エルヴェ・サム

2018年6月16日 音楽
 セネガル出身パリ在住のギタリストであるエルヴェ・サム(2016年6月11日)のリーダー公演を、代官山・晴れたら空に豆まいて で見る。設定されている楽器群を見ると、もっと大きなステージでやった方が合いそうとも思える? サポート者は皆セネガル出身であるのかな。パーカッションはジャンベ型の縦長の打楽器3つを主に用いる。これを海外から持ち込むのは大変そうで、レンタルで揃えたんだろうか。

 サポートは、電気ベースとダブル・ベース併用のパセ・ジェシ(デトロイト在住)、ドラムのマコドゥ・ンディアイ(パリ在住)、パーカッションのアリオウネ・セック(セネガル在住)。彼らが皆すらりとし、格好もいけてて、格好いい。その見てくれを期待して行っても不満は持たないだろうなと思う。

 サムはマヌーシュ・ジャズの担い手が持っているようなスティール弦が張ってあるアコースティック・タイプのギターを持ち、アンプリファイド経由でことをこなす。いい奴そーだなと言うのはともかく、十全に客とのコミュニケーションを取ろうとする彼(英語でやっていた)はときどき最前面に出て来てギターを弾いたりもし、ステージ・マナーもチャーミング。鈴を転がすようなアフリカ属性を感じさせる奏法から、コード弾き主体でソロを取ったり、もろジャズ流儀に入っていったりと、演奏も多彩。サポート陣もそれに多様性を加える。とくに、1970年代初頭のソウル・バンドにいそうな格好をしているドラマーの演奏はアフリカで培っただろうタイム感と西欧的なステディなビート感が多大な間を抱えて重なったような奏法を見せ、彼がちょい演奏しただけでも引き込まれる。この叩き口は、米国の渋いシンガー・ソングライターやアメリカーナ的持ち味を求める奏者たちから求められる味ではないだろうか。

 そして、曲によっては民族衣装に身を包んだシンガーのアルファ・ディエンが加わり、よく通るでっかい歌声を加える。おお、彼がちょい歌うだけでも、西アフリカな感じはどばあって広がりますね。ほうと思ったのは、彼が出て来て歌いはじめると、客席にいた同胞と思しき二人が次々に、彼におひねりの紙幣(1000円札より、上のように思えた)を手渡したこと。かの地でも日本の大衆芸能のような、そうした風習があるのだろうか。また、演奏陣もときに歌声を重ねたりして、それもいい感じだ。

 客席側の反応は熱い。各所に決めをもっていたり、異なる要素がえいやっと繋がれる様から、<アフロな、プログ・ビート・ミュージック>なんて説明も彼らの実演に触れながらしたい部分もあった。この後、面々は京都、大阪、岡山、名古屋と回る。

▶︎過去の、エリヴェ・サム
http://43142.diarynote.jp/201606121230202174/

<今日の、言いわけ>
 W杯試合TV観戦のため、一部にて失礼する。この時期は音楽より、サッカー優先だす。ここんとこ、また涼しい。基本雨天だったが、来週も雨マークが多そう。気温もそんなに上がらなさそうで、それにはマル。

 1960年代から米国西海岸ロックを支えた名ロック・ギタリスト(2006年12月22日、2017年7月30日)の2年ぶりのリーダー公演だが、今回はうわわあああという顔ぶれ。より名のある西海岸ロック名士たちとやってきた。今回はキーボードレスで、ギター奏者が3人。新作も出した彼らは、日本人歌手をいろいろ招くホール公演も行うということだが。六本木ビルボードライブ東京、セカンド・ショウ。

 コーチマーに加え、ドラムのラス・カンケルとベースのリーランド・スクラー、ギターのワディ・ワクテル、ギターのスティーブ・ポステル(2017年7月30日)という布陣。ありゃ、それにクレイグ・ダーギ(鍵盤)がいれば、ザ・セクションになっちゃう。ダーギとコーチマーとスクラーとカンケルは1970年代にザ・セクションというインストゥメンタルのグループを組み、3枚アルバムを出していた。それ、サイケ・フュージョンと言っていいかな。

 前面にならんだギター陣は、持ち回りでリード・ヴォーカルも取る。すべてヴォーカル曲で、ザ・セクション曲(彼らのアナログを面々にかざしているお客さんがいましたね)はなし。メンバーのオリジナル、そしてジェイムス・テイラー、グレン・フライ(2011年3月5日)、ジャクソン・ブラウン(2003年5月2日)らの曲などを演奏。そして、驚かされたのは、それら多くが竹を割った情感を持つ、どすこいなパワー・ロック傾向にあるものであったこと。!!! うれしい、なるほど、キーボードレス編成であるのにも納得。そこに、ジョー・ウォルッシュ(2011年3月5日)の「ロッキー・マウンテン・ウェイ」が入ってもなんら違和感はないと、ぼくは思った。

 ワクテル(見た目、そんなに変わらないね)とポステルはスライド用のバーを指にはめる曲もあり。ジミ・ヘンドリックス映画(2015年2月27日)の音楽を作ったりもしているワクテルはもしかしてエフェクターをつないでいなかったかもしれない。スクラーは意外にも愛想のいい人で、カンケルはやはりとっても堅実な演奏っぷり。彼らの満たされた様を認めながら、実は一番幸せなロックの時間を歩んできた人たちなのかもしれないなとも思った。

▶︎過去の、ダニー・コーチチマー
http://43142.diarynote.jp/200612281419530000/
http://43142.diarynote.jp/201708081430263083/
▶過去の、ジャクソン・ブラウン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-5.htm 5.02
▶過去の、グレン・フライ/ジョー・ウォルシュ
http://43142.diarynote.jp/201103091707591166/
▶︎過去の、ジミ・ヘンドリックスの映画
http://43142.diarynote.jp/201502280948374540/

<今日の、余計な気遣い>
 乃木坂寄りのミッドタウンの角には、小さな別練の交番が設置されている。だが、いつも無人で警察官がいるのをとんと見たことがないし、ただいま巡回中とかいう案内板も出されていない。その有り様を見ると、ミッドタウン側が交番に入ってもらいたくて作ったものの、警察側からお断りされたんじゃないかと思える。たしかに近くの六本木交差点には規模が多めの交番があるし、もうちょい行けば古くも汚いビルでいつ建て替えになるのかなあと思ってしまう麻布警察署もある。ともあれ、そのミッドタウンの見捨てられた交番の外見を見ると、なんか寂しい気持ちになる。また、何かトラブルがあり間近に見えた交番に駆け込んだら誰もいずえ〜んという出来事が、これまであったりはしなかったのだろうか。