「ビルマの竪琴」という童話や映画があることで旧国名はポピュラーだったりし、また僧侶が大切にされる国というパブリック・イメージがあったりするものの、まったくといっていいほどミャンマーという国のことをぼくは知らないのだなあ。と、映画「ミャンマー 民族音楽への旅」を見ながら思った。渋谷・ユーロライブにての試写。6月下旬より公開される。

 監督/プロデューサーを務める川端潤は、エアプレーン・レーベルというインディを持っている、写真家や音楽家でもあるという。なんでも、ミャンマーの軍事政権から逃れてきた青年を雇用したことが発端で、ミャンマーに乗り込み同国の伝統音楽を録音することになり、その模様をドキュメンタリー映画にまとめている。当然、映画中に流れるのは撮影されたミャンマーの人たちの演奏や歌だが、風景場面にはストリングス・シンセと歌声を合わせたチル・アウト風な音楽も使われていて、それは監督自ら作っている。

 2013年、ミャンマーの新年にあたる4月に、旧首都であるヤンゴンに行った模様が、レコーディングの模様を中心に、時系列で素直に紹介される。とともに、現地の風俗や人々の表情などを伝える映像も時々入れられる。撮影者だろう女性の声も入るが、説明はすべて字幕で片付け、それは入らないほうがいいと思った。幹線道路に面したような一角に野外ディスコみたいなのが一瞬映し出されたんじゃなかったか。そーいうのも、あるのかな? ともあれ、映画を見ていると、ミャンマーに行きてえとは、確実に思わせられる。

 ビルマの竪琴として日本で知られる弦楽器の音は、ぬわんとかなりコラみたいと思った。最初のほうはその楽器を用いる音楽が紹介されたのだが、その繊細な響きや揺らぎが印象的で、ミャンマーの伝統音楽はビート感覚はそれほど持たないものが主なのかなと思っていたら、途中からどんどん打楽器系楽器が出て来て、おお。なかには、タブラッカみたいな楽器もあったよな。また、円状の内側に音階のある太鼓や鳴り物をズラリと並べるという感じの楽器(というより、装置といったほうがピンと来るか)もあって、これは見た目的にも音的にも、ちょい我々の想像を超える? その円のなかに奏者は入るのだが、それはなんか宇宙船みたい? こりゃ、先週土曜日に見た<川上フォーン>もびっくりだな。

 竪琴にせよ、その“円盤”にせよ、綺麗に装飾やペインティングがなされていて、それを用いる伝統音楽が晴れの場のものであり、祝福されたものであるのを了解。でもって、レコーディング参加者のなかには普段は大学で教えているという人が複数いたりして、担い手はけっこうインテリ側にいる人が多いのか。そういえば、録音に使ったスタジオを持っている大学准教授は日本語をしゃべっていたし、日本勢とミュージシャンは片言の英語でコミュニニケーシンをとったりもしていた。スタジオ所有者の大学の学生たちによる2013年7月の来日公演の模様も、ちらりインサートされました。

 夜は、六本木・ビルボードライブ東京(ファースト・ショウ)で、日本人グループのクラムボン(2007年9月24日)と英国プログ・ロック名士のデイヴ・シンクレア、両者からなるダブルビル公演を見る。シンクレアは京都在住とかで、彼のラジオ放送用ライヴをクラムボンのミト((2014年12月26日)がベース奏者として助力したことがあり、それが縁となっているよう。

 まず、結成20年となるそうなクラムボンが前座ですと言って、約40分パフォーマンス。時間が短いのに、呑気に延々とMCするあたりは邦楽流儀か。音楽性はかなり洋楽下敷きなんだけどなー。テーブルの上に秋の日本武道館公演のチラシが置かれており、また原田郁子(2009年11月1日、2011年4月6日、2015年2月6日)のMCでも、それが触れられる。へー、武道館とはすごいな。そして、この晩はビルボードライブ向きのアダルト路線、いつもとは異なる曲選びで行くことが告げられた。それについてはよく分らぬが、いろんな音楽語彙を参照したすえに原田の個性的な歌唱を核に置く魅惑的なポップ・ミュージックに結晶させていることを示す実演であったのは間違いない。インスト部にもいろいろ留意したそれ、ミトはベースよりギターを手にすることが多く、ドラマーの伊藤大助はニコニコと土台を作っていた。

 そして、鍵盤や歌のシンクレアのギグのほうは、彼の名声のよりどころであるキャラヴァン時代の同僚であり、その後もブライアン・フェリーやレディオヘッドやエイミー・ワインハウスなどのアルバム録音に関与している英国在住のリード奏者のジミー・ヘイスティングス(この日は、フルートとクラリネットを吹く)に加え、日本人の女性シンガーとベーシストと女性ドラマーがついてのパフォーマンス。なんでも、シンクレアとヘイスティングは『カンタベリー・テイルズ』という連名によるアルバムを作ったよう。彼は循環奏法と呼ばれるロング・トーン奏法も披露。その際、この日が77歳の誕生日であることが共演者たちから祝われたりもしたのだが、そのベタな設定はあまりに臭すぎ。シンクレアは吉本新喜劇のファンかと思ってしまった? でも、やはりキャラヴァンにいた従兄弟のリチャード・シンクレア(2014年4月19日)の様と比較するなら、真面目そうに見えました。

 こちらの主ヴォーカルは日本語と英語で女性シンガーがとったが、2曲で披露したシンクレアの少しヨレたヴォーカルは絶品。淡い木漏れ日を受けた気持ちにもなれるそれにはぼくのココロが揺れまくり。これが6、7曲やられたときにゃ、ぼくは悶絶しちゃうな。2曲ではクラムボンの3人も加わる。ツイン・ドラムのときもあり。キャラヴァンとソフト・マシーンは同じ母体を持ち、ロバート・ワイアットがソフト・マシーンを抜けてシンクレアと組んだマッチング・モールで発表した1972年メロディアス人気曲「オー・キャロライン」の際は、クラムボンの2013年カヴァー・アルバムで取り上げてもいるため、原田も歌った。

▶過去の、クラムボン
http://43142.diarynote.jp/200709261218590000/
▶過去の、原田郁子
http://43142.diarynote.jp/200911021429368036
http://43142.diarynote.jp/201104091623415118/
http://43142.diarynote.jp/201502071011467530/
▶過去の、ミト
http://43142.diarynote.jp/201412291146465218/
▶過去の、リチャード・シンクレア
http://43142.diarynote.jp/201404200755013398/

<今日の、夜の天候>
 台風6号→熱帯低気圧の影響で、18時半からのライヴを見た後は、かなりな雨風。そのままミッドタウン内で一飲み一食べ。分別ある大人ならそこでお開きにするのかもしれないが、そのままゴー。一緒の知人が横浜在住であったので、少しでも帰りやすくするべく&日比谷線で1本で行ける、中目黒に移動して飲む。雨風はどんどんパワーアップ。さすが、その後はハシゴする気にはなれず。わー、風で傘が壊れたが、駅前でタクシーを拾えたのはラッキー。そのタクシーの車中、叩き付ける雨でワイパーがあまり役にたたず。運転手さん「すみませんねえ、ゆっくりでしか走れなくて」。ぼく「いやいや、乗せていただけるだけで有り難いデス」。運転手さん「さすがこんな日は、皆さん早々にお帰りになる人が多いですよ」。 帰宅して、航空機の飛行状況を可視化しているサイトを何気に見たら、羽田や成田に降りることが出来ず、ぐるぐる回らされている&到着予定時間が大幅に遅れて表記されている航空機多数。名古屋方面に向かっている飛行機もあったと見たが、降機予定地いがいに降りた便もあったのか。あと、成田だと深夜発着は許されていないが、こういう場合は深夜の降機が認められるのか。酔っぱらった頭でいろんなことを考えてしまったyo。しかし、セカンド・ショウの客の入りはどうだったのだろうか?