新年6日が発売日の石橋(2001年9月22日、2008年1月30日、2010年4月15日)のジム・オルーク(2010年11月17日、他)制作の新作『Carapace』をフォロウする公演、六本木・スーパーデラックス。会場に入るときに当日券を求める人が階段のところで少し列になっていたが、じっさい混んでいた。その新作に録音参加している勝井佑二(2009年7月26日、他)も見に来ていたが、こんなに混んでいるスーパーデラックスは久しぶりと言っていたな。てなわけなんで、後のほうに立っていると、あまり演奏者が確認できない。こういう状況だと、ステージの模様をおさえるモニターを所望したくもなるが。

 露払い役で、まず七尾が出てくる。ガット・ギターを爪弾きながら、自分のメロディや息づかいを通して、彼ならではの感受性をさあっと表出して行く。時に加える残響や効果音もふくめ、完全に自分の世界/回路を持っていて、すごい。ディズニー・ソングの「星に願い」を日本語詩で歌ったり、石橋の曲を歌ってみたり。というのは、この晩の特別メニューだったのかな。洋楽にずっと触れてきた人と思うが、MCはもろに邦楽の人という感じで、じっとり長い。最後に1曲、石橋がピアノで加わる。

 休憩を挟んで、マルチな才を発揮している石橋のパフォーマンス。アップライト・ピアノの、たゆたふ弾き語り。なるほど、豊かな造詣や趣味の良さの裏返しといいたくなる、ちょい普通ではない仕掛けや噛み合いを持つ、流れていく感覚も持つ曲を淡々と開いていく。歌の合間の、ピアノ演奏も長め。インプロヴィゼイショナルだとはそんなに感じないが、起伏と啓発とストーリー性に富んでいるとは間違いなく言えるし、彼女ならではの確かな個性を持つ。これで歌が聞き手に訴求するサムシングをさらに持っていたらと、ぼくは生に触れて思ったりもするが、これだけおおらかなのに才気走った曲を書けて、自在に開けるんだもの。何の文句があろうか。

 途中で、石橋を前に見たときも絡んでいたダンサーのタカダアキコ(2008年1月30日、2010年5月22日)が踊りで協調する曲もあり、当然七尾が加わる曲もあり。日本のシンガー・ソングライター水準は高い、二人の実演に触れてそう感じる事しきりの晩でした。

<今日の空>
 17時少し回って家を出たのだが、ちょうど陽が沈む頃で、オレンジ色と藍色がすうっとつながる空の色がなんとも綺麗。でもって、空気が澄んでいるせいか、三日月もくっきり。芸のない言い方をすれば、ちょい“心が洗われる”思い。いやあ、俳句の一つでも作りたくなりました。って、作った事ないけど。基本12月ぐらいから、ほんと晴天の日が続いているのではないか。昼間は日差しが部屋に気持ちよく入り、暖房なんかいらないもんな。それ、生理的にほんと気分がやすらぐ。7日の夜、新年会の一次会が終わって外に出たときは風があって震えたが、この円満な冬の日ができるだけ続いてほしいっ。