仏ワーナー発の4枚組ボックス・セットが何かと話題を呼んでいるダニー・ハサウェイの娘さん(2008年5月13日、他)、キーボード、ギター(日本人。いい感じ)、ベース、ドラム、男性バッキング・ヴォーカルを率いてのパフォーマンス。南青山・ブルーノート東京、セカンド・ショウ。過去同様、低音に存在感を持つしったりした喉を悠々と披露。今回、目新しかったのはジョー・サンプル(2009年11月5日、他)絡みの曲を3曲も披露していたこと(←もしかして、過去もそうだった?)。彼女はサンプルとの共演作をとても気に入っているようで、それも自己リーダー作に数えている。

 そして、もう一つはマイケル・ジャクソンの「ロック・ウィズ・ユー」を少し大人っぽくやったのだが、そのなかに「スリラー」他10曲ほどやはりジャクソン曲のさわりを歌い込んだ(サイド・ヴォーカルの美声のジェイソン・モラレスもフィーチャーされた)こと。それ、ちょっとしたトリビュート項目となり、耳を引きましたね。その際、ハサウェイはジャクソン風の仕草やステップも少し取って、笑いを誘う。

 ちょっとした声の響きに父親の残像を思い出させる彼女のショウを見て毎度思うのは、サーヴィスで父親の曲をやってくれないかなあ……。前にインタヴューしたときに、「父の存在にフラストレーションを感じたことはない。彼はまさしく光の存在」みたいな全肯定をしていたし。かつてマーヴィン・ゲイの「ファッツ・ゴーイン・オン」をステージで披露していたことがあったが、彼女はその曲をずっと父親の曲だと思っていたとか(ダニーの『ライヴ』のオープナーですね)。なお、近作『ポートレイト』のインナー見開き写真は彼女の部屋で録ったもので、そこに映っている帽子はお父さんがずっとかぶっていたものだそう。

 適切に臨機応変、また伸縮性に富んだ、そのパフォーマンスはジャジーという形容が用いられることもあるだろう。しかしながら、バークリー音楽大学入学後にジャズも聞くようになった当人はその言葉をさほど気に入ってはいない。「ジャジーと言われるのは微妙ね。だって、それはポップじゃないということの裏返しでもあるから。でも、その両方を知っているのは私の利点。1冊しか本を読んでいないより、いろんな本を読んでいるほうがいいように」。そんな彼女の心持ちを拡大解釈するなら、父親がそうであったように、R&Bとはもともと奔放な、自分の解釈を大胆にはらむヴォーカル表現……だからこそ、レイラ・ハサウェイはジャズ歌手のように、鷹揚に他人の曲を取り上げる。別な言い方をするなら、やはりジャズはブラック・ミュージック、後に出てきたR&Bとは陸続きのものなのである。

 昼間ヤフー・ニュースのトップ項目に、カルロス・サンタナのニュースが出ていた。ツアー中(スティーヴ・ウィンウッドが前座だァ)のイリノイ州での公演で、ドラマーのシンディ・ブラックマン(2009年12月26日)にプロポーズしたんだそう。ほう! 凝り性のジャズ・マニア&ビッグ・ネーム故人の未発表録音物の熱心な収集者として知られる彼は純な人であるとも伝えられたりもするが。もう20年ぐらいサンタナ・バンドに在籍する打楽器奏者のカール・ペラッゾ(元13キャッツ。サンタナのホーム・ページには彼のサルサ・バンドが新作出した知らせが出ている)の奥さんは、学生時代の同級生のお母さんなんだよね(別れてなきゃ)。