丸の内・コットンクラブで、NYに拠点を置く奏者たちで組まれた多国籍グループを見る。リチャード・ボナ(2011年1月25日、他)からサム・ヤエル(2006年8月24日、他)までいろんな人のアルバムに参加しているフィラデルフィア出身のドラマーをリーダーとし、イスラエル生まれのピアノ奏者であるシャイ・マエストロ(現在、ベーシストのアビシャイ・コーエン-2006年5月17日-のバンドにも参画)、一部でかなり高評価を受けるイスラエル人ギタリストのギラッド・ヘクセルマン(過去、モーション・ブルー・ヨコハマでリーダー公演をしているよう)、英国出身コントラバス奏者のオーランド・ル・フレミングという面々による。

 基本はホーニグのオリジナル曲をやっていたのだろうが、なるほど、これは賢者の今のジャズだと頷く。的確に書き留められないのがもどかしいが、作曲を介した編み込みの集団表現から伸縮自在に即興という淡い光がこぼれ出る……と、いう感じ。曲は基本激しいものではないが〜ながら、上半身や頭を活発に動かしながらホーニグはけっこうアグレッシヴに叩く〜、それでも確かな意図や含みや大志を感じさせるのだから、その行き方は賞賛されるべきものだろう。アコースティック・ジャズの行方を真摯に追おうとする若手(みんな30代半ばぐらいか)の存在を確認するとともに、いまだNYはジャズ・ミュージシャンの中心地であることをおおいに了解した。

 その後は南青山・ブルーノート東京に移動して、米国(1965年ニュージャージー州)生まれながら、英国にわたり活動し、そしてエスタブリッシュされた女性歌手を聞く。ピアノ(一部電気ピアノも)、テナー・サックスとソプラノ・サックス(旦那だそう。ちょい悪オヤジ風で、スタン・ゲッツが好きそう)、ウッド・ベース、ドラムというカルテットがつくが、彼らはみな英国人なのだろうか。そういう男性陣の的をいた穏健派演奏にのって、ケントはまったく無理のない、これまた穏健きわまりないジャズ・ヴォーカル表現を無理なく披露する。彼女の、マイクと口の距離〜歌声の強弱の付け方の留意し具合は相当なもん。それゆえ、声自体はどこか耳に残る粘り気や歯切れの良さももつのだが、癒し系という言い方もできるだろう。和め、いい気分になれるジャズ・ヴォーカルの実演を見たいという人にはまさにぴったりの存在と、そのパフォーマンスに接しつつ思う。

 へえと思ったのは、「3月の雨」とか「イパネマの娘」とか、ブラジル曲をけっこう取り上げ、またボサノヴァ系リズムを採用する比率が高いこと。ガル・コスタ(2006年9月22日)で知られるカエターノ・ヴェローゾ曲「コラソン・ヴァガボンド」もボサノヴァ調で披露。ケントは、カエターノ・ヴェローゾ(2005年5月23日)は一番尊敬できる人みたいな発言もしていた。そういえば、ボサ調の曲をやる際、ケント(2曲)と旦那(1曲)はガット・ギターを弾いたりした。で、アンコール曲は、「ホワット・ア・ワンダフル・ワールド」。うまく、まとめるなあ。……うまくまとめてないなと感じたのは、ケントのお洒落じゃない格好。パンツとシャツで、普段着みたいに見える。伴奏陣はちゃんとスーツぽい格好をしているのだから、主役にももっと気を遣ってほしかった。

<今日の料理>
 「趣味は料理デス」なぞとはどう転んでも言えないワタシではあるが、たまにハタとしたくなることもある。ま、“工作”ですね。ホロ酔い気分ながら、寒い寒いと震えながら帰宅したこの晩は、なぜかまさにそんな気分となり……。むくむく食材加工意欲が湧いてきて、冷蔵庫のなかのチェック。サフランはなぜか賞味期限内のものがあるが、肝心の魚介食材が足りない。どうせなら、豪華に作りたい。飲んでいるので、車で出かけられないので、買い出しには歩いていくしかないけれど。一度湧いた意欲は大事にしようと外に出たら、ちょうど人をおろそうとするタクシーがとまっている。思わず乗り込み、午前2時までやっている最寄りのスーパーではなく、少し離れていてキブン高級な24時間営業のスーパーへGO。ちょちょいと買い物する間、タクシーには待っていてもらう。運転手さん、苦笑。白ワインも買っちゃうゾ。と、年に一回あるかないかの晩はすぎていくのであった。   うまーい。