ラリー・コリエル、他。トライバル・テック
2013年3月8日 音楽 米国東海岸と西海岸の腕に覚えあり奏者がそれぞれに集ったセッションやグループを、六本木・ビルボードライブ東京と南青山・ブルーノート東京で見る。両方の出し物とも、この晩限り。
まず、六本木のほうの出演者はラリー・コリエル(ギター)、ウォレス・ルーニー(トランペット。2004年11月3日)、リック・マルジッツァ(テナー・サックス)、ジョーイ・デフランセスコ(オルガン。2010年12月1日)、ダリル・ジョーンズ(エレクトリック・ベース。2003年3月13日、15日)、オマー・ハキム(ドラム。2010年9月5日、他)という面々。けっこう、年齢も出自も散る。分るような、分らぬような。コリエルはデフランシスコの新作にはいっていたりもする。この顔ぶれで、彼らは今年3月頭のジャカルタの大音楽フェスのジャワ・ジャズ(2012年3月2、3、5日、参照)に出演していて、その際は“マイルズ・スマイルズ”というタイトルが付けられていた。ま、マイルスぶりっこが大得意であるルーニーがいるかぎり、マイルスの財産を踏む事からは逃れられないわけであり……。MCはルーニーがしていた。
1960年代後期に新時代のロック的なギザギザも持つギタリストとして世に出て即ピンのアーティストとしてエスタブリッシュされたコリエルのことは、今回初めて見る。ノリとしてはマイルスのグループから誘われもおかしくないタイプの人材であったが、個人でブイブイ言わせていたことあり、呼ばれたことはないよな。そして、6人はマイルス曲もやったが、過剰にマイルスぽくはない、ソロを判で押したように回すフュージョン・セッションを展開。ながら、只のソロ回しにあまり陥る事がなかったのは、緩急をつけた(ストーリー性豊かな、という言い方もぼくはしたくなる)リズム・セクションの演奏のおかげと見た。以下、Jリーグの新シーズンも始まったし、奏者ごとにサッカー式採点を。10点満点です。
コリエル:7 想像通りの演奏、傍若無人な感じの聞き味には苦笑、もう少し長くソロを聞きたかった。意外に、サポート時のアクセント音がときにいい感じ。じじいらしく、エフェクターはワウ・ペダルと、ディストーション系の2つしか用いず。ソリッッド・タイプとセミ・アコースティック・タイプのギターを1本づつおいていたが、前者のほうしか用いず。彼はこの春で70歳。
ルーニー:3 フレイズも音色(マイクで音を拾っていたが、PAからはエフェクターをかけた音が出てくる)も嫌い。なんか、ジャズ・マンという座にあぐらをかいているような様もびんびんに感じさせて、ヤーな感じ。女房はイケてるのにねー。
デフランセスコ:5 巨体のせいもあってか、もう演奏が軽く感じる。ルーニーと彼の手癖感たっぷりのソロ音が出てくると、音楽のリアルさからどんどん遠のいていくように、ぼくには感じられた。
マルジッツァ:5 ブルーノート他から10作を超えるリーダー作を出しているテナー・サックス奏者で、ちゃんと吹ける。だけど、なんかこみ上げてくるものが少ない。
ダリル・ジョーンズ:7 1980年代前半に、駄目になってからのマイルズ・デイヴィス・バンドに加入し有名になり、さらには1990年代中ばからはザ・ローリング・ストーンズ(2003年3月15日)に加入している御仁。ながら、ぼくは彼のことに興味を持つ事はあまりなかったが、今回ニュアンス豊かな演奏をする彼を見ておおきくうなずく。
オマー・ハキム:7 かつてのNYスタジオ・シーンの売れっ子も少し大きな仕事が減っていると感じているが、立体的かつタイトな演奏はさすが。見直した(って、偉そうだが)。
もし、コリエル、ジョーンズ、ハキムのトリオでのパフォーマンスだったら、そりゃ高得点になったろう。
その後、見たのは、我が道を行く技巧派ギタリストのスコット・ヘンダーソンがベーシストのゲイリー・ウィリスと1980年代中期から組んでいる、ハード・フュージョン・バンド。休止になっていたのが、近年再スタートした。4分の2であるキーボードのスコット・キンゼイ(2009年11月12日)とドラムのカーク・コヴィントンも1990年代前半に加入しているようで、ようは阿吽の呼吸を持つとも言えるのか。
腕に覚えあり、それを隠そうなぞという謙譲の気持ちは持ち会わせておらずという、ズケズケした、生理的に饒舌なフュージョン演奏がなされる。まあ、ヘンダーソンの技や持ち味ありきだが、好意的な書き方をすれば、ジェフ・ベック(2009年2月6日)からジョン・スコフィールド(2012年10月10日、他)までを自在に行き来、という感じか。その様に触れながら、きっちりロックのほうで勝負すればもっともっと支持を得たろうし、まかり間違ってECM(同社は一体、テリエ・リピタル作を何枚だしているのか?)からリーダー作を出したならもっと通受け評価は高くなったのではないか、ヘンダーソンはアンダーレイテットな人という所感も今回初めて彼を見て得た。
とはいえ、場内は満員で熱気もあり、この手の西海岸辣腕フュージョンの愛好者が少なくないことを目の当たりにした。とにもかくにも受けまくっていて、本人たちもとてもうれしそう。アンコールに応え楽屋に戻り場内に電気がつけられBGMが流れた後、彼らはまた出て来て演奏。こんなに受けて出てこずにいられようかという風情、ごっそり出していたな。なんか、ショウ開始時にステージに出て来たときから、米国西海岸のガサツな駄目おやじ臭がぷんぷん。少しぼくは退いたが、そのサーヴィスはそういう率直さゆえと言えるかもしれない。
彼らはこの後、ジャカルタ他を回るよう。以下、同じく各奏者の興味惹かれ度を数値化。
スコット・ヘンダーソン:8 ぜんぶのフレイズをトレモロ・アームを使って弾く。へーえ。それはメロウさや不安定な感覚を無理なく出す。ワン&オンリーかもしれぬ。彼はすべて1本のギターで通したが、さすがチューニングは狂いやすいのだろう、曲間には必ず調弦していた。
ゲイリー・ウィルス:6 フレットレスの5弦のエレクトリック・ベースを弾いていた。彼はウェイン・ショーターの『ファントム・ナヴィゲイター』に参加していたことあり。早く弾く時は魅力を感じないが、スペースをおおらかに埋めて行くような演奏をするときはいいなと思える。
スコット・キンゼイ 5 ソツなく。過剰に出しゃばらず。
マーク・コヴィントン5 音がバシバシ言い過ぎ。ま、タイトであったが。ブルース曲ではヴォーカルも取り、体格に見合う朗々とした歌い口。
<今日の、彼らは巨人に違いない>
我が道を飄々と行く東海岸のしなやか(ゆえに、変な面も持つ)ポップ・ロック集団、ゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツの新作『Nanobots』に、そんなに変わらないながら悶絶。尽きぬアイデアや豊かなメロデイ・メイカーぶりを示唆するように曲目を多く収録することもある彼らだが、今作は25曲入りだ。ま、30秒以下の曲もいくつかはいっているが。しかし、ずうっと気ままなポッパーぶりを維持しているのもすごい。昔、NYに行ったとき彼らのライヴをザ・ニッティング・ファクトリーで見た事あったような。あと、渋谷・クラブクアトロでも、彼らはやっているよな。楽器をメンバー間で、自在に持ち替えるのが素敵だった。そういえば、知人からリアム・ヘイズ/プラッシュ(2002年6月23日)のロマン・コッポラ監督の2012年作品『A Gimpse Inside the Mind of Charles SwanⅢ』のサントラを教えてもらう。過去曲のリメイク中心ながら、新曲も2曲。彼は近く、ザ・オータム・ディフェンス/ウィルコ(2010年4月23日、他)のパトリック・サンソンのプロデュースで新作を出すという。Aくん、情報ありがとう。そういえば、ザ・オータム・オブ・ディフェンスをかしましく都会的にすると、ゼイ・マイトビー・ジャイアンツになる? あらあら、こじつけ?
まず、六本木のほうの出演者はラリー・コリエル(ギター)、ウォレス・ルーニー(トランペット。2004年11月3日)、リック・マルジッツァ(テナー・サックス)、ジョーイ・デフランセスコ(オルガン。2010年12月1日)、ダリル・ジョーンズ(エレクトリック・ベース。2003年3月13日、15日)、オマー・ハキム(ドラム。2010年9月5日、他)という面々。けっこう、年齢も出自も散る。分るような、分らぬような。コリエルはデフランシスコの新作にはいっていたりもする。この顔ぶれで、彼らは今年3月頭のジャカルタの大音楽フェスのジャワ・ジャズ(2012年3月2、3、5日、参照)に出演していて、その際は“マイルズ・スマイルズ”というタイトルが付けられていた。ま、マイルスぶりっこが大得意であるルーニーがいるかぎり、マイルスの財産を踏む事からは逃れられないわけであり……。MCはルーニーがしていた。
1960年代後期に新時代のロック的なギザギザも持つギタリストとして世に出て即ピンのアーティストとしてエスタブリッシュされたコリエルのことは、今回初めて見る。ノリとしてはマイルスのグループから誘われもおかしくないタイプの人材であったが、個人でブイブイ言わせていたことあり、呼ばれたことはないよな。そして、6人はマイルス曲もやったが、過剰にマイルスぽくはない、ソロを判で押したように回すフュージョン・セッションを展開。ながら、只のソロ回しにあまり陥る事がなかったのは、緩急をつけた(ストーリー性豊かな、という言い方もぼくはしたくなる)リズム・セクションの演奏のおかげと見た。以下、Jリーグの新シーズンも始まったし、奏者ごとにサッカー式採点を。10点満点です。
コリエル:7 想像通りの演奏、傍若無人な感じの聞き味には苦笑、もう少し長くソロを聞きたかった。意外に、サポート時のアクセント音がときにいい感じ。じじいらしく、エフェクターはワウ・ペダルと、ディストーション系の2つしか用いず。ソリッッド・タイプとセミ・アコースティック・タイプのギターを1本づつおいていたが、前者のほうしか用いず。彼はこの春で70歳。
ルーニー:3 フレイズも音色(マイクで音を拾っていたが、PAからはエフェクターをかけた音が出てくる)も嫌い。なんか、ジャズ・マンという座にあぐらをかいているような様もびんびんに感じさせて、ヤーな感じ。女房はイケてるのにねー。
デフランセスコ:5 巨体のせいもあってか、もう演奏が軽く感じる。ルーニーと彼の手癖感たっぷりのソロ音が出てくると、音楽のリアルさからどんどん遠のいていくように、ぼくには感じられた。
マルジッツァ:5 ブルーノート他から10作を超えるリーダー作を出しているテナー・サックス奏者で、ちゃんと吹ける。だけど、なんかこみ上げてくるものが少ない。
ダリル・ジョーンズ:7 1980年代前半に、駄目になってからのマイルズ・デイヴィス・バンドに加入し有名になり、さらには1990年代中ばからはザ・ローリング・ストーンズ(2003年3月15日)に加入している御仁。ながら、ぼくは彼のことに興味を持つ事はあまりなかったが、今回ニュアンス豊かな演奏をする彼を見ておおきくうなずく。
オマー・ハキム:7 かつてのNYスタジオ・シーンの売れっ子も少し大きな仕事が減っていると感じているが、立体的かつタイトな演奏はさすが。見直した(って、偉そうだが)。
もし、コリエル、ジョーンズ、ハキムのトリオでのパフォーマンスだったら、そりゃ高得点になったろう。
その後、見たのは、我が道を行く技巧派ギタリストのスコット・ヘンダーソンがベーシストのゲイリー・ウィリスと1980年代中期から組んでいる、ハード・フュージョン・バンド。休止になっていたのが、近年再スタートした。4分の2であるキーボードのスコット・キンゼイ(2009年11月12日)とドラムのカーク・コヴィントンも1990年代前半に加入しているようで、ようは阿吽の呼吸を持つとも言えるのか。
腕に覚えあり、それを隠そうなぞという謙譲の気持ちは持ち会わせておらずという、ズケズケした、生理的に饒舌なフュージョン演奏がなされる。まあ、ヘンダーソンの技や持ち味ありきだが、好意的な書き方をすれば、ジェフ・ベック(2009年2月6日)からジョン・スコフィールド(2012年10月10日、他)までを自在に行き来、という感じか。その様に触れながら、きっちりロックのほうで勝負すればもっともっと支持を得たろうし、まかり間違ってECM(同社は一体、テリエ・リピタル作を何枚だしているのか?)からリーダー作を出したならもっと通受け評価は高くなったのではないか、ヘンダーソンはアンダーレイテットな人という所感も今回初めて彼を見て得た。
とはいえ、場内は満員で熱気もあり、この手の西海岸辣腕フュージョンの愛好者が少なくないことを目の当たりにした。とにもかくにも受けまくっていて、本人たちもとてもうれしそう。アンコールに応え楽屋に戻り場内に電気がつけられBGMが流れた後、彼らはまた出て来て演奏。こんなに受けて出てこずにいられようかという風情、ごっそり出していたな。なんか、ショウ開始時にステージに出て来たときから、米国西海岸のガサツな駄目おやじ臭がぷんぷん。少しぼくは退いたが、そのサーヴィスはそういう率直さゆえと言えるかもしれない。
彼らはこの後、ジャカルタ他を回るよう。以下、同じく各奏者の興味惹かれ度を数値化。
スコット・ヘンダーソン:8 ぜんぶのフレイズをトレモロ・アームを使って弾く。へーえ。それはメロウさや不安定な感覚を無理なく出す。ワン&オンリーかもしれぬ。彼はすべて1本のギターで通したが、さすがチューニングは狂いやすいのだろう、曲間には必ず調弦していた。
ゲイリー・ウィルス:6 フレットレスの5弦のエレクトリック・ベースを弾いていた。彼はウェイン・ショーターの『ファントム・ナヴィゲイター』に参加していたことあり。早く弾く時は魅力を感じないが、スペースをおおらかに埋めて行くような演奏をするときはいいなと思える。
スコット・キンゼイ 5 ソツなく。過剰に出しゃばらず。
マーク・コヴィントン5 音がバシバシ言い過ぎ。ま、タイトであったが。ブルース曲ではヴォーカルも取り、体格に見合う朗々とした歌い口。
<今日の、彼らは巨人に違いない>
我が道を飄々と行く東海岸のしなやか(ゆえに、変な面も持つ)ポップ・ロック集団、ゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツの新作『Nanobots』に、そんなに変わらないながら悶絶。尽きぬアイデアや豊かなメロデイ・メイカーぶりを示唆するように曲目を多く収録することもある彼らだが、今作は25曲入りだ。ま、30秒以下の曲もいくつかはいっているが。しかし、ずうっと気ままなポッパーぶりを維持しているのもすごい。昔、NYに行ったとき彼らのライヴをザ・ニッティング・ファクトリーで見た事あったような。あと、渋谷・クラブクアトロでも、彼らはやっているよな。楽器をメンバー間で、自在に持ち替えるのが素敵だった。そういえば、知人からリアム・ヘイズ/プラッシュ(2002年6月23日)のロマン・コッポラ監督の2012年作品『A Gimpse Inside the Mind of Charles SwanⅢ』のサントラを教えてもらう。過去曲のリメイク中心ながら、新曲も2曲。彼は近く、ザ・オータム・ディフェンス/ウィルコ(2010年4月23日、他)のパトリック・サンソンのプロデュースで新作を出すという。Aくん、情報ありがとう。そういえば、ザ・オータム・オブ・ディフェンスをかしましく都会的にすると、ゼイ・マイトビー・ジャイアンツになる? あらあら、こじつけ?