長年のシカゴ在住を経て、現在はロサンゼルスに居住するジャズ・ギタリストのリーダー公演を見る。丸の内・コットンクラブ。過去にhttp://43142.diarynote.jp/201705161314529397/ てなことを書いている(下部のほう、参照)ぼくは、ファーストとセカンド・ショウを通して見た。そしたら………。なお、同行者は、アルト・サックスとキーボードのジョシュ・ジョンソン(2017年1月16日)、エレクトリック・ベースや鍵盤ベースのポール・ブライアン(彼のみ、白人)、ドラムのジャマイア・ウィリアムズ(2009年5月18日、2012年3月3日、2013年4月1日、2013年6月4日、2014年8月7日、2015年1月22日)。彼らは『ザ・ニュー・ブリード』のレコーディングの主要となる参加者たちである。

 ところで、以下の発言は、この5月にパーカーにインタヴューしたときのものである。
——『ザ・ニュー・ブリード』はLAに移ったからこその内容と言えますか?
「ああ。でなきゃ、こういう仕上がりにはなっていなかったよね」
——別の次元に入ってしまった作品じゃないですか? あなたはギター以外の楽器もしていますし。
「うん。LAのシーンはどばーっと広くて、シカゴのようなコミュニティはない。別な言い方をするなら、シカゴにいると一人で音楽を作るということはないけど、LAに来て一人で作ることが増えた。サンプラーを使ったりして一人でデモを作り上げたんだ」
——『ニュー・ブリード』で聞くことができる音なんですが、あなたが作ったトラックと生演奏の比率はどのようなものでしょう?
「……それを言うのは難しいな。デモを元にLAで知り合ったミュージシャンたちが生で再現するという方策を取ったわけだけど、一人で作ったデモとミュージシャンたちで演奏するものが、同じに聞こえるものもあった。すべてのコントロールはぼくが持っていて、即興もしているけど、その即興も元々作ったデモの佇まいを壊さないように留意した。サンプル基調の音楽と即興をブレンドさせるさじ加減が難しかった」
——当然、ポスト・プロダクションにも凝ったわけですよね。
「とっても、ね」

 さて、ファースト・セット。そんなわけなので、ぼくはPC音とバンド音の併用で、ライヴはなされると思った。ところが、彼らは生音のみで進んでいくパフォーマンスを展開。というか、『ザ・ニュー・ブリード』の内容とはそんなに重ならないような行き方をパーカーたちは見せた。ジョー・ヘンダーソンやバート・バカラックやジョン・コルトレーンの曲もやったしね。

 それ、“ザ・ニュー・ブリード・バンド”ではなく、LA版“ジェフ・パーカー・カルテット”の実演と書くことができるか。ジャマイア・ウィリアムスのビートはやはり今の瘤を持つし、フレッテッドの4弦を弾き『ザ・ニュー・ブリード』では共同プロデュースやミキシングも担当するポール・ブライアンのフュージョンにも純ジャズにもならない演奏もいい感じだし、曲によってはエフェクトもかけるアルトを吹き、鍵盤もいい効果で抑えるジョシュ・ジョンソンも妙味を持つ。こりゃ、おもしろい奏者を揃えたなと思わせるその総体のもと、パーカーはぼくが見た彼のパフォーマンスのなかでは一番長くソロをとる。真っ当にジャズをやろうとしたアルバムを聞いても分かるけど、やっぱり彼は秀逸なジャズ・ギタリスト。他のジャズ・ギタリストとは差別化できるなという引っかかりのあるフレイズを彼は飄々とくりだし、ぼくは大きく頷いた。それから、著名ジャジー・ブルース・ギタリストのT・ボーン・ウォーカーの特徴的なチョーキングのフレイズ〜一部の人には<とって>と言われる〜を、パーカーはファーストでもセカンドでも繰り出す場面があった。パーカーはウォーカーも通っているのは間違いない。

 といったわけで、なかなかのもう一つの今のジャズを披露。とはいえ、『ザ・ニュー・ブリード』の再現を求めた聞き手は肩透かしを食わされるところもあったか。と思ったら、2部は出て来たパーカーがPCの蓋を開けてプリセットの下敷き音を流して、切れ目なしに2曲〜『ザ・ニュー・ブリード』のりの演奏を披露。そのあとは『ザ・ニュー・ブリード』唯一のカヴァー曲「ヴィジョンズ」(ボビー・ハッチャーソン作)だったか。で、集団意匠濃度の増したこっちの方(PC音を流したのは、冒頭の2曲+1、2曲だったか)がパーカーの演奏はエフェクターをかけ気味で、フレイズのジャズ臭は低くなる。面白いことに各人の音色の幅が広くなったためか、セカンド・ショウの方では1曲しかブライアンは鍵盤ベースを弾かなかった。ほとんど切れ目なしに演奏された第2部はもっとエラーや歪みの感覚を出してもいい(それは、卓扱いでなされるべき効果か)と思わせるところもあったが、まこと『ザ・ニュー・ブリード』を生の場で開いたものだった。ひゃは。

 聞けば、昨日はファーストもセカンド・ショウも、今日のセカンド・ショウで見せたものをやったという。本日、両方見ることができてよかった! それしか、ありません。

▶過去の、ジェフ・パーカー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livejune.htm シカゴ・アンダーグラウンド・デュオ、サム・プレコップ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm ブロークバック、シカゴ・アンダーグラウンド、アイソトープ217
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm トータス
http://43142.diarynote.jp/?day=20040120 ロブ・マズレク、ジェフ・パーカー・トリオ、ブロークバック、シカゴ・アンダーグラウンド・カルテット
http://43142.diarynote.jp/200501170151560000/ トータス
http://43142.diarynote.jp/201111251250189885/ トータス
http://43142.diarynote.jp/201405081408031505/ トータス
http://43142.diarynote.jp/201705140938439184/ スコット・アメンデラ
http://43142.diarynote.jp/201705161314529397/ トータス
▶︎過去の、ジョシュ・ジョンソン
https://43142.diarynote.jp/201701171118107802/
▶過去の、ジャマイア・ウィリアムズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20130401
http://43142.diarynote.jp/200905191118258984/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120303
http://43142.diarynote.jp/201306060730086224
http://43142.diarynote.jp/201408091058201133/
http://43142.diarynote.jp/201501230914317086/

<今日の、所感>
 さすが、お盆。飲み屋も電車も、空き気味だな。