今年のゴールデン・ウィークは天候に恵まれて(こんなに、晴天が続くのも珍しいのでは)、気持ち良かったなー。さんざんこぼしているように、今年は春になってもエっというくらい寒い日が続いていたから、余計にうれしくなちゃったなー。ほんわかあと過ごし、財布もほんわか開いちゃったりして。交通違反のキップを切られちゃったのだけが、バツでしたが。

 南青山・ブルーノート東京(ファースト・ショウ)、大御所ジャズ・ベーシストのザ・ゴールデン・ストライカーと名乗るベース、ピアノ、ギターという編成ドラムレス・トリオの実演を見る。ぼくがこのトリオを見るのは6年ぶり(2004年1月14日)となるが、ギタリストのラッセル・マローンはそのままながら、ピアニストがマルグリュー・ミラーからジャッキー・テラソンに変わっている。昨年のテラソンのリーダー公演(2009年5月8日)を見ていたく感心したぼくとしては、こりゃ行かなきゃとなりますね。

 で、そのピアニスト変更は小さくない変化をもたらしていたような。なんか、構成/仕掛けにも留意しつつ、淡々と流れていくような演奏のそこここに、心地よい濁りやアカンベーがあったような気がしたから。思索があった、なんて、曖昧な書き方もしたくなるかな。マローンの演奏もより辛口なジャズ度が増していたような。アンコール曲のときだけ、テラソンがグイ乗りで弾き出し、唸り声をごんごんあげだしたのがおかしかった。

 その後、六本木・ビルボードライブ東京に移って、ロシアのモスクワ出身(80年生まれ)で今はNYに住む(MCも歌詞も英語)シンガー・ソングライターのレジーナ・スペクターを見る。すでに数枚のリーダー作をリリースし、デイヴィッド・カーンやジャックナイフ・リーやELOのジェフ・リンら著名人が制作関与している人だが、最近はピーター・ゲイブリエルのお気に入りアーティストとして名を出している女性でもありますね。ゲイブリエルの7年ぶりのオリジナル10年作『スクラッチ・マイ・バック』はカヴァー・アルバムでそこにはルー・リード、ニール・ヤング、レディオヘッドらの曲とともに、なんとスペクターの楽曲が取り上げられている。

 場内に入ったら、びっくり。滅茶、混んでいる。1日だけの出演とはいえ、ちゃんとファンを獲得しているんだナ。で、パフォーマンスが始まると余計にびっくり。もう、指笛と嬌声の嵐。ええええええ、こんなに熱狂的な支持を受けている人とは。繰り返すが、ライヴ行きまくっているぼくでも、なんじゃあこの受け方は、という客の反応が認められた公演でありました。

 グランド・ピアノ(蓋を閉めていたが、それ珍しいんじゃないか?)を弾きながら穏健に歌う彼女に加え、東洋系(ともに、若い男性)のチェロ奏者とヴァイオリン奏者、スキンヘッドの白人ドラマーを従えての実演だったが、それに接して感じたのは、とってもまっとうなシンガー・ソングライターであるということ。思っていた以上に、オーセンティックな味わいを持つとも了解。ときに、誰かに似ているなと思うときがあったが、具体的な名前があがるというよりは普遍的な女性ピアノ弾き語り表現としてアリなものをまっとうに開いているということなのダ、と了解しました。どこか尖っているところやヒステリックなところもあるのかと思ったが、初々しさはいまだ持つものの、もっと熟していて、ふくよかな感じを与えもする。

 また、サポート陣にも感心。弦楽器の二人はいろんな奏法のもと効果的に絡んで的確に曲趣を高めるし、ときにドカスカとプッシュするドラマーも表現に芯や起伏を与えていた。1曲、彼女は鮮やかなエメラルド色のセミ・アコースティック・タイプのギターを持ち一人でパフォーマンスしたりもしたが、トレモロ・アームも用いたそれも嬉しい味あり。また、前に立って歌った曲もあったが、すべてはうれしい存在のアピールに繋がっていたのは間違いない。1時間半ぐらいのパフォーマンス時間、でした。