昨年年末に出たファンカデリック名義の3枚組新譜はものすごい傑作で、2000年代に入ってからの米国黒人音楽の最たる重要アルバムであると、ぼくは思っている。それゆえ、ちょうど2年ぶりの来日となるクリントン一座(2002年7月28日、2009年9月5日、2011年1月22日、2013年4月12日)の来日公演は、基本ノリとしては過去と同じような感じであるだろうと思いつつ、かなり期待するところはあった。他のファンカティアの方々も同様に考えたかどうかは知らぬが、今回は予約の入り方方がいつもより良かったよう。六本木・ビルボードライブ東京、セカンド・ショウ。

 で、変わらなくていいものと同時に新味も感じたわけだが、まずおおおおっとなったのは、この7月に74才になるはずのクリントン翁の元気さ。そして、それが何より新たな感興を導いていた。

 例によって、カラフル&小汚い風体をやめにして、スーツをばしっと身につけたクリントンは、最初から最後までずっと出ずっぱり。昔は引っ込むときもあったのではなかったか。そして、間違いなく彼は以前よりもよく声を出したり歌うようになった。歌の部分については進歩しているところがあるよな。かつてのフォクサー的盛り上げ役という位置から、ステージ中央に立つ主役という立ち位置に、いつの間にか変わりました。終盤の「アトミック・ドッグ」ではフリを伴うダンスを可愛らしく(?)見せたりして、こんなことは前回もしなかったはずだ。とにもかくにも、バカみたいに元気で溌剌。あの新作を抜きにしても、クリントンが本当に今いい状況にあることが、これは分る。

 そんな御大にプラスして、構成員はヴォーカルやラップ担当が7(うち、若目の女性が3人。また、男性の1人は、事前告知に倣えば、大昔にリーダー作を発表したこともあった息子のトレイシー・ルイス・クリントンなはず)、ギター3、キーボード1、サンプラー・パッド1、ベース1、ドラム1、アルト・サックス1(彼は前に出て来て、スキャットをかましまくる場面もあり)、トランペット1。あれ、発表になっていた人数よりも1人多かったかな。なんにせよ、無駄に人数が多いながら、不思議な統制が取られていて、また多くの人たちがちゃんとフィーチャーされる側面もあり、大げさに書けば魔法みたいと思わす部分もあった。とくに今回は、大所帯バンドをやっている人たちは必見ではなかったか。

 それから、この晩なぜかはっきりと感じたのは、クリントンたちのパフォーマンスのあり方は教会の縮図であるということ。ヴォーカル担当者がたくさんいて烏合の衆っぽく振る舞う様がそう思わせるし、何より肉声で観客に働きかけるクリントンの様子がプリーチャーそのものではないか! だからこそ、バンド間や客とのコール&レスポンスは、P-ファンクの根っこにある重要要素であるとも思わせるわけだ。うわあ、これぞ米国ブラック・ミュージックの精華!!!  こりゃ、“一揆モノ”実演の最高峰!!!

▶過去の、ジョージ・クリントン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm 触れていないが、フジ・ロック
http://43142.diarynote.jp/?day=20090905
http://43142.diarynote.jp/201102081256005311/
http://43142.diarynote.jp/201304150853287353/

<今日の、追記>
▶演奏陣は開演4分前にステージに上がり、場内が明るいうちに演奏を始めちゃう。おお、なんとせっかちな。早く終わって遊びに行きたいのかと思えば、1時間半越え。こんなに長いショウを、彼らがここで披露するのも初めてではないか。▶クール&ザ・ギャング(2014年12月26日)の「ハリウッド・スウィング」の著名リフを、曲エンディングで用いたときアリ。▶終盤、女性客だけをステージに上げた。男性が便乗してあがろうとしたら、きっぱり拒否られてて笑った。そして、汗だくのクリントンは彼女たちとハグしまくり。そのスケベじじいいぶりも最高。▶クリントンさん、帰り際にマイク・スタンドを股間から突き出るように持ち、片手でコスりまくる。それは前回もやったが、しょーもねー♡。
▶過去の、クール&ザ・ギャング/J.T.テイラー
http://43142.diarynote.jp/200611281428510000/
http://43142.diarynote.jp/201403051230433466/
http://43142.diarynote.jp/201412291146465218/