彼の新譜『オウト・オブ・ザ・ブルース』(コンコード、2019年)、枯れた男の歌という感じでけっこう好きなんだよなあ。かつてスキャッグスはブルーノート東京に何度か出ていて、ぼくは見ているはずだが、ここでのその記載は見つからない。どこに行ったんだろう。

 渋谷・オーチャード・ホール。ギターを手にしながら、本人は歌う。アンコール時の「ウィ・アー・オール・アローン」以外は全部の曲で彼はギターを持った。別に持たなくてもサウンド総体にはあまり影響しないが、ギターなしだと手持ち無沙汰なんだろう。アンコールの2曲のブルース調曲において、彼はギター・ソロも取る。うち10分以上の尺を持っていたフェントン・ロビンソンのマイナー・ブルース曲「ローン・ミー・ア・ダイム」はちょうど50年前にアトランティックから出されたセルフ・タイトル作の目玉曲ですね。

 オープナーの「ジョ・ジョ」(そんなに彼の熱心なファンではないと思うのだが、何気に曲を知っていたなー)がはじまり口の中でもごもごしているような歌い方に触れ、すぐに大御所ブルーズン・ソウル歌手のボビー“ブルー”ブランドが大好きなんだあと感じたら、中盤で子供の頃からのアイドルみたいな紹介のもとブランドの曲もやった。ロッド・スチュアート(2009年3月11日)のサム・クック愛はとてもわかりやすいが、スキャッグスも同様ですね。彼は74歳だそうだが、元気そうだし、声もちゃんと出ていた。

 サポートは、ドラムのテディ・キャンベル、ベースのウィリー・ウィークス(2006年11月20日)、キーボードのマイケル・ローガンがアフリカ系で、パーカッションのブランリィ・メヒアスはヒスパニック系。そして、ギターのマイク・ミラーと鍵盤とリード(テナー、ソプラノ、ウィンド・シンセサイザー)とギターのエリック・クリスタルという陣容。キャンベルとローガンとメヒアスは裏声でコーラスもつける。新作レコーディング参加者は、ウィークスだけか。

 本編70分。2度のアンコールを含めると、100分ぐらいやった。新譜に準じて渋み傾向で行くのかと思ったら、「リド・シャッフル」とか「ロウ・ダウン」とか『シルク・ディグリーズ』からの曲を何気にやり、すると観客は大喜びとなる。ま、なんにせよ、AORの人ではなく、ブルー・アイド・ソウルの担い手という像は立てていたと思う。

▶︎過去の、ロッド・スチュアート
http://43142.diarynote.jp/200903130124118315/
▶︎過去の、ウィリー・ウィークス
https://43142.diarynote.jp/200611221236140000/

<今日の、ぼくの生活導師>
 学生時代にベースを主に弾いたぼくが一番コピーした人かもしれないのが、ウィリー・ウィークス。彼も70代に入ったようだが、変わらずスリムで若々しかったな。演奏のうねりは小さくなった気もしたが、けっこうサム・ピックで弾いていた。スキャッグスのメンバー紹介中、一番反応が大きかったのがウィークスではなかったか。そんな彼、ダニ-・ハサウェイの1972年実況盤『ライヴ』での演奏が何より知られるが、ぼくはもう少しあと、アンディ・ニューマーク(cf.スライ〜2008年8月31日、2008年9月2日、2010年1月20日〜&ザ・ファミリー・ストーン)とコンビを組むことも多かった一連のロック系レコーディングでグルーヴィな彼の存在を知った。ジョージ・ハリソン、スティーヴ・ウィンウッド(2003年7月27日)、ロニー・ウッド(2003年3月15日)、デイヴィッド・ボウイ、他。とくに、ジョー・ウォルッシュ(2011年3月5日)の“ミラー・ボール”(1976年リリースの実況盤『You Can’t Argue With a Sick Mind』)は大、大大大好きで、そこの「タイム・アウト」と「ロッキー・マウンテン・ウェイ」は死ぬほどレコードをかけて一緒にベースを弾き、有頂天になっていた。ぼくの人生というか生活における身のこなし〜揺れを規定した最たるメンター? ああ、もっと早く知っていたら、インタヴューしたかった。
▶過去の、スライ・ストーン
http://43142.diarynote.jp/200809011923060000/
http://43142.diarynote.jp/200809071428140000/
http://43142.diarynote.jp/201001211346277187/
http://43142.diarynote.jp/201505201630381899/ 映画
▶︎過去の、スティーヴ・ウィンウッド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-7.htm フジ・ロック
▶過去の、ロニー・ウッド/ザ・ローリング・ストーンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm 3月13日(バック・バンド)。15日
▶過去の、ジョー・ウォルシュ
http://43142.diarynote.jp/201103091707591166/