの出張りもあり。ヴォーカルはけっこうファルセットを多用していて、それは彼の個性と言えるか。バークレー/ユニヴァーサル発の近作『IL』は初期デイヴィッド・ボウイを思い出させるような、ロック初期衝動的キラキラ感やシアトリカル性を持つ仕上がりとなっていたが、生はもっとおおらかで、遊園地的な愉しみに満ちていた。

<今日の、-M->
 昼間、-M-ことマシューさんにインタヴュー。曲を書くようになり1997年にソロになったが彼、1990年代半ばにギタリストとしてカンバセーションの<フェスティヴァル 春>やレ・リタ・ミツコ公演で来日しているという。もの静かに賢人ふうに受け答えする様と、ステージ上での弾けた姿がなかなか結びつかないなが、ステージにおいては存分にロック・スター像を楽しんでいるようにも思えるな。なんか、そのライヴ総体に後からじわじわきて、ライヴ・ショウのありかたの機微を頭のなかで考えてしまったYO。取材の際、布バッグとTシャツをいただいたが、シャツのバック・プリントは香港、シンガポール、ソウル、上海、東京というツアーの日程。同行女性ジャーナリストに、日本のおすすめのアーティストを3つ教えてとこわれる。そういうのって、なんかかまえちゃうなあ。エイヤっとあげたけど。

 ボブ・ジェイムスの項(http://43142.diarynote.jp/201503060912185943/)で触れたビリー・チャイルズ(2012年3月15日)のローラ・ニーロ・トリビュートのアルバムをフォロウする公演。丸の内・コットンクラブ、セカンド・ショウ。今、花見シーズンにあわせて、ホワイエで日本酒(宇都宮の四季桜という銘柄)とつまみをふるまっている。

 NYらしい機微を出した最たるピアノ弾き語り系シンガー・ソングライターであるローラ・ニーロは、ヴァイブのマイク・マイニエリ(2010年9月5日、2015年2月8日)、フリー・ジャズもいける名コントラバス奏者のリチャード・デイヴィス、ギターのジョン・トロベイ(2004年1月27日、2007年10月9日、2016年2月19日)、ドラムの元スライ&ザ・ファミリー・ストーンのアンディ・ニューマーク、アラン・トゥーサン(2006年5月31日、2006年6月1日、2007年10月21日、2009年5月29日、2011年1月10日、2012年10月15日、2013年10月22日、2015年1月21日)がアルバムをプロデュースしたこともあった女性ブラス・ロック・バンドのアイシスのトランパッターだったエリン・シーリングなどを擁して1976年に米国ツアーを行った。彼女の1977年作『光の季節』(コロムビア)はそれをソースとするライヴ盤ですね。もともとスタジオ作でも同様のスタジオ系奏者を起用していたニーロだったが、そのライヴならではの開放性や浮遊感(彼女のミュージシャン紹介MCの抑揚は独自だよなー)は格別だった。てなわけなので、ビリー・チャイルズのようなジャズ畑の人がローラ・ニーロ表現にのぞんでも不思議はない。

 ピアノを控え目に弾く当人に加え、ギター、アコースティック/エレクトリックの両方を弾くベーシスト(わ、サウンドガーデンのベーシストと同性同名だァ)、ドラマーに加え、ベッカ・スティーヴンス(2015年1月29日)とアフリカ系シンガーのアリシア・オラトゥージャという2人の女性シンガーがそれぞれの曲でフロントに立つ。すべて歌モノ、2人のシンガーが一緒に歌う曲もひとつあった。

 スティーヴンスが歌う「ザ・コンフェション」(最初、ジョニ・ミッチェルの曲かと思った)始まったショウに触れて感じずにはいられなかっったのは、ニーロって広角型のライン取りの難しい曲を書いていたんだなということ。でも、2人の歌手はそれをうれしそうにこなす。とともに、歌詞を書いたシートなぞは一切おかず、空で歌っているのが美しかった。

▶過去の、マイク・マイニエリ
http://43142.diarynote.jp/201009171511588216/
http://43142.diarynote.jp/201502090956393081/
▶過去の、ジョン・トロペイ
http://43142.diarynote.jp/200402051855170000/
http://43142.diarynote.jp/200710131957390000/
http://43142.diarynote.jp/201602220813282241/
▶過去の、アラン・トゥーサン
http://43142.diarynote.jp/200606071933120000/
http://43142.diarynote.jp/200606071936190000/
http://43142.diarynote.jp/200710221206190000/
http://43142.diarynote.jp/200906051614524790/
http://43142.diarynote.jp/201101111202336229/
http://43142.diarynote.jp/201210201217291727/
http://43142.diarynote.jp/201310241000242214/
http://43142.diarynote.jp/201501220923108418/
▶過去の、ビリー・チャイルズ
http://43142.diarynote.jp/201203161146266803/
▶過去の、ベッカ・スティーヴンス
http://43142.diarynote.jp/201501301446383781/

<今日の、追憶>
 ローラ・ニーロ(1947〜1997年)の歌い方に少し沿おうとする2人の歌い方(だから、歌唱が近似していた)に触れ、彼女の1994年に渋谷のオンエア・ウェストであった来日公演を思い出す。ピアノ音色のキーボードを弾きながら3人の女性コーラスとともにパフォーマンス、彼女はかなり太っていた。黒人音楽愛好とボブ・ディランへの共感がシンガー・ソングライターへの道に向かわせたとも言われる彼女、もともとはガールズ・グループとドゥーワップの大ファンで、彼女と女性R&Bコーラス・グループであるラベルとの1970年代前半の密すぎる交流は一部でよく知られる。ドゥーワップで始まるニーロの1971年カヴァー・アルバム『ゴナ・テイク・ミラクル』はギャンブル&ハフの制作で、フィラデルフィアのシグマ・サウンド録音作。同作のアーティスト英字表記は、ローラ・ニーロ・アンド・ラベルとなっていますね。蛇足だが、デイヴィッド・ボウイのトニー・ヴィスコンティ(2015年7月7日)制作の1975年作『ヤング・アメリカンズ』もシグマ録音盤。そこでドラムを叩いているのは、アンディ・ニューマークだった。
▶過去の、トニー・ヴィスコンティ
http://43142.diarynote.jp/201507090944439091/
 目黒・ポーランド大使館で、今年の欧州文化都市に選ばれた同国の古都であるヴロツワフを紹介するプレゼンテーションが行われた。おー、いろんな音楽も含む催しがいろいろと行われるよう。ぼくはヴロツワフのことも、欧州文化都市という欧州各国持ち回りの年間選定のことも知らなかったが、いろいろ興味深かった。毎秋に持たれるインターナショナルなジャズ・フェスティヴァルであるジャズトパド(http://43142.diarynote.jp/201303290751204240/ 参照)もヴロツワフで行われて来たフェスであったのか。今年は、坂田明(2006年8月8日、2008年9月25日、2009年7月19日、010年4月15日、2011年4月1日、2012年10月3日、2013年1月12日、2014年9月7日、2016年1月28日)や八木美知依(2008年8月24日、2008年9月25日)らがそこに出演するという。EU圏で1985年から続いている欧州文化都市は、スペインのバスク地方にあるサン・セバスティアンもヴロツワフとともに今年選ばれているようだ。

 充実したプレゼンテーションのあと、ちょうど来日し(2度目となるという)ツアー中のポーランド人トランペッターのトマシュ・ドンプロフスキが出てくる。サポートはピアノの南博(2001年10月29日、2005年6月9日、2005年9月11日、2006年10月25日、2007年4月12日、2007年10月17日、2010年3月26日、2011年3月2日、2013年2月17日)とドラムの坪井洋、ベースは千葉広樹となっていたが別の奏者が弾いていた。

 現在コペンハーゲンを拠点に活動しているようだが、アブストラクト流儀による詩的ジャズを淡々と、ときにエモーショナルに展開。曲はすべてドンブロフスキの曲をやったようだが、1曲は1960年代マイルズ・クインテット期表現をもっと茫洋とした世界に持っていったような曲だった。そんな志向なんで、1曲は当然長目。それから、モノクローム的色調を持つと演奏を指摘したくなるドンブロフスキはピストン部がスライドするトランペットを吹いていた。カスタム・メイドではなく、既製品であるという。

▶過去の、坂田明
http://43142.diarynote.jp/200608091255180000/
http://43142.diarynote.jp/200809270215092074/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090719
http://43142.diarynote.jp/?day=20100415
http://43142.diarynote.jp/201104041101543361/
http://43142.diarynote.jp/201210060945309832/
http://43142.diarynote.jp/201301161544336447/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201601301017037781/
▶過去の、八木美知依
http://43142.diarynote.jp/200808260821260000/
http://43142.diarynote.jp/200809270215092074/
▶過去の、南博
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/200506120644360000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050911
http://43142.diarynote.jp/?day=20061025
http://43142.diarynote.jp/200704151310110000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20071107
http://43142.diarynote.jp/201003280551094942/
http://43142.diarynote.jp/201103040841482385/
http://43142.diarynote.jp/201302191656063458/

<今日の、サクサク>
 レザー・プリンターのトナーを購入。1週間ほど切れて放っておいた。あー、印刷したいものをどんどんできちゃうのは、なんと快適なことか。ここのところ、なんか仕事の部分ですっきりしない、停滞気味と感じていたのはこのためであったのか……。

 アフリカ系アメリカ人がリーダーとなる実演を二つ見たのだが、ともにええええ、こんなパフォーマンスをするのお、というもの。そんなことがあるから、ライヴは見る機会があるなら乗った方がいいわけだが、ともにバンド員は白人が多いし、こんなに事前に考えられたものと異なるショウが連続して続くなんて、珍しいー。

 ケンドリック・ラマー、ゴーストフェイス・キラー(ジェイソン・モランはかつて、彼とアルバムを作ると言っていたことがある。結局、実現しなかったな)、ビラル(2001年8月18日)、ラファエル・サディーク(2009年6月30日)ら錚々たる人たちと接点を持つクリエイター/プロデューサーのエイドリアン・ヤングのショウは丸の内・コットンクラブで。ヒップホップのほうから制作の世界に入り、現在はアナログ感覚を持つ生理的にレトロな絵巻的サウンド(アルバム・ジャケットは1970年代のブラック・ムーヴィー風。というか、そういうものを音は求めているという触れ込みか)を作り出し、それらはジェイ・Z(2010年8月7日)やコモン(2004年6月11日、2005年9月15日、2015年9月23日)、DJプレミア(2015年1月30日)らがサンプリングしてもいる。てなわけで、現ブラック・ミュージック・シーンのもう一つの側の重要人物ということが可能な御仁だ。

 バリっと派手なスーツでまとめたヤングは何気に格好いい。彼はMCとキーボードとベースを担当し、加えてラテン系のベース/キーボード、2人の白人ギター奏者(一人はけっこうフルートも吹く)、白人ドラム、そして黒人シンガー(少し、キーボードを弾くときも)という布陣なり。キーボードはヴィンテージな物が置かれている。

 そして、プリセットの音は一切つかわず、がっつりバンド音で勝負。インスト部もたっぷり取られ、曲はけっこう組曲風に続けて披露されるのだが。。。。新作『SOMETHING ABOUT APRIL II』(Linear Labs)の乗りに負うとも説明できるのかもしれないが、アルバムと異なりドラムが完全にロックな叩き方をしていることもあってか、仕掛け×仕掛けみたいな感覚をもつバンド音は完全にいなたいプログ(レッシヴ)・ロック。ステージ横で休んでいるときも長いヴォーカル(ファルセットと地声を併用)は歌えるので、プログ・ソウルと説明したくなる人もいるか。ヴォーカルのロレン・オーディンの風情は若いときのアレキサンダー・オニール(2013年2月11日)を思わせる?

 その総体は変テコで、なんじゃコレ。楽曲やバンド・アレンジはまさに添え木のように不整合にくっつけられていて覚えにくいし、ロックを聞いて来た耳にはかなり時代が古い感覚もはらむ。あ、ヒップホップ臭が皆無だったのも意外だった。ながら、現在に堂々と(かなりルハーサルにも時間をかけているはず)、黒いんだか白いのだかも分らない酔狂極まりないなことをやるという行為は多大なツっぱりや独歩性を導く。見ている者から、笑いも引き出すしね。

▶過去の、ビラル
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm サマーソニック1日目
▶過去の、ラファエル・サディーク
http://43142.diarynote.jp/200907131157415716/
▶過去の、ジェイ・Z
http://43142.diarynote.jp/201008261617154352/
▶過去の、コモン
http://43142.diarynote.jp/200406130120280000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050915
http://43142.diarynote.jp/201509241127563839/
▶過去の、DJプレミア
http://43142.diarynote.jp/201501310942048841/
▶過去の、アレキサンダー・オニール
http://43142.diarynote.jp/201302181123344904/

 1958年生まれの歌手であるリサ・フィッシャー(2003年3月13日、同15日)の会場は、南青山・ブルーノート東京。場内がとても混んでいて、驚いた。1980年代上半期からルーサー・ヴァンドロス他のコーラスを担当するようになり、1989年の“スティール・ホイールズ・ツアー”以降のザ・ローリング・ストーンズ(2003年3月15日)のツアーにもこれまで参加している人物。ヴォーカル参加は、近年もボビー・マクフェリン(2004年2月3日、2012年3月2日、2015年3月23日)、ジョン・メイヤー(2007年4月5日)、ビリー・チィルズ(2012年3月15日)作など、いろいろ。彼女が入っていたチャイルズの2014年作はローラ・ニーロにトリビュートした1作で、チャイルズは今週にベッカ・スティーヴンス(2015年1月29日)らを擁して、そのアルバムに負うライヴを行うことになっている。

 フィッシャーのリーダー作はナラダ・マイケル・ウォルデン制作の『So Intense』(Elektra,1991年)一作のみ。←R&Bチャート1位となった同作収録のシングル曲「ホウ・キャン・アイ・イース・ザ・ペイン」はグラミー賞のベスト女性R&Bパフォーマンス賞も獲得。ストーンズ絡みの項目もあったのに、フィッシャーがそれ以降リーダー作を出していないのはけっこう謎。というのはともかく、だから彼女がどんなことをやるのか見当がつかず。というか、わりと王道にある大人R&Bをやるのかと思ったら……。

 各種ギターを扱うボヘミアン調風体を持つフランス人(少しエレクトリック・ピアノも弾く)、電気とアコースティックの両方を弾くベーシスト、マレットやブラシを多用するドラマーという3人のサポート奏者は皆白人。現在、彼女はそのグランド・バトンと名付けられたこのバンドとともに長丁場のツアーに出ている。

 そんな3人を擁して、彼女がおおらかに聞き手に送り出すのは、乱暴に言ってしまうなら、<カサンドラ・ウィルソン〜1999年8月27日、1999年9月2日、2001年2月12日、2004年9月7日、2008年8月11日、2010年6月13日、2011年5月5日、2013年5月31日、2015年3月19日〜的世界>。けっこう、びっくり。いやあ、ぼくはエフェクターを沢山並べたギタリストのJ.C.メイラードの背後にブランドン・ロス(2004年9月7日、2005年6月8日、2005年6月9日、2006年9月2日、2011年5月5日、2011年12月8日、2011年12月14日)なるものを見てしまいましたよ(←半分は嘘)。そんな隙間のある生理的にアコースティックなサウンドに、フィッシャーは肩の力が抜けた、スケールの大きな歌を悠々とのせていく。ウィルソン的と思わせるのは、ツェペリンやストーンズの曲も取り上げるのだが、その紐解き方(かなり改変する)がとても超然とし、かつ清新なものであるからだ。

 自然体なんだけど、オルタナティヴ。とっても風通しが良くて、清らかでもある、吟醸的黒さをもつヴォーカル・ミュージックのココロある具現、お見事でした。アルバムを出せば、いいのにな。

 ところで、ぼくは彼女に1990年代上半期にLAでインタヴューしているんだよなあ。入国審査の際、取材に来ましたと言ったり、観光で来ましたと言ったりと気分でバラバラに答えるのだが、そのときは前者の感じで答えたら、係官が興味を持って誰をインタヴューするのとか、◎△□には会ったことあるかとか、いろいろと聞いてきたのでなんとなく覚えている。でも、そのフィッシャーの取材がどこからの依頼で、どこに文章を書いたかなんてことは忘却の彼方。そのときはまだビル・ワイマンがストーンズ脱退前、全然動かないで彼はベースを弾くので、時々後からシールドを引っ張ってちょっかいを出すようにしていて、するとワイマンが何するんだおーと照れた顔でぬぼーと振り返るのがおもしろいのよと、彼女が言っていたのは覚えている。あと、スシのハマチが大好きと言っていたな。

▶過去の、リサ・フィッシャー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm 13日、15日
▶過去の、ザ・ローリング・ストーンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm
▶過去の、ボビー・マクフェリン
http://43142.diarynote.jp/200402051853580000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120302
http://43142.diarynote.jp/201503241654351156/
▶過去の、ジョン・メイヤー
http://43142.diarynote.jp/200704112101130000/
http://43142.diarynote.jp/200806121400260000/
▶過去の、ビリー・チャイルズ
http://43142.diarynote.jp/201203161146266803/
▶過去の、ベッカ・スティヴンス
http://43142.diarynote.jp/201501301446383781/
▶過去の、カサンドラ・ウィルソン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm 
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/september1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200409070203440000/
http://43142.diarynote.jp/200808121357410000/
http://43142.diarynote.jp/201006181521416566/
http://43142.diarynote.jp/201105101010399933/
http://43142.diarynote.jp/201306060609052151/
http://43142.diarynote.jp/201503211741478728/
▶過去の、ブランドン・ロス
http://43142.diarynote.jp/?day=20040907
http://43142.diarynote.jp/200506120643190000/
http://43142.diarynote.jp/200506120644360000/
http://43142.diarynote.jp/200609031313220000/
http://43142.diarynote.jp/?month=201105
http://43142.diarynote.jp/201112171635194708/
http://43142.diarynote.jp/201112201158055043/

<今日の、個展>
 知人のデザイナー/DJの川崎義記(SKULLPOP)の、<STOWAWAY>と名付けたグループ展を、二つのライヴの間に見る。半蔵門・ANAGRA。カセットテープをテーマに据えた広角型展示がなされていて、会場には地下室もあり、急な階段を降りた秘密基地のような場での展示もあった。アナログなもの、どこか得体のしれない危ないものに対する、レトロにならないオマージュを飛躍させると説明してもいいかな。やはり、ネタがネタだけに音楽の何かと強くつながった展示ではあったはずだ。最終日の19時ごろ、人はまばらかなあと思っていたら、盛況。で、女性客が多い。きけば、出展者の一人がレピッシュの杉本恭一で、彼のファンが来ているのだとか。期間中には、彼のアコースティック・ライヴも持たれたようだ。

 まだ二十歳ちょい(2014年2月の記事で19歳とあるので、21歳あたり)NYベースのブルース・マンの初来日公演を、丸の内・コットンクラブで見る。ファースト・ショウ。

 セミ・アコースティックのタイプのギターを弾きながら歌う本人に加え、白人中年のオルガン奏者とエレクリック・ベース奏者、そして、まだ若い黒人ドラマーが付く。皆、黒いスーツに蝶ネクタイという格好なり。みんなジャズを通っている人たちか。それなりに統制は取られていて、ダイナミクスやキメの付けかたは決まる。そのドラミングに触れながら、ビッグ・バンドのドラミングと共通性を持つような気がしたナ。

 B.B.キング(2007年2月3日)やマディ・ウォーターズの有名曲もやったが、オリジナルが少なくなかったのかな。スレレートなスロウ・ブルースもあればリフの構造に気を使ったものもあり、ファンキーなブルースもあり。アンコールの曲はブルージーなソウルっぽい曲だった。若手ブルース・マンというとゲイリー・クラーク・ジュニア(2013年3月18日)が近年だと外の世界でブレイクしたが、クラーク・ジュニアよりもよりブルースの王道に忠実な人で、まっすぐ。甲高い歌声やいろんな奏法を繰り出すギターから、まずB.B.キングがアイドルであるのがよく分る。

 彼はシールドレスでギターをならしていて、最初と終盤はギターを弾きながら場内を一周。ときにステージ端に座ってお客さんと対峙してギターを弾いたり、延々とギター背面弾きを披露したりと、いろいろとお客さんに働きかけようとする。ピック弾きのギター演奏はうまい。いろんな学校でいろんな奏法を習うとともに、ソウル・ジャズ系ギタリストのメルヴィン・スパークス(2001年4月4日)に教えを受けてもいるらしい。とうのはともかく、円満なルックスもあり、晴れやかな感じもあり。また、来たら見に行きたいな。

▶過去の、”ブルース・ボーイ”キング
http://43142.diarynote.jp/200702112125550000/
▶過去の、ゲイリー・クラーク・ジュニア
http://43142.diarynote.jp/201303211607259460/
▶過去の、メルヴィン・スパークス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-4.htm カール・デンソン

<今日の、危惧>
 昼間、知人とこんな話を。報道の、フェイスブックからの写真引用。それにたまに触れるが、俺たち悪いことで捕まったら、お戯れの変な写真を使われるんだろうな……。ま、どーでもいいや。

 非日本在住の女性アーティストが4組出るショーケース・ライヴを、代官山・晴れたら空に豆まいてで見る。同所が<晴れ豆インターナションル>というのを設立し、これから海外アーティストを大々的に呼ぶ業務をしますよというお披露目イヴェントなり。うち、同社が招聘に関わったフロー・モリッシーとファナ・モリーナはここで別日に公演を行うとともに、翌日のスタジオコーストで持たれる<Altanative Tokyo vol.3>にも出演する。以下、登場順にとても感嘆に所感を記す。

 キューバを経て今はバルセロナに拠点を置く日本人ピアノ/シンガーのチオ・アリンはソロでパフォーマンス。1曲はハネたインストで、後はピアノ弾き語り。オマール・ソーサ((2001年8月24日、2002年7月22日2004年8月2日、2005年9月24日、2006年10月28日、2008年3月16日、2009年5月12日2010年8月3日、2013年9月17日、2014年3月10日)もファンだという天真爛漫さがすっと出る彼女、普段はドラマーとのデュオでライヴはやるという。

 1994年ロンドン生まれのシンガー・ソングライター、フロー・モリッシーはアコースティック・ギターを手にして弾き語る。清らか、うっすらフォーク。ふと、ヴァシュティ・ バニヤン(2010年3月15日)のことを思い出す。彼女が50年前にアンドリュー・オールダムの助力でデビューしたころはこんなだったのか、な〜んてね。

 じっくりとセッティングに時間をかけたファナ・モリーナ(2002年9月7日、9月15日。2003年7月29日、2011年8月1日、2013年12月3日、2015年2月6日)は、男性2人を伴うワーキング・バンドでがつっとパフォーマンス。うわ、圧倒的に清新、生理的に濃い。相変わらず、すばらしいと言うしかないな。

 ミシェル・ミチナ(2015年4月2日)は現在パリに住むシンガー/鍵盤奏者だが、マイア・バルー(2009年7月26日、2010年2月25日、2010年7月11日、2015年4月2日)のコーラス担当で来たときとはけっこう印象が異なる。ま、あっちは日本民謡をアレンジしたようなこともやっていたしな。パリから連れて来た外国人ベーシストとドラマーを従えた実演はかなりお洒落。ジャジーなコード使いのもと、インターナショナルな都市風景を紡がんとしているかのように思えた。

▶過去の、オマール・ソーサ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm
http://43142.diarynote.jp/200408021925240000/
http://43142.diarynote.jp/200510030021170000/
http://43142.diarynote.jp/200611020835550000/
http://43142.diarynote.jp/200803201207150000/
http://43142.diarynote.jp/200905131200576485/
http://43142.diarynote.jp/201008251432447574/
http://43142.diarynote.jp/201309201840164499/
http://43142.diarynote.jp/201403131302032810/
▶過去の、ヴァシュティ・ バニヤン
http://43142.diarynote.jp/201003191716161050/
▶過去の、ファナ・モリーナ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20110801 コンゴトロニクスvs.ロッカーズ
http://43142.diarynote.jp/201312171240301597/
http://43142.diarynote.jp/201502071011467530/
▶過去の、ミシェル・ミチナ
http://43142.diarynote.jp/201504041111279689/
▶過去の、マイア・バルー
http://43142.diarynote.jp/?day=20090726
http://43142.diarynote.jp/201002280942269300/
http://43142.diarynote.jp/201007130731368326/http://43142.diarynote.jp/201504041111279689/

<今日の、懸念> 
 メインとサブで二つのマック・ブック・プロを用いているのだが、共に起動時のジャーンという音が不安定。動作も滅茶おそいし、これは壊れる前触れか。新しいほうも購入してもうすぐ2年たつし(http://43142.diarynote.jp/201403240917556171/)、そろそろ買い直したほうがいいのだろうか。商道徳を持ちあわせないアップル社のブツはとても柔という認識を持ているので、しょうがねえかという心持ちのぼく。ウィンドウズ機種使う根性もないし。先日、知人のウィンドウズのPCを一瞬使ったら、キーボードのボタン数の多さに萎えました。

 この晩もライヴをハシゴ。まず、南青山・ブルーノート東京で、米国人シンガーのリアノン・ギデンズを見る。彼女が一声を発するやいなや場の空気が震え、色が変わる。こりゃ、とんでもない歌い手の公演を見ているのだと一発で了解しちゃう。

 ジョー・ヘンリー(2010年4月2日、2010年4月4日、2012年10月16日)制作の2010年作『GENUINE NEGRO JIG』(Nonesuch)がグラミー賞のベスト・トラディッショナル・アルバムとなったキャロライナ・チョコレート・ドロップスのシンガーで、昨年T・ボーン・バーネットのプロデュースのリーダー作『Tomorrow Is My Turn』(Nonesuch)を出してもいる喉自慢さん。よく通るその声は歌にまつわる正の要素をすべて抱えるとか言いたくなる? 彼女はときにバンジョーを持つ場合も。マイク・スタンドの横には2本もフィドルが置かれていたが、それを手にすることななかった。

 伴奏は、キャロライナ・チョコレート・ドロップスの2人のメンバーを含む6人にて。生ギター/バンジョー/マンドリン、生ギター/バンジョー、エレクトリック・ギター/フィドル、アコースティック・ベース、ドラムという布陣。彼らの演奏もうっとりするほど勘所をつかみ、渋いもので感服。

 その新リーダー作はトラッドや米国ポピュラー・ミュージックの襞となる人たちの曲を趣味良く紐解く内容。ようは、米国ルーツ・ミュージックの豊穣さを今の凛とした姿勢とともに伝えるものだったが、それは実演も同じ。ながら、ライヴの場ならではの輝きをともなっていて高揚しちゃう。とともに、米国の音楽財産のすごさを実演は伝え、気が遠くもなった。今年のベスト10に入るだろう好公演ナリ。

▶過去の、ジョー・ヘンリー
http://43142.diarynote.jp/201004080752097392/
http://43142.diarynote.jp/201004080754018553/
http://43142.diarynote.jp/201210201218283712/

 そして、丸の内・コットンクラブで、昨年の東京ジャズの野外ステージ出演(の映像)を通じて、多大な知名度を獲得した女性ピアニスト(2015年9月5日)をセカンド・ステージから見る。さすが、話題の人、フル・ハウスなり。

 ジャズとジャジーなクラブ・ミュージックの両刀で行っている女性で、エイベックス発の デビュー作は後者のほうに近いが、この晩のライヴではその両方を自由に行ったり来たりする。ゆえにピアノ・トリオ(エレクトリック・ベースの山本連、ドラマーの山内陽一郎。山内の演奏、けっこう好み)、そこにギター(鈴木直人)や牧野雅巳(DJ)が入ったりと、お膳立てはいろいろ。

 彼女はグランド・ピアノ主体(音に少し不快なイコライジングがかけられていた。なぜ?)に、キーボードやショルダー・キーボードも少し弾くし、最後はピアノ・ソロでしめた。それらのソロの長さはたっぷり取られ、かなり饒舌にして、生理的に奔放。それは彼女のイケイケなイメージとも合うし、ときに粒立つ感覚を彼女の指さばきが美点として持つことを伝える。ぼくは一瞬ボビー・エンリケスというリッチー・コール絡みで1970年代に世に出た弾きまくりピアニストのこと(全盛期の彼も電気ベーシストを起用していた)を思い出してしまった。けっこう、若い時分にエンリケスのことが明解で好きでした。

 客に弾いてもらったフレーズを元にカルテットで演奏するんてこともして、その際はかなりゴスペルぽい弾き方をした。MCは超ハイパー。ディスられても、ジャズの敷居を下げて愛好者を増やしたいと思っている彼女、恐いモノ知らずで突っ走ってほしいな。

▶過去の、高木里代子
http://43142.diarynote.jp/201509211331298145/

<今日の、映画>
 英国の実像不明にしてゲリラ性をともなう街頭グラフィティ・アート中心のモダン・アート大家であるバンクシー(1974年、ブリストル生まれという説あり)の行動を引き金とするNYの模様を扱ったドキュメンタリー映画「バンクシー・ダズ・ニューヨーク」(クリス・モーカーベル監督、2014年アメリカ)の試写を渋谷・アップリンクで見る。バンクシーは2013年10月1日から31日まで、ニューヨークの路上に様々な作品を1日1点づつ残すという酔狂なことを敢行。それは自己サイトで作品の簡単な告知のみがなされ、人々がそれを右往左往しながら見つけていく様(彼らによるツイッターやインスタグラム等も映像活用する)や実際のありゃりゃの街頭展示の模様を紹介する。当然、匿名であることを是とする当人は映画には一切出てこないが、バンクシー側がそれなりの準備をかけて一連の展示をやったことはすぐに了解できるし、それはグラフィティ・アートを生んだNYに対する思慕も引き金になっていると思わされる。そして、そにはやはりバンクシーをバンクシーたらしめる反骨の精神がどーんとあるわけで、この31日間の行動的展示は彼のこれまでの流儀を分りやすく括りもしている。で、最終的にはバンクシーのクールな戦略的活動理念に唸ってしまう。それなくしては、彼の原画1点がウン十万ドルという評価は生まれていないはず。そんなツっぱった彼なので、特定の企業や個人とコラボることはほとんどなく、彼が担当したブラー(2003年5月31日)の『シンク・タンク』(ヴァージン、2003年)やその時期のシングルのジャケット・カヴァーは例外のもとなる。
▶過去の、ブラー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-5.htm

nouon、空間現代

2016年3月14日 音楽
 代官山・晴れたら空に豆まいて。まず、京都をベースとする3人組の空間現代がパフォーマンス。ギター/ヴォーカル、エレクトリック・ベース、ドラムという編成の、叩き込み感覚を効果的に用いるポスト・ロック・バンド。なるほど、XTCの1970年代後期、キング・クリムゾンの1970年代中期、1980年ごろのザ・ポップ・グループなどからインスピレーションを受けていると思わせるか。ザ・スリッツやロナルド・シャノン・ジャクソン&ザ・デコーディング・ソサエティを思わせる局面もあったかな。ようは、往年の尖っていた表現を拾い上げ、それを今っぽいひしゃげたキブンやエラーの感覚を介して広げようとしている。視点、あり。線の細い声を張り上げるようなギタリストのヴォーカルはぼくには少ししんどい。ジェイムズ・チャンス(2005年7月16日、2010年5月19日、2016年1月24日)ぐらいのとぼけた力量でいいから素っ頓狂な複音を抑える女性キーボード奏者をいれて、あっからかんと歌わせたら妙な好ポイントが出るかもしれぬと思った。とは、無責任な外野の所感ね。

 その後に、nouon(2015年4月17日、2015年9月13日、2015年10月9日)が演奏する。ヴァイブラフォン、エレクトリック・ピアノ、コントラバス・クラリネット、ドラムという変則編成の日米英多国籍4人組なり。驚いたのは演奏曲の半数が、新曲であったこと。荻窪、名古屋、京都、大阪、横浜と続いた、一応新作『KUU』(メル、2015年)の表題を冠するツアーであったのに……。でも、その目新しさあふれる設定はこのバンドが呼吸して、動いていることを伝える。

 新曲にしろ、既発表の曲にしろ、独自のテイストを持つなあと思わずにはいられず。いろんな音楽様式を俯瞰する曲やそこに内在する響き、間やダイナミクスを持つ流動性の高いアンサンブル、機を見るに敏なソロといった諸要素の重なりは、確かな“含み”を持つアダルトで洗練されたインストゥメンタルに着地。やはり、その押し付けがましくない、でも山ほどのオリジナリティは賞賛に値する。

 そんなnouonのこの晩のライヴは、オノセイゲン(2000年3月12日、2009年1月17日、2011年8月4日、2012年6月7日、2013年1月30日、2014年4月20日、2014年7月28日、2014年9月23日、2014年10月8日、2014年10月11日、2015年9月24日)が録音。そのうち、まずは高音質で配信されるはず。

▶過去の、uouon
http://43142.diarynote.jp/201504181000432127/
http://43142.diarynote.jp/201509231111454665/
http://43142.diarynote.jp/201510141817129055/
▶過去の、オノセイゲン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
http://43142.diarynote.jp/200901181343426080/
http://43142.diarynote.jp/201108101630438805/
http://43142.diarynote.jp/201206110945571082/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130130
http://43142.diarynote.jp/201404251643448230/
http://43142.diarynote.jp/?day=20140728
http://43142.diarynote.jp/201409261635077130/
http://43142.diarynote.jp/201410210814495715/
http://43142.diarynote.jp/201509250943244179/

<今日の、天候>
 終日、けっこうな量の降雨が続き、寒い。三寒四温って言うのお? 真冬の格好で出かけたが、それでも震えまくり。
 ヨーロッパのジャズの担い手のショウを、二つ見る

 丸の内・コットンクラブで見たレシェック・モジジェルは、ポーランドのトップ・ジャズ・マン。アルバムはナイーヴやACTなどからリリースしている。

 ソロによるパフォーマンス。その外見や話し方で、人を喰ったところがある好人物という感じが伝わっていたが……。彼はショパン曲を料理したアルバムを出していて、今回はショパン曲を題材に演奏するという触れ込みであった(数年前に来日して、そういう公演もやっているよう)が、ショパン曲はそんなにやらなかったじゃん。ショパンが前に出されるのは彼が同じポーランド人であるからだろうが、実は演奏した多くの曲も他のポーランド人が作った曲であったよう。それらを彼は楽しそうに、いろんな表情を持たせて弾いていく。なんか、当初ぼくが考えていた以上に、ポーランドのワビサビが滲む公演ではなかったか。クラシック教育をちゃんと積んでいる事実を示す一方で、曲によっては弦の上に物を乗せて部分的にミュートして、それを効果的に用いる演奏を彼は聞かせる(→翌日の公演では、ピアノの弦を切ってしまったそう)。へえ。それは、音の響きに対する敏感さが導くものだろう。ストーリー性を持つ、ともそれは指摘できるかな。

 その後の南青山・ブルーノート東京の出演者は、ドイツのビッグ・バンドであるNDRビッグバンド(2004年5月31日)。そこにピーター・アースキン(ドラム。(2012年6月21日、2013年6月26日、2014年12月14日)が加わり、彼が在籍したウェザー・リポートの曲を演奏するという出し物なり。編成は、5サックス、4トロンボーン、4トランペット、キーボード、エレクトリック・ベース(フレットレス)、ドラム、パーカッション。

 聞いていて、あれれ。「ティーン・タウン」のようにかなり解体を試みた曲もあったが、わりとフツー、予定調和と思わせるアンサンブルを取る曲が多かったから。スコアはヴィンス・メンドーサ他、何人かのものを集めたようだ。

 そして、ぼくはそうかと頷いた。ウェザー・リポートのアンサンブルってデューク・エリントン的と指摘されることもあるが、なるほどビッグ・バンド的なアレンジをこむら返りさせている所はあるんだろうな、と。だから、その原典をビッグ・バンド化するとわりと常識的、飛躍の少ない聴感を覚えることになってしまう……。ビッグ・バンド経験からプロ活動をスタートさせたアースキンがドラマーがなかなか固定しなかったウェザー・リポートのメンバーとして大活躍することができたという事実も、それを物語るではないか。いや、よりそういう意識をザヴィヌルが持ったゆえに、彼が重用されたとも考えられるかな。

▶︎過去の、NDRビッグバンド
https://43142.diarynote.jp/200406100011020000/
▶過去の、ピーター・アースキン
http://43142.diarynote.jp/201207031311348277/
http://43142.diarynote.jp/201306271617516710/
http://43142.diarynote.jp/201412281017371613/
▶過去の、デューク・エリントン・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/200504151006160000/
http://43142.diarynote.jp/200911212112151307/
http://43142.diarynote.jp/201011250609539822/
http://43142.diarynote.jp/201210201219525855/
http://43142.diarynote.jp/201411101738361046/

<今日の、指揮者>
 ところで、 NDRビッグバンドと WDRビッグ・バンドを、ぼくは混同していた。ともに、アメリカのアーティストと共演したアルバムを出しているドイツ(それぞれ、ハンブルグとケルンを拠点とする)のビッグ・バンドであるわけだが。今回、NDRビッグバンドを指揮したのは、オランダのメトロポール・オーケストラ(こちらは弦奏者もたくさんいる)の常任指揮を近年しているはずのジュールズ・バックリー。英国人である彼、とっても痩身の、まだ30代の若目の人でした。そのメトロポール・オーケストラはディノ・サルーシの『El Encuento』(ECM,2010年)やスナーキー・パピーのメジャー移籍盤『シルヴィア』(インパルス!、2015年)に共同リーダーとして名前が出されており、バックリーはそこで指揮や編曲をしている。というわけで、個人としてはまず彼の存在を確認したかったか。そしたら、丹精ながら控え目にディレクションを出す人で拍子抜けしちゃった。バックリーはトーリ・エイモス、パトリック・ワトソン(2008年11月12日、2009年8月8日、2010年1月21日)、マイケル・キヌワーカ(2013年4月9日)、UNKLEなどのポップ・アーティストへのストリングス音提供もしている。
▶過去の、パトリック・ワトソン
http://43142.diarynote.jp/200811131201183307/
http://43142.diarynote.jp/200908181435528052/
http://43142.diarynote.jp/201001241245595036/
▶過去の、マイケル・キヌワーカ
http://43142.diarynote.jp/201304101851422199/

追記:後日インタヴューしたモジジェルさんは、哲学的とも言える答えをしてきて、少し驚く。とともに、スラブ人としての自負を多大にお持ちでした。

 最初に、昨年デビューした有望株の一組といえるだろう、キューバン・フレンチの双子ユニットを見る。六本木・ビルボードライブ東京。

 キーボードを弾きながら歌うリサ・カインデ・ディアスとカホーンやバタ・ドラムやパッドでビートを創出しながら歌うナオミ・ディアス。その2人だけによるパフォーマンスであるのが、まずよろしい。2人は多くの英語と、ヨルバ語で歌う。英国XLレコーディング発のデビュー作は<キューバン・ビート、およびそのルーツにある西アフリカのヨルバ族の伝統音楽的歌唱>と<今様情緒/音像>が結びついたものだった。だが、曲によってはサンプラーを用い厚みをもたせるが、実演だと音作りはシンプルになり、”XLレコーディング要素“は後退する。しかしながら、他方では2人の肉体性やルーツの持ち具合が明晰に浮かび上がるわけで、おおっと引き込まれてしまう。まだ20歳という2人(二卵性なのかな?)にはうれしい生の強さ、ルーツが導く輝きがあった。

 インターナショナルな名パーカッショニストとして知られる故ミゲル・アンガ・ディアスとペルー系フランス人歌手をしていたというお母さん(そのは今マネージャーを務めるという。卓の横で踊っていた女性がそうなのかな)の、おそるべき子供たち……。

 その後は南青山・ブルーノート東京で、1967年生まれ(意外に、若いんだなー)の米国人ジャズ・シンガーのカート・エリング(2012年6月21日)を見る。

 サポートはピアノとキーボードのゲイリー・ヴァーセイス(2012年12月17日、2013年12月17日)、少し今っぽい響きも用いるギタリストのジョン・マクリーン、アコースティック・ベースのクラーク・ソマーズ、ドラムのケンドリック・スコット(2009年3月26日、2013年2月2日、2013年8月18日、2013年9月11日、2015年2月4日、2015年11月10日)という面々。昨年秋にここでリーダー公演をやっているスコットが同行するとはびっくり。友達なんだそうだが、さすが持っているモノがちょい違うゾというしなやかさと広がりを持つドラミング(ほぼ、レギュラー・グルップで叩く)を彼は見せた。彼の歌モノでの演奏に触れたいと思ったことも、エリング公演を見に来た理由ナリ。サイド・マンでは唯一のアフリカ系であるスコットだけが、ちゃんとスーツを着用していた。

 声質的にはジャズ歌手としての天分に恵まれているとは思わないが、綺麗にチーフをポケットに入れたスーツ(ノー・ネクタイ)を着こなすエリングはジャズ・シンガーとしての強い矜持を感じさせるパフォーマンスを披露する。スタンダードを歌ってもちゃんとひねりというか自分のスタイルというか、ようは難しいラインを歌っていて、なるほどこれはまっとうなジャズ歌手の行き方を取っていると思わせるのだ。的確なスキャットも随所でかます。それは、“エッジに立つ”ことをしているぢゃんとも思わせ、ジャズ歌手として戦う(これは、少し大げさデス)こともしているという感想もひきだす。小粋な優男系ジャズ・シンガーで行ったほうが〜商業ジャズ歌手であるためには、そこから逃れられるはずもないが〜日々の仕事は安定するはずだとも思うが、あえてそうしていないのは素晴らしい。1996年のブルーノート(・レコード)・デビュー以降、ずっと安定したレコード・ディール(近年はコンコードに所属)を持っているのもむべなるかなとも思う。

 終盤、TOKU(2000年2月25日、2001年9月6日、2004年3月10日、2006年2月16日、2008年8月19日、2011年3月16日、2012年6月19日、2013年9月22日、 2014年2月5日、2015年3月19日、2015年3月28日)がフリューゲル・ホーンで加わった。

▶過去の、カート・エリング
http://43142.diarynote.jp/201207031311348277/
▶過去の、ケンドリック・スコット
http://43142.diarynote.jp/?day=20090326
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201308191407221107/
http://43142.diarynote.jp/201309161510164697/
http://43142.diarynote.jp/201502051100298160/
http://43142.diarynote.jp/201511120022503788/
▶過去の、ゲイリー・ヴァーセイス
http://43142.diarynote.jp/201212190844487864/
http://43142.diarynote.jp/201312181034409673/
▶過去の、TOKU
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-2.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-9.htm ロニー・プラキシコ
http://43142.diarynote.jp/200403101442170000/
http://43142.diarynote.jp/200602171950040000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20080819
http://43142.diarynote.jp/201103171354125352/
http://43142.diarynote.jp/201206210944302024/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130922
http://43142.diarynote.jp/201503211741478728/
http://43142.diarynote.jp/?day=20150328

<今日の、原稿>
 昨日のボン・イヴェールは毎日新聞夕刊、今日のイベイーは日経新聞電子版で書きます。言いたいことは重なっていても、こことの記載とはどう違った書き方をするか。それは、ちょい物書きゴコロがくすぐられる作業なり。やっぱ、新聞原稿はより一般的な、多少かしこまった原稿を書くようにはなるが。ともあれ、両方を比較されることを意識して書くのは間違いない。

 わあ。ジャスティン・ヴァーノンの個人的プロジェクトたるボン・イヴェールって、こんな感じのライヴ・パフォーマンスをするのか。もともとエンジニアリングやプロデューシングもできるマルチ派ミュージシャンなので、なんの不思議もないと納得もできるわけだけど。新木場・スタジオコースト。ソールド・アウトが報じられていたが、なるほど混んでいた。これまで発表したアルバムは2枚で、近作がリリースされてから、すでに4年。うーぬ、日本のロック・マーケットは米国ものに弱いとも言われるなか、この盛況はすごい。

 ステージ美術の設定のされ方を見ても、これは普段デカい会場でやっているのがよく分る。2人のドラム(一人は、キーボードも弾く)や3人の女性コーラス(一人は、曲によっては生ギターも弾く)は中段、および高い位置にいて、その配置は立体的。そして、前のほうにはギターや鍵盤を弾きながら歌うヴァーノン、そしてギターやベースや鍵盤やサックスを扱う男性が2人がいて全8人。でもって、バリ・ライトもばりばり使用する。何気に、派手やんけー。そういえば、ジャスティン・ヴァーノンが8月中旬に地元ウィスコンシン州オウクレアで持つフェスティヴァル“Eaux Claires”の出演者って果てはエリカ・バドゥ(2000年11月19日、2006年4月2日、2015年9月30日)までいろいろ揃えられていてすごいんだよなあ。

 でっかいヘッドフォンをモニター用につけた(声の返しを受けるためイヤフォンをする人はときどき見るが、ヘッドフォンを堂々つける人は初めてかも)バーノンのサウンド/構成員の把握の仕方がすごい。フォーク・ロックを根に持ちつつ拡大しちゃっているサウンド回路は、どんどん構成員をふやしてかっとばしているウィルコ(2003年2月9日、2004年9月19日、2010年4月23日、2013年4月13日)みたいなものかともふと思う。あ、違うか。レディオヘッド(2001年10月4日、2004年4月18日、2008年10月4日)の愛好者とかもボン・イヴェールの方に流れてきているという話もあるが(レディオヘッド好きの働き盛りジャズ・マンが集ったネクスト・コレクティヴがボン・イヴェールの「パース」をカヴァーしていることも、その親和性の証左となるかな)、往年のプログ・ロックのファンが来たとしても、壮大かつ起伏に富んだ音楽性に触れると不思議はないなと思ってしまう。そこには、大昔のジェネシスとかを想起させるものはあった? そういえば、そのリーダーだったピーター・ゲイブリエルもジャスティン・ヴァーノンと2012年作で絡んでいるなー。

 新作がどうして出ないかというと、ヴァーノンがザ・ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマ(2004年9月17日、他)とか、英国の3姉妹フォーク・ユニットのザ・ステイヴズとかのプロデュースをやっているのも一因と思われるが、けっこうシンプル目に作っているザ・ステイヴスの2作目『If I Was』(Atlantic,2015)は相当な傑作。で、今回のアジア・ツアーに参加している女性コーラスの3人が実はザ・ステイヴズの面々。彼女たち、ブルガリアン・ヴォイスみたいな重なり方をするときもあり、個が立っていた。

 アコースティックな感触を持つものから、かなり電気的な手触りを持つものまで自由自在。いろんな行き方をしたいというヴァーノンの意志は生ギター弾き語り曲を披露したり、ハーモナイザーを用いての一人電気歌声パフォーマンスを見せるあたりにも表われる。彼はファルセット多用(でも、地声歌唱も力あり)、アルバム ではファルセット・ヴォーカルを重ねてもいるが、それがある種の幻想感、浮世離れした感じを出しているのは間違いない。ぽわっと、表現総体は浮かび上がっていた。テクノロジーや他の音楽様式を見渡した末の、我が道を行くアメリカン・ロック表現……。そのめくるめく実演に触れるのは、まさに体験だった。

▶過去の、エリカ・バドゥ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200604050124430000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120302
▶過去の、ウィルコ
http://www.myagent.ne.jp/%7Enewswave/live-2003-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200410121003440000/
http://43142.diarynote.jp/201004250658039897/
http://43142.diarynote.jp/201304150854159566/
▶過去の、レディオヘッド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/200404180058130000/
http://43142.diarynote.jp/200810061856366600/
▶過去の、ザ・ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマ
http://43142.diarynote.jp/?day=20040917

<今日の、徒労>
 朝起きてから昼一まで、いろいろなメールの返信なりなんなりで時間をついやす。4月のホテルの予約なんてことも、してしまった。同業諸氏が頭を痛める申告作業は、例年どおり支払い調書と領収書の束を税理士に送付済みで、オッケ〜。しかし、今年は明けてからずっと忙しい。別に単行本仕事を受けているわけでもないのに、けっこう根を詰めて原稿を書いている。すごいゾ、オレ。3月いっぱいはそういう感じになっちゃうかなー。

 まず、渋谷・WWWで、ジャズ・ピアニストのスガダイロー(2009年1月8日、2009年7月3日、2013年2月19日)を見る。<独奏>と名付けられているショウで、ピアノ・ソロによる公演なり。置いてあるピアノは、ヤマハだったのかな?

 45分と40分ぐらいの演奏を休憩を挟んで2つ。そして、短いアンコール曲。いくつかの曲モチーフのもと、それを広げたブロックを繋げてノンストップで演奏する。ぼくは彼があまり黒っぽさを通らないで自己ピアノ表現をまっとうする人と印象をもっていたが、ラグタイム的な指さばきを見せるなど黒っぽいイディオムを出す場合もあると再確認。まあ、ジャズ自体がアフリカン・アメリカンが持つリズムやハーモニーの感覚を芯におくだけに、それはあまりに当然なことではあるのだが。その種をどう自分の中でどう昇華するかが、ジャズ・マンのそれぞれの真価なり。それから、けっこうメロディアスな指さばきもしていた。アヴァン/マージャン牌かき回し度はセカンドのほうが高し。そのセカンドでは。童謡「ふるさと」をモチーフとする箇所もあり。

▶過去の、スガダイロー
http://43142.diarynote.jp/200901091437341082/
http://43142.diarynote.jp/200907131158382767/
http://43142.diarynote.jp/201302201720351212/

 その後は、中南米音楽要素をほんわか巧みに日本語のポッポスに編み上げるコロリダス(2013年2月3日、2014年1月18日)のセカンド作『Coloridas』(トロップ)リリースお祝いライヴにかけつける。南青山・月見ル君想フ。

歌と生ギターのしみずけんた、ウッド・ベースとコーラスの宇都ぽん良太郎、打楽器とコーラスの渡辺英心(英心&The Meditationalies)と宮本仁(元オルケスタ・デ・ラ・ルース)、クラリネットの近藤哲平という、現在は5人組。そこに曲により、最初メンバーだったという達者な鍵盤奏者や女性鍵盤奏者、ギター奏者らが入ったりもする。

 なんでこんなに佇まいがいいのという、もうひとつの地域性や文化を介する、音楽する悦びが鮮やかに舞う、手作り音楽集団。日本人が好奇心旺盛に洋楽文化に対峙した後の、無理のないハッピーな足元への落とし方を見事に成就させていると思う。見ている知人たちともそう言っていたんだが、しみずけんたのヴォーカルは生のほうがずっといい。

▶過去の、コロリダス
http://43142.diarynote.jp/201302041828146553/
http://43142.diarynote.jp/201401200835094139/

<今日の、公演>
 そうか、ジャンルは違っていても、2月最後の日曜日は日本人アクトのショウをハシゴしたのか。ともに、会場は大盛況。前者公演はこの手のものとしては女性比率は少し高めで”ダイ様ギャル”もいるのかと思わされ、後者公演は出演者たちの性格の良さが導くものかシンパの仲間が大挙おしかけたと言う感じで、本当に心温まるホットな場が出来上がっていた。その一員でいられることが、なんかうれしい。って、そう感じさせる公演もそうはない。その2組に共通していたのは、語りがすくなく、ちゃんと音楽で自らのすべてを語ろうとしていたこと。スガはそれこそ一言もしゃべらなかったし、コロリダスはその和み&パーティ感覚の強い音楽性を鑑みるにペラペラMCかましそうなものだが、実は必要最小限のことしか言葉を発しない。それは、基本洋楽マインドでライヴをやっているとも思わせるものですね。

 米国の名ファンク・バンドの公演を二つはしご。南青山・ブルーノート東京→六本木・ビルボードライブ東京。とっても、幸せ……。

 1970年代中期までイースト・コースト・ファンクの雄だった(その後はもっとポップ化して、より広い人気をえる)クール&ザ・ギャング(2014年12月26日)は、リーダーのロバート“クール”ベル(ベース)に加え、ヴォーカル/ギター、ヴォーカル、キーボード/パーカッション(ティンパニー付き)、キーボード、2トランペット(マイケル・レイはまた同行)、サックス、トロンボーン、ギター、ドラム。前回とそんなに変わっていない感じかな。けっこう、皆、うれしそうにコーラスも取る。

 残念ながら、ポップ化してからの曲が中心にショウは進む。が、「70年代に戻ろう」というMCで始まった、「ファンキー・スタッフ」、「ハリウッド・スウィンギン」、「ジャングル・ブギー」(3曲とも、1973年作『ワイルド&ピースフル』に収録)の3連発には悶絶。うぎー。少し前に故あり、彼らの1971年ディライト発の2枚のライヴ盤を聞いたら、インスト主体のもろなジャズ・ファンクをやっていておおおとなりました。

▶過去の、クール&ザ・ギャング/J.T.テイラー
http://43142.diarynote.jp/200611281428510000/ J.T.テイラー
http://43142.diarynote.jp/201403051230433466/ J.T.テイラー
http://43142.diarynote.jp/201412291146465218/
http://43142.diarynote.jp/201508051544452721/  J.T.テイラー

 アース・ウィンド&ファイア(2006年1月19日、2012年5月17 日)の全盛期を支えた左利きギタリスト(2008年3月21日、2011年9月15日、2012年9月12日、2012年12月28日、2014年11月27日)、毎度の全13人編成のショウは大“鉄板”。もう、すごい。聞かせる、興奮させる! 彼らのショウにおける演目は毎度大体同じなのだが、今回は「エヴリバディ・ゲット・アップ」という新曲をやったこと、そして中盤でじっくりマッケイが亡くなったモーリス・ホワイトへの謝辞を述べたこと。脱退時、両者の間にはかなりの軋轢があるとも伝えられたが、マッケイさん、きちっとしていたな。
 
 それから、なんか今回はマッケイのリズム・ギターが良く聞こえた。「マジック・ウィンドウズ」のそれはなんかフェラ・クティー表現のギターぽくてウキウキ。って、クティ表現のギターの刻みはJBから来ているところも大なわけだが。

▶過去の、E.W.&.F.
http://43142.diarynote.jp/200601271855390000/
http://43142.diarynote.jp/201205301252113538/
▶過去の、アル・マッケイ
http://43142.diarynote.jp/200804030045430000/
http://43142.diarynote.jp/201109171048385669/
http://43142.diarynote.jp/201209191235365909/
http://43142.diarynote.jp/201301051329276221/
http://43142.diarynote.jp/201412011305372891/

<昨日と今日の、ギタリスト>
 昨日はマッケイ(オフ日で、夜はクール&ザ・ギャングの公演に顔を出したよう)に、今日はリオーネル・ルエケにインタヴュー。立ち話はしたことがあるが、ちゃんと取材するのはともに初めて。円満というと違うかもしれないが、2人ともいい感じの受け答え。マッケイは大昔、LAの自宅に沼澤尚に連れて行かれたことを覚えていたよう。ルエケは、<ギター・アフリカ>というアプリを作っていて、それ見せてもらったら、凝っている。とくに、実際に演奏する人なら、かなり活用できるはず。

 アンジェリーク・キジョー(2002年8月4〜5日、2004年8月5日、2007年12月12日)と同じベニン出身のギタリストであるNY在住のリオーネル・ルエケ(2002年7月3日、2005年8月21日、2007年7月24日、2012年3月3日、2014年9月7日)の久しぶりのリーダー公演はトリオによるもの。それ、ブルーノートからの2015年新作『Gaia』のレコーディング・メンバーとまったく同じ。エレクトリック・ベースはイタリア/スウェーデンのミックスのマッシモ・ビオルカティ、ドラムはハンガリー出身のフェレンク・ネメス。その3人はバークリー音楽大学時代からの仲間で、3人はかつてギルフェマというトリオ名で活動していたことがあり、その2人はブルーノート移籍後のルエケ作2枚にも参加している。ルエケに言わせれば、それは“ホーム”のような単位なのだという。そんなわけなので、ルエケはビオルカディのリーダー作の『Persona』(HBD/ObliqSound,2008)、メネスのリーダー作『Night Songs』(ObliqSound/Dreamers Collective,2007)にも入っている。丸の内・コットンクラブ。

 新作はなんと歌(詠唱)なしのインストゥメンタルのアルバムだったが、実演ではギターと相乗して、歌もいろいろ入れる。「アフリカの者にとって、楽器を弾くことと歌うことは同義なんだ」という、リチャード・ボナ(2000年12月6日、2002年1月9日、2002年9月19日、2002年12月14日、2004年12月15日、2006年2月16日、2008年10月19日、2010年2月5日、2010年6月6日、2011年1月25日、2012年5月14日、2012年12月15日、2013年12月2日、2015年1月9日、2015年1月11日)のインタヴュー発言を、彼もまた地で行きますね。

 何気に変拍子もあり。エフェクトをかなり通したときもあり。ベニンと西欧的都会環境がメビウスの環でつながったような、ギター・トリオ表現を聞かせる。翌日インタヴューをしたら、笑っちゃうぐらいにベニン〜アフリカ愛をなくさず持っている人で驚いた。キジョーさんともNYでご近所さんの超仲良しで、もともとはベニン時代からの顔見知り。ルエケの父親はキジョーが通う学校のディレクターをしており、彼にギターを教えてくれた兄はキジョーと一緒にバンドをやっていたことがあるそう。彼はピックを用いず指弾きするが、それは2002年からだ。

▶過去の、アンジェリーク・キジョー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm 斑尾ジャズ・フェスティヴァル
http://43142.diarynote.jp/200408051551440000/
http://43142.diarynote.jp/200712161022150000/
▶過去の、ルエケ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm テレンス・ブランチャード
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/ テレンス・ブランチャード
http://43142.diarynote.jp/200708051737070000/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/ ハービー・ハンコック
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/ ハーボー・ハンコック
▶過去の、リチャード・ボナ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-1.htm
http://43142.diarynote.jp/200412212102130000/
http://43142.diarynote.jp/200602171950040000/
http://43142.diarynote.jp/200810211839169096/
http://43142.diarynote.jp/201002072246423695/
http://43142.diarynote.jp/201006071818281946/
http://43142.diarynote.jp/201102081256565179/
http://43142.diarynote.jp/201205221056242128/
http://43142.diarynote.jp/201212171647134119/
http://43142.diarynote.jp/201312171132096072/
http://43142.diarynote.jp/201501131019359012/
http://43142.diarynote.jp/201501131648401181/

<今日の、認知>
 坂道を涼しい顔をして、自転車で登るおまわりさんを見る。お、脚力あるなと思ったら、電動自転車だった。今はそれが標準備品なのかな。

 南青山・ブルーノート東京、セカンド・ショウ。会場の受け付け階に降りると、沼澤尚(17日に、彼はここでリーダー・ライヴをやっている)が「英輔さん、すごいよ。(あ、ファースト見たの?)うん。いいんで、セカンドも見る」と高揚しているのがありありな感じで話かけてくる。「これは、ニューヨークの音!」だそう。こりゃ、期待が高まるよなあ。南青山・ブルーノート東京、セカンド・ショウ。

 ヴェテランのスタジオ系ギタリスト(2004年1月27日、2007年10月9日。そういえば、イヴェント用に選曲していていたんだが、ヒップホップ初期の人気ラッパーであるカーティス・ブロウのマーキュリー発1980年盤の大半の曲で弾いていて、驚いた)のリーダー公演だが、テナー・サックスのルー・マリーニ(2004年1月27日、2009年7月14日)、トロンボーンのラリー・ファレル、バリトン・サックスのロニー・キューバー(2010年8月31日)、トランペットのランディ・ブレッカー(2009年6月18日、2010年6月6日、2012年6月13日。電気エフェクトをかけない“素音”の彼の延々ペット音を初めて聞いたような?)。かように、同行する管楽器奏者が4人もいる。これはギタリストのリーダー公演としては異色だなあ。

 リズム隊は電気4弦ベースのニール・ジェイソンとドラムのスティーヴ・ガッド(2004年1月27日、2010年12月1日、2012年11月26日、2013年9 月3日、2004年1月27日、2010年12月1日、2012年11月26日、2013年9 月3日)、どすこいロック畑のオルガンのラスティ・クラウドと言う面々。トロペイとマリーニとファレルとクラウドは3月下旬にあるスティーヴ・クロッパー(2008年11月24日、2009年7月14日、2009年7月25日、2012年5月11日)がリーダーシップをとるザ・オリジナル・ブラザース・バンド(2009年7月14日)のショウにも参加する。なんにせよ、これは顔ぶれ、編成だけで、少しワクワクしちゃう公演ではあるな。

 全8人(その平均年齢は70歳近くなる?)この大型編成はトロペイの2014年作のそれに則ったもので、演目はそこからの曲が多かったはずだが(マーヴィン・ゲイの「レツ・ゲット・イット・オン」もやった)、きわめてブラス・セクションのアンサンブルやソロは利いていて、その総体はいかにも真正イースト・コースト・フュージョンといった手応えあり。とともに、面々が団結して、気持ちのいい音を追い求めているという風情が良い。音をまとめあげたトロペイさん、なんか男をあげたね。

▶過去の、ジョン・トロペイ
http://43142.diarynote.jp/200402051855170000/
http://43142.diarynote.jp/200710131957390000/
▶過去の、ルー・マリーニ
http://43142.diarynote.jp/200402051855170000/
http://43142.diarynote.jp/200907161729269209/
▶過去の、ロニー・キューバー
http://43142.diarynote.jp/?day=20100831
▶過去の、ランディ・ブレッカー
http://43142.diarynote.jp/200906190812191379/
http://43142.diarynote.jp/201006071818281946/
http://43142.diarynote.jp/201206141343402196/
▶過去の、スティーヴ・ガッド
http://43142.diarynote.jp/200402051855170000/
http://43142.diarynote.jp/201012051903113851/
http://43142.diarynote.jp/201212101904379741/
http://43142.diarynote.jp/201312171510083393/
http://43142.diarynote.jp/201410220711345595/
▶過去の、スティーヴ・クロッパー
http://43142.diarynote.jp/200812110456078867/
http://43142.diarynote.jp/200907161729269209/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090725
http://43142.diarynote.jp/201205131715485366/
▶過去の、ザ・ブルース・ブラザース・バンド
http://43142.diarynote.jp/200907161729269209/

<今日の、電車>
 今日のった東急電鉄の車両は、“東急でんき”と全面ペイントされている。電力自由化に伴い、東急も電力供給に参入するんだよなあ。少し研究しなきゃと思う。値段がどうこうより、生理として今の東電と取り引きしたままなのはキブンが悪い。第一候補は、東京ガスかな?  
 テリ・リン・キャリントン+リズ・ライト(2014年9月16日)の公演ときに、ノーマークだったピアニストのピーター・マーティン(2008年9月22日、2010年3月23日、2014年9月16日)の指さばきに触れ、ついでにソロ・ピアノ公演をやったら見に行くのにみたいなことをここで書いていたら、彼のリーダー公演が組まれてうれC。彼のHPのスケジュールを見たら、11日のダイアン・リーヴスのサンフランシスコ公演を終えて渡日し、16〜18日と丸の内・コットンクラブで公演をやり、すぐに戻って19日サンディエゴでのリーヴス公演にまた合流するようだ。しびれる日程だなー。

 いいリズム隊を伴っての、トリオ公演。ベースのルーベン・ロジャース(2005年5月11日、2008年9月22日、2009年4月21日、2011年11月15日、2013年1月6日、2014年5月15日)とドラムのグレゴリー・ハッチンソン(2008年9月29日、2009年4月21日、2010年9月5日)が付く。

 ニューオーリンズ出身のようで一曲その手のリズムを持つ曲もやったが、その本質はビル・エヴァンスとかを愛好する正統的ジャズ・ピアニストと言えるだろう。感知していた以上に端正すぎるとも思えたが、達者で丹精な指さばきはもっと愛好されていいものと思う。それからへえと思ったのは、地味なイメージがある割には話好きで、社交性ありのMCをやっていたこと也。

▶過去の、ピーター・マーティン
http://43142.diarynote.jp/200809240100515549/
http://43142.diarynote.jp/201003261236189984/
http://43142.diarynote.jp/201111210320292366/
http://43142.diarynote.jp/201409171722239857/
▶過去の、ルーベン・ロジャース
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/200809240100515549/
http://43142.diarynote.jp/200904221307055009/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201405171309186867/
▶グレゴリー・ハッチンソン
http://43142.diarynote.jp/200809240100515549/ 
http://43142.diarynote.jp/200904221307055009/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100905 ジョシュア・レッドマン

 その後は、六本木・ビルボードライブ東京で、R&B咀嚼の好2人組、Skoop On Somebody(2001年12月6日)を久しぶりに見る。ファーストとセカンドはきっちり内容を分けてやっていたよう。とともにハコに合わせ、かつて渋谷公会堂でライヴをシェアしたことがあるザ・アイズレー・ブラザース(2001年12月6日)曲他のメドレーも彼らはやった。

 フロントに立つTAKEはいい風情のもと、地声とファルセットを使い分けつつ情感豊かに歌い、鍵盤のKO-ICHIROは自在にフェンダー・ローズ他を扱い、コーラスも付ける。そのメンバーの2人に加え、磯貝サイモン(ギター、コーラス)、GAKUSHI(キーボード。ベース音も担当)、坂東慧(ドラム)の3人がサポートで付く。とにもかくにも、よく出来た、手触りの良い和ソウル表現が悠々と……。なんか、ワクワク見れた。TAKEのMCも節度を持つ入れ方で、痒いところゼロで大マル。良かった。望外に堪能しました。

▶過去の、Skoop On Somebody
www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm

<今日の、気持ち>
 今から15年強前に、Skoop On Somebodyのことを何度も取材したことがあった。洋楽雑誌の編集をしていたO君が邦楽系雑誌に移ったことがきっかけだったか。彼から頼まれ、上手なソウル咀嚼をしているぢゃんと思い、インタヴューをしたら、面々(当時は3人組だった)が滅茶ナイス・ガイで、ぼくはファンになっちゃったんだよなー。そういえば、そのころなぜか自然発生的に邦楽の仕事が増えて、ちょっとビビったっけ。彼ら、そして平井堅、シアターブルック(2000年7月29日、2003年6月22日、2015年10月3日)、ナンバーガールが、むかし何度も取材した邦楽アーティスト四傑か。で、しばらくぶりに聞いた彼らはとっても良かった。昔よりもグっときて、驚いた。それは、ぼくが大人になり、よりソウル好きになったこと、またスクープの面々も成長していることもあるだろう。なんか、幸せな気持ちになりました。
▶過去の、シアターブルック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm(7月29日)
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm(6月22日)
http://43142.diarynote.jp/201510051403147675/

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