最初は、六本木・ビルボードライブ東京。1989年LA生まれで、ニューヨーク大学のクライヴ・デイヴィス レコード音楽学部を出て、2012年にソニー/RCAからデビューした、気っ風いい系R&B歌手のショウを見る。ギター、キーボード、ベース、ドラムという、伴奏者たちもまた20代か? 皆、<F**K IT ALL>と印刷された黒色のTシャツを着用。譜面はおいていなかったので、一応ワーキング・バンドだろうが、重なりに少し難あり。プログラムぽいビートにフィドル音が反復する「リフィル」のようなコンテンポラリー度が高めの曲ではプリセット音を控え目に使う場合もあった。演奏陣の人数も多くないし、もう少しそれを用いたほうが、ヴァーナーの味は明解にアピールされたかもしれない。

 彼女のデビュー作『パーフェクトリー・インパーフェクト』は自分で結構曲も書いているし、かなりどすこいな手触りを持ち、喉力で空気を震わすという感じもあって、ぼくは大層好きだった。実際のパフォーマンスにおいては、歌声がそれほど嗄れておらず、もっとキュート/可愛らし系の味が入っていて(ミニ目のワンピースを着用)、へえと思う。歌える&歌声がデカそうというのは変わりがないのだが、生の歌唱のほうが女の子っぽさがある。塩辛さが低かったのは残念だが、一方それは健気さも導くわけで、いやな印象はない。

 途中で、自らギターを爪弾いてしっとり歌ったりも。近く新作がリリースされるはずだが、どんな仕上がりになっているのか。あ、それから、エタ・ジェイムスの「アイド・ラザー・ゴー・ブラインド」をカヴァー。彼女のこと、大好きみたい。納得、ですね。

 その後は、1965年NY州生まれで1990年代以降、ブルーノート、ソニー、マルサリス・ミュージック、エマーシー、サニーサイドといったレーベルからリーダー作をいろいろと出すとともに、ブランフォード・マルサリス(2001年10月24日、2010年3月8日、2010年10月21日)のグループでずっとピアノを弾いている、ジョーイ・カルデラッツォ(2001年10月24日、2010年3月8日)の演奏に触れる。丸の内・コットンクラブ、セカンド・ショウ。

 トリオによるショウで、ウッド・ベースのオーランド・レ・フレミング(2012年3月12日、2014年3月4日)と一時チック・コリア(2006年9月3日、2007年10月1日)が重用していたドラムのアダム・クルーズを擁する。そのリズム・セクション、外見がちんちくりんおっさんのカルデラッツォと違って、なかなか格好いい。特に、びしっと背筋を伸ばして、端正なドラミングをするクルーズの叩き姿はなかなかであったな。その顔ぶれは、カルデラッツォの2015年新作『ゴーイング・ホーム』(サニーサイド)と同じだ。
 
 笑っちゃうぐらいに、カルデラッツォはモード系ピアニスト演奏をまっとう。実は今、そっちのほうを平然と(?)行くジャズ・ピニストは昔ほど多くないわけで、ある種の趣味の人はパブロフの犬的反応を示しちゃう? ぼくは達者な指さばきに、事なかれな風情をなんか覚えてしまったりもするわけだが、実力者であるのは間違いない。

 1曲、約15分。本編4曲か5曲。考えてみれば、リズム隊にソロ・パートはあまりふらなかったはずで、カルデラッツォは弾きまくっていたということになるのだな。また、俺サマなカルデラッツォはソロ演奏も好きなようで、曲はソロのパフォーマンスから始まる場合が多く、またピアノ・ソロで通した曲もあり。また、アンコールにも2度応え、そちらもピアノ・ソロ。うち、1曲は大好きな曲とか前置きして、ザ・ビートルズの「ヒア、ゼア・アンド・エヴリフォエア」(だったけ? そのあとも楽しく流れて、忘れてしまった)。

▶過去の、ジョーイ・カルデラッツォ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/201003101340038868/
▶過去の、ブランフォード・マルサリス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/201003101340038868/
http://43142.diarynote.jp/201010221631583852/
▶過去の、オーランド・レ・フレミング
http://43142.diarynote.jp/201403051230433466/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120312
▶過去の、チック・コリア
http://43142.diarynote.jp/?day=20060903
http://43142.diarynote.jp/200710121726160000/

<今日の、びっくり>
 まず、ヴァーナー公演のほう。書き遅れたが、彼女は1980年代後期にアイランドからデビューした男女3人組都会派ソウル・グループのバイ・オール・ミーンズの3分の2〜ジミー・ヴァーナーとマイクリン・ロデリックの娘。バイ・オール・ミーズ解散後、ジミー・ヴァーナーはソング・ライターやトラック作りのほうで活動していて、娘のアルバムでもプロデュースその他を担当していた(管楽器も出来た彼、バークリー音楽大卒っていう話なかったっけ?)。で、アンコールに出てきたとき、エル・ヴァーナーは小柄で太っちょで変な髪型のおじさんを伴う。そして、彼はキーボードを弾きだすわけだが、なんと彼女は「パパさん」と彼を紹介。わーあー、あのジミーかいっ。びっくりするほど太ったというのはともかく、彼が演奏に参加することで、少しバンド音がしまったような。歌えとは言わないが(でも、聞きたかった)、これなら最初からパフォーマンスに加わって欲しかった。ともあれ、いい親子関係を持っているように見えた。次回は無理かもしれないが、父娘共演名義で!
 そして、カルデラッツォ公演のほうは、冒頭でびっくり。なんと、開演時間の3分前、場内が明るいうちに本人がステージにあがり、しゃべりだす。わー、せっかちそう(笑い)。彼、コントローラーをピアノの上に置き、ピアノ音をほんの少しいじっていた。純アコースティック・ピアノ公演でそんなことする人は初めてのような……。