渋谷・アックス。会場入り口にはダフ屋がけっこういる。ソールド・アウトが伝えられていたが、こーいうのは久しぶりのような。ともにソニーと契約してて、この週末にフジ・ロックに出演する、新進大成功ユニット(中日のホワイト・ステージのトリ)とロック実力者がつるんだ所謂スーパー・バンド(初日のグルーン・ステージの順メイン・アクト)がカップリングされた公演ナリ。

 まず、MGMTの二人が三人のサポート・ミュージシャンと約30分のパフォーマンス。態度の軽い、だからこそ妙な今っぽさも持つエレクトロ・ポップ調曲をあっけらかんと開く。ドラマーは下手、あれはわざとひしゃげた感じを出すために雇っているのかな。みんな仲が良さそうで、そういうところは大学サークルのりね。プリセット音をバックに、メンバーの二人だけが歌うという曲もあった。うーぬ、青さがまぶしかったかも。

 30分の休憩をおいて、クイーン・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョシュア・オム(ヴォーカル、ギター)と、元レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズ(ベース、キーボード)、フー・ファイターズ(2002年9月12日)のデイヴ・クロール(ドラム)の3人からなる集団が、サポート・ギタリストを加えて、デカい音でパフォーマンス。終始、もの凄い歓声。なるほど、音楽的にはまるで合わない組み合わせだが、来ている人の多くはゼム・クルックド・ヴァルチャーズ目当てなのだなと判る。先のドラマーとの落差もあり、クロールのドラミングはガツっとしていて鼓舞される。やはり、ギターを持って歌うより、彼はドラムを派手に叩くほうがいい。フロントに立つ長身のオムは余りロッカー然としておらずは飄々、ジョーンズは一人だけ年齢が上なはずだが、遠目にはあんまし老けて見えなかった。そんな彼らはCDよりもだいぶ長目に、より嵐を持つ感じで、怒濤で演奏を進める。枠組みは決まっているものの、その型の中で精一杯発展の扉を開けようとしていたというか、“ロックの激流”の中に楽曲を放り投げていた、というか。なるほど、老練で熟達したロッカーの流儀を存分にアピールしていたと言えるかも。そのため、一部は結構難解な聞き味にもなっていたかな。物わかりのいいものが善になりがちな現況において、それはおおいに賞賛されるべきものであるだろう。

 途中まで見て、丸の内・コットンクラブに移動し、ジョーンズと同年代だろうベン・シドラン(2009年5月25日、他)の実演を見る。彼の09年新作『Dylan Dfferent』(変調ディラン、とでも訳すのか)は彼なりの技と経験を活かしたボブ・ディラン曲の洒脱カヴァー集(そこには、リヴォン・ヘルムの娘であるオラベル: 2004年9月19日、のエイミー・ヘルムも入っていたナ)で、それを再現するという趣向を今回のショウは掲げる。で、ピアノを弾きながら歌うシドランに加え、テナー、トランペット、ウッド・ベース、ドラムという正調ジャズ・クインテットの布陣にて、新旧のディラン曲を基本ブルージィなハード・パップ調意匠のもと悠々と開いていく。歌詞を変えているかどうかはぼくは知る由もないが、73年ヒット曲「ノッキン・オン・ヘヴンズ・ドアー」に顕著なようにメロディは大胆にコードを置き換え、旋律もけっこう変えている。それは、知的で大人な音楽作業であるし、シドランならではの機微がたっぷり。やはり、得難い才人、ナリ。