わー、こんな人なのかあ。スライ・ダンバー(2011年11月4日)やデニス・チェンバース(2013年3月12日)みたいにヘルメットをかぶって(それ、ここのところの彼のトレード・マークのよう)登場したチェスナットは、もう肉体感あるゴツゴツしたパフォーマンスをずんずん繰り広げて行く。冒頭の数曲は曲調がマーヴィン・ゲイを想起させる、と書いてもいいだろう。そのまま、(往年のマーヴィン・ゲイがそうであったように)服を脱ぎ出しても、ぼくはそれほど違和感を覚えなかったと思う。

 1968年アトランタ生まれ(今はマイアミ拠点かも?)の、鬼っ子的な感じも与えてきた自作派のアフリカ系シンガー/クリエイター。2002年アルバム・デビューで、2012年にやっと2枚目をリリース。ザ・ルーツ(2002年12月29日、 2003年12月2日、2004年9月19日、2007年1月15日)やザ・ブラック・アイド・ピーズ(2001年2月7日、2004年2月11日)やジャイルズ・ピーターソン(1999年5月21日、2002年11月7日、2004年1月16日、2008年9月18日、2012年9月13日)と親交をもったり、ミシェル・ンデゲオチェロ(2002年6月18日、2003年11月18日、2003年11月22日、2008年5月7日、2009年5月15日)の2012年ニーナ・シモン・トリビュート作で1曲フィーチャード歌手として起用されたりと、枠に収まらない視野の広い担い手からの支持を得てきた人物だが、日本では大きな話題になったこともなく。よく2日間の来日公演が決まったものだと思わずにはいられない。感謝! 

 自分の寝室で作ったことを受けての表題付けを持つ第一作『The Headphone Masterpiece』には日本の国旗が英国やドイツ他の旗と一緒に掲げられていて(一番大きい)、さぞや来日公演は彼にとって念願だったのではないか。って、すでに公演したことがあったりして。。。往々にして、そういうことあるからな。ま、なんにせよ、誠心誠意、客に対していたのは間違いない。髭面の彼、愛嬌もあったな。

 ギターを持つ場合もあるが、ライヴにおいては歌に専念する方向にあるようだ。バンドはギター、ベース、ドラム、キーボードで皆アフリカ系。彼らは、なんのギミックもない、真っすぐなバンド音を出す。キーボード奏者はメンバーが来れなくなって、急遽日本在住のキースさんという外国人が弾いていたようだ。そんなサポート音もあり、アルバムだと卓録系の人らしい、なあなあもわもわなワケの分らなさがあるのだが、実演は竹を割ったような、妙なクロスオーヴァー感を持つヴォーカル表現として明快に送り出される。

 で、やっぱり変というか、一般的な型にはなかなか入れがたい人物であると痛感させられる。R&Bとかロックとかブルースとかいろんな要素にまたがり、どこからも距離を置いた所で、自分が見ている世界を開いているというしかなく、ジャンル分けしやすい音楽を是とするアメリカ音楽界でよくも生き残ってきたものだとぼくは思った。そのしぶとい(?)、しなやかな生命感がぼくにはうれしかった。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。

<今日の、案内>
 11月11日(月)、<エイスケ・バー>を開いちゃいまーす。一夜かぎり。場所は、ブラジル音楽ファンには良く知られるBar Blen Blen Blen(渋谷区道玄坂1-17-12 野々ビル2F.。電話;(03)3461-6533。20時から深夜まで。http://blenblenblen.jp/access.html)。店主の豪くんがブラジル買い出しツアーのため、ぼくが仕切っちゃいます。ハハハ。飲み物は熟練スタッフのけんち君(cf.コロリダス〜2013年2月3日〜)が支えてくれますが、かなり不備な感じにはなりそう。この晩は、ブラジル音楽はほぼかからないと思います。ええっ? ただ、声のデカい、金髪のおやじがいるだけ。それでも、良ろしければ、来てくださーい。