オースティン・シティ・リミッツ(ACL)は今年で3度目となるらしい、
野外音楽フェスティヴァル。オースティンのダウンタウンの川向こうにあるジ
ルカー・パークという巨大公園の一角で、今年は17日〜19日の3日間開かれた
。どばーっと広い細長い楕円形のスペース(丈の短い雑草が一面を覆う。フジ
・ロックのグリーン・ステージ何個ぶんくらいか。ぼくは6個ぶんくらいかと
思ったが、10個ぶんぐらいあるんじゃないのという人もいました)に大小8つ
のステージが設けられていて、そこに130 ものアースティトが出るわけで、規
模は相当にデカい。とはいえ、10分弱で会場最長の部分を横断できるわけで、
距離が近いステージ間では演奏音がカブるものの、相当に移動は楽だ。

 今年は3日間の通しチケット(税抜き80ドル)はソールド・アウトで、3日
間で20万人を軽く越える人出であったという。会場は車の乗り入れが禁止で市
の中心と会場間をシャトル・バスが行き来する(タクシーは近くまで乗り入れ
可能。タクるとホテルからチップ込みで13ドル)。ただ、人が集中する終演後
はすごいバス待ちの列で、歩いて帰ったほうが早い。実際、初日はそうしたの
だが、フジ・ロックのオレンジ・コートからプリンス・ホテルまで歩く距離ぐ
らいでダウンタウンのホテルについちゃいますね。

 出演者はなるほど新旧のルーツ・ロック系が多く(サックスやアコーディオ
ン奏者やペダル・スティール奏者なんかをバンドに擁する比率は、いろんなロ
ック・フェスのなかでもトップクラスに高いのでは)、それはテキサスでの音
楽フェスだなあという気にさせる。もちろん、フランツ・フェルディナンドみ
たいなアクトも出るが。それから、<キャピタル・メトロ>という公営交通が
スポンサーとなるテント・ステージは“ショーケイシング・ゴスペル&ブルー
ズ”という副題つき。ロック・アクトが中心のフェスながら、そこには黒人ア
ーティストがいろいろと出る。一般の野外ステージのほうにも黒人アクトはい
ろいろ出て、黒人音楽ファンにも吉なフェスと言えるだろう。そのぶん、ワー
ルド・ミュージック系やクラブ・ミュージック系の出演者はいない。

 とにかく、歩き易い会場だからちょい見で次々、出演者をチェックしちゃう
。以下、2曲ぐらいしか見ていない人も含め(いろいろ見たかったんだよお。
でも、フェスを見た人のなかでぼくはトップクラスに落ちつきのない奴だった
んだろーな)、以下分かったような気になったアーティストの短い感想をざざ
あと書いていこう(括弧内表記はステージ名)。

●エレクトリック・チャーチ(キャピタル・メトロ、以下CM)
 バプティスト教会系らしい人達で、ゴスペル語彙とクラブ・ミュージック傾
向の生演奏を組み合わせる。途中まではクワイアがついていたが、途中からは
演奏主体に。
●ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマ(SBC)
 おおらかに、堂々と、自然体。客席側に下りた今年のフジ・ロック(グリーン
とオレンジ・コート。後者はベン・ハーパーがゲスト入りした)のときはいか
にじいさんたちが気張っていたかというがよく分かった。
●ヘンリー・バトラー(CM)
 ピアノを弾く盲目のブルーズ・マン、リズム・セクションを率いてのショウ
。かつて、NYで見たときと全然印象が違っていてとまどう。すごく、凛とし
たパフォーマンスで、一部はシンセ経由の声などもブレンドし、彼なりに前を
見たブラック表現をカタチにしており感服した。
●テリ・ヘンドリックス(オースティン・ヴェンチャーズ、以下AV)
 テキサス州サンマルコスをベースとする自作自演派。カントリー・ロック界
のアニ・ディフランコ、てな印象を抱かせるパフォーマンス。かなりにっこり
。レコードを聞くとそこまで弾けてはいなかったが、それなりに才と根性ある
人だと思った。
●ソロモン・バーク(SBC)
 この日のハイライト。もう、演奏、設定、本人の歌、すべてが完璧に決まる
、驚愕のスケールでかいソウル・ショーを展開。ストーリー性も豊か。ぼくが
見たソウル・ショーのなかで一番ではないかと感じたし、オースティンくんだ
りまで来て本当に良かったと思えた。彼のステージ、普段はR&Bに触れてな
い人にもホンモノのR&Bはすごいと無条件に思わすものであったようだ。
●ザ・リジェンダリー・ソウル・スターラーズ(CM)
 王道。来日公演(1999年12月10日)のときと同じ面子かどうかはまったく知
らないが、重厚なパフォーマンスを見せる。それにしても彼らに限らず、ゴス
ペル・グループの人たちはみんな演奏が上手い。
●ライアン・アダムス(SBC)
 ほのかにかっこ良い。オルタナ・カントリーの中心人物という感じの人だが
、実演はとってもジューシィでスウィートな感じもありました。
●トゥーツ&ザ・メイタルズ(シンギュラー)
 レゲエ風味のR&Bショーを展開。「ファンキー・キングストン」をぐい乗
りで一緒にガナり、余は満足じゃ。
●リバース・ブラス・バンド(CM)
 なるほど、ダーティ・ダズン(2004年7月28日。彼らも、3日目に登場した
。日本公演とほぼ同じ)よりも生きがいい。と、思わせられたか。肉声もうま
く用いた。
●ジョー・イーライ(AV)
 テックス・メックス系ヴェテラン、こういう人を見ることが出来ると、オー
スティンのフェスだなと痛感。土臭く、地に足つけて寛いだ演奏を展開。
●ゴメス(ハイネケン)
 けっこう、淡々とショーをこなしていた。でも、米国ルーツ音楽の巧みな応
用を見せる英国の彼らがこういうフェスに出るというのは、なんか意義を感じ
させるか。
●ロス・ロンリー・ボーイズ(シンギュラー)
 米国でバカ売れした、テキサスの3人組(ライヴはサポート二人)。オール
マン、サンタナなどのオールド・ロックの妙味をあっけらかん、ずどんと出し
ていた。子供っぽいという形容もありの、アメリカンな娯楽性もあり。
●シェリル・クロウ(SBC)
 伸び伸び。アンコールには、オースティンが生んだブルース・スター故人、
スティーヴ・レイ・ヴォーンのブルース・ロック曲をやる。なんか、自転車選
手の若い彼氏もステージに出てきたよう。10時ぐらいに終わる。それ以後の、
オールナイトの出し物はない。