やってもうた。

 2時、西麻布で昨日のアーティストをインタヴュー。取材場所のレストラン
から出ると、あれパンツのポケットに入れているはずの鍵がない。ん? あり
ゃあ。見ると、乗ってきて歩道に止めたスクーターもない。一瞬、キツネにつ
ままれた気持ちになったものの、すぐに鍵をスクーターに付けたまま離れてし
まい、盗まれたのだと了解。過去に、鍵を付けっぱなしで止めてしまったこと
が数度あったから。家の鍵も夜中ドアの鍵穴にさしっぱなしにして、翌日宅急
便のおじさんに鍵がついたままですよと言われたこともあった……。この日、
早朝起きで仕事してて、ちゃんと睡眠時間を取っておらずボーとなっていたこ
とと関係ありか。やっぱ最低6時間半は寝ないとダメだな。また、昨日から急
に暑くなったことと関係ありか。あー、ボケ進んでいるなあとも思う。

 ほんの1時間の間に、盗まれてしまった。まあ鍵がついていたら当然と考え
るべきことなのかもれないが。でも、今までセーフだったになあ、あー西麻布
は治安が悪〜い。とまれ、すぐにスクーターと一緒になくなった鍵のゆくえの
重大さに気づく。キーホルダーには家の鍵とクルマの鍵もついている。バイク
の椅子の下スペースには自賠責保険の証書が入っていて、それにはぼくの住所
が記されているはず。やばい。クルマも建物の入口横の駐車場に止めているか
ら、鍵からメーカー等を知れば、該当となる車はすぐに特定できるだろう。こ
りゃ自宅と車があぶない。家の鍵は、たまたまキーホルダーにはつけていなか
った(通常は使っていなかった)、厳重なほうの鍵を用いるようにすればいい
。持ち歩く鍵の本数が増えるのがイヤでぼくは通常使っていなかったのだ。で
、急いで帰宅し、なんとか入り(ちょい大変でしたあ)、無事を確認したあと
、スクーターのプレイト・ナンバーや車体番号を調べ、交番に盗難届けを出す
。クルマのほうはちょうど車検に預けているときで、ディーラーに電話して鍵
をすべて取り替えてもらうようにお願いする。お金はかかるが、安心感のほう
が重要だ。

 これを見た人は、どういう感想を持つか。そのボケたふるまいに呆れるのか
。4〜10月限定(つまり、寒くない時期)で使っているスクーターに関しては
かなりボロいもので、しょうがねえかといった感じでサバサバできちゃってい
るのは何より。

 夜、渋谷・オネストへ。7時すぎに着くと、マヘル・シャラル・ハシュ・バ
ズ(2004年3月10日)がやっている。この前とは編成がちょっと違うし、何よ
り進め方も違う。もっとちゃんと曲をやっていて、もう少しプロっぽい。なん
にせよ、いい味だしてて、感服できちゃうのは間違いない。

 続くはシスコのサイケ・バンド(ドラムレスだけど)らしい、マキーラドー
ラ。さっき客席側にいて、少しアート・リンゼーに似ているやんけと思った人
もメンバーだった。奥のほうにいる人は日本人(サポート?)だったのかな。
なるほど、淡いんだか濃いんだかよくわからぬサイケ・ロックを展開。なんか
、シスコにはこういう連中たくさんいそうだな、なぞとも思う。サックスが入
る曲はロキシー・ミュージックを思い出させる、ロキシーの場合はオーボエだ
けど。それを聞きながら、30年前のロキシー・ミュージックは鬼のように凄か
ったなと痛感。後の洗練路線もそりゃ好きだが、ぼくは彼らの場合、2枚目の
『フォー・ユア・プレジャー』にとどめを刺す。もー、大好き。

 その後出てきた、日本のテニスコーツはコメントを書くほどちゃんと見てま
せんでした。関係ないけど、受け付け階のフロアには木で出来た屋形船の小さ
いみたいなの(人が座れる)がドーンとあった。なんか、バカバカしくて楽し
い。知人から、漁船(だったけかな?)というグループがライヴをやったとき
持ち込んだ、と聞いたが。

 そして、10時をだいぶまわってから、ビル・ウェルズとマヘル・シャラル・
ハシュ・バズ、一緒のパフォーマンスが始まる。おお、という組み合わせ。グ
ラスゴーの特殊回路を持つピアニストの“もうひとつ”の調べが、下手なホー
ン・セクション主体音に覆われる。絶妙な重なり。ときにマヘル側の女性が歌
うものも。どのぐらい、一緒にリハやってんのかなー。ゆらゆらとした、綻び
感たっぷりのメロディとハーモニー。こりゃ、抗しがたい。これらを聞きなが
ら渋さ(8月1日、他)にしても、板橋文夫(6月19日)にしても旧世代のバ
ンドなのだなと思う。まあ比較するもんでもないかもしれぬが、彼らは音楽自
体は見事なプロだもの。だが、マヘルは……。このヘロった素人臭さの奥から
、クロード・ソーンヒルやギル・エヴァンスのオーケストラが求めた何かと重
なりえるものを出しているとも感じ、ぼくのココロは本当に甘美なものに包ま
れた。始まった時間が遅かったから、11時を回るごろから、終電を気にする人
がボロボロと返っていく。ちょっと気の毒。大人のもう一つの、豊かな、ちょ
っと刺もある時間がそこにはありました。