オサリヴァンといえば、72年全米1位輝いた「アローン・アゲイン」である。なんか、女々しく、妙に存在感のある声もそれほど好きではなかった。が、すぐにメロディや曲の佇まいは反芻できちゃうわけで、ちゃんと旋律を作れ、強い持ち味を持つ、ピアノ弾き語り基調のシンガー・ソングライターであるのは間違いない。そのファミリー・ネームが示すように、彼はアイルランド生まれ(46年。今はジャージー諸島に住んでいるという)。が、当然、彼が活躍した70年代なんかはスコットランドもアイルランドも一緒くたにイギリスとして大概は括られていたはずだ。ぼくの場合、その差異に目を向けるようになったのはサッカーのナショナル・チームがちゃんと別になっていたことからだと思う。

 昔ラジオで耳にした曲がどう聞こえるのか、そのパフォーマンスはどこかにアイリッシュの翳を宿すのか、そんなことが気になって、六本木・ビルボードライブ東京(ファースト・ショウ)に足を向けた。けっこう、いい入り。パフォーマンスはギター、ベース、ドラム、キーボード(効果音主体)、サックスやフルート(とはいえ、半数以上はタンバリンやコーラスでの貢献)からなるバンドをともなってのもの。昔の面影をそれなりに保っている本人(けっこう、アイドルっぽさを引きずっているとも書ける?)はエレピ音色のキーボードを弾きながら歌う。アイリッシュぽさは皆無ながら、素直なバンド・サウンドのもと、無理なく自分を開いて行く。オサリヴァンは普通に鍵盤を扱うときもあるが、三分の一ぐらいの曲では、左手で出すベース(単)音を手のひらを縦にして小指と薬指で鍵盤をおさえる。それ、少し大げさに書けば、空手チョップのごとし。そんな弾き方する人、初めて見た。最後の曲はアップ目の「ゲット・ダウン」。これもとても耳覚えがある曲。彼は椅子の上に立ち上がり、客をあおった。