下北沢・ラカーニャ。まず、女性3人(ヴァイオリン、ピ
アノ/アコーディオン、ベース)を引き連れた、五郎さんの
パフォーマンス。この軽妙な大先輩のパフォーマンスは前に
ほんの少しだけ見たことがあったが(1999年8月9日)、だ
いぶ印象が違う。まあ、バンドでやっているせいもあるけど、
生理として強かった。最近、けっこうライヴをやっている
せいもあってか、ちゃんと声も出ているし、動くし。激しい
曲ではフォーク・ギターの弦が何本も切れた。

 ステージを終えた五郎さん、「(こんなステージ見て)怒
った?」。いや、全然怒ってないですよ。まあ、ぼくと世代
も感性も違うなというのは感じたけど。でも、ちゃんと歌心
あるなと思ったし、その人間性に通じる不思議な味があるよ
な。一部、赤裸々な私生活の吐露の様は“フォーク界のマー
ヴィン・ゲイ”と例えておこうか。こんど、彼のカヴァー、
官能的にやってよ。あと、クスクス笑いを誘うMCは上手い
ですね。新作用のレコーディングも終わったようで近々出る
ようだ。

 続いて、五郎さんとは70年代同じ吉祥寺周辺のサークルに
いたという、ギタリスト(バンジョーやウクレレもうまい)
のキヨシ小林。率いるグループ名にあるように、ジャンゴ・
ラインハルトを根っこに置く、ジプシー・スウィング表現を
飄々とやるグループ。生ギター2本と生ベースが、彼をフォ
ロウする。うち、ギターの一人は彼の高一という息子さん。
家族内継承。それって、ジプシー・スウィングとして正しい
あり方かも。ほのぼのとした時間が流れる……もう少し音が
大きくても良かったかな。最後に五郎さんとの共演も。
 まず、文京シビックホール(後楽園駅からそのまま行けて
便利ね)でボビー・マクファーリンを見る。区の公式施設と
して建てられた、それなりに小綺麗なホール。入りは良くな
いのに、歓声/拍手は破格に聞こえる。音の響きは音楽的か
どうかは知らないがやはり破格にいいホールのようだ。ジャ
ズからクラシック、ポップや民族音楽までを俯瞰したうえで
、いろんな声を出す器用なヴォーカリスト。ぼくは初めて、
生を見る。ソロによるパフォーマンス。全部キブンで、歌詞
なしのスキャットで突き進む。で、そのスキャットはメロデ
ィを歌う声とベース音が絶え間なく出されるというもので(
けっこう、絶え間なく胸を手で叩きながら歌う)、最初はい
ろんな変化もあるし、一部声をサンプリングしたものを生声
とともに使っているのかと思ってしまった。それほど、巧み
。なるほどねえ。思ったほどアカデミックでもないし、胡散
臭くもはないし、こーゆー人がいてもいいと素直に思いまし
た。
 
 ステージ上の彼はドレッド・ロックスを束ね、ジーンズに
Tシャツと軽装。ちゃんとご存じなようで、変化が欲しいな
と感じるところで、日本人の女性ヴァイオリニスト(fumiko
という名前だったかな)、ピアニストトの松永貴志(2003年
7月1日)、三味線奏者の上妻宏光(2002年5月13日)が
断続的に出てきて、デュオでやる。まあ、それはそんなもん
というか感じか。また、後半部ではステージを降りて、前の
ほうの客と重なる。何人もの人に、それぞれシークエンス声
を出させ、彼はそれに重なる。歌った人、みんな普通にやっ
てきたお客さんなのかな?

 その後、南青山・ブルーノート東京。ソウル・クオリティ
・カルテットを見る。女性ヴォーカルを全曲でフィーチャー
するスウェーデンのグループで、新作はイタリアのイルマか
ら出ている。ボサ味なんかを巧みに入れての、いまどきのフ
ュージョン・グループと言っていいのかな。
 渋谷・アックスで、オーストラリアの新進4人組。日本盤
出る前にフジロックだかに出て、評判とったんだけか? そ
の後出た、日本盤はけっこう売れているらしい。普段は見か
けないギョーカイの人も見かけたりして、話題なってんのね
と思わせられる。ステージ上に表れた面々はそこそこタッパ
がありそうな人達で、それは堂々感をさそってよろしい。な
んか、見てくれだけで、無骨にライヴをごんごん積み上げて
きたバンドなんだなって気にさせられますよね。

 なるほど、良く出来た(過去表現の肝をうまくつかんだ)
、パワフルで、ほのかなキャッチーさも持つロックンロール
を聞かせる。歌もちゃんと聞こえる。お、ギタリストのうち
一人はフライングVを使用、ベーシストはピック弾きじゃ。
この手の今のバンドの常でもう少し、ドラマーが上等だった
なら。完全回顧型の音楽性を持つバンドとしては、ここのと
ころ見たなかでは、ホワイト・ストライプス(2003年10月21
日)、ザ・ダークネス(同11月26日)と並ぶ。だが、彼らが
一番自然体というか、ギミック度が低い。で、その飾らない
態度とあった曲調も、ぼくがロックの様式として不滅なもの
と感じているストーンズ調R&Rとかするところもあって、
ニッコリ聞けますね。一瞬、ジョージア・サテライツの登場
時のことを思い出したが(もう15年ぐらい前かな。来日公演
は新宿厚生年金会館で音が死ぬほどデカかった。もしかして
、ぼくが経験したなかで1番? 1日以上、耳鳴りしてたも
の)、サテライツのほうがより本格的で渋いところがあった
のは間違いない。最初英国で当たったものの、あのバンドに
はアメリカ人の強さがあった。

 やっぱり70年代からロックを聞きつづけている人間にとっ
ては、何からなにまで分かりすぎてしまうところあり。ま、
それはしょうがないですね。もうちょっと見たかったが、途
中で退座し、タクシーに飛び乗る。

 新宿・ロフト。前座のズボンズが終わったところ。こちら
もなかなかの盛況。ザ・ダートボムズは、デトロイトのガレ
ージな逸・黒人シンガー/ギタリスト、ミック・コリンズ(
cf. ゴーリーズ、ブラックトップ) のバンド。ツイン・ドラ
ムが、新たなポイントではありますね。コレハ見ナクテハ。

 そのコリンズさん、サングラスをしていてこわもてだが、
オフではラヴリーな人とか。というのは、実演の節々にも表
れていたよな。ぐりぐりごりごり、等身大の人間の音を送り
だす。激しさだけでない(ま、実際曲のほうもそうで、一部
はジミヘンのメロディアス曲みたいな感じも)、妙に砕けた
ジューシーさのようなものもじわじわ聞き手に感じさせてく
れるもの。他のメンバーもちょっと歌ったり、みんなコリン
ズのことを信頼し、重なっているゾという感じも良ろしい。
もう一人のギターは東洋系ぽい顔をした女性。見ながら、や
はりコリンズがフロントを務めて女性メンバーもいたザ・ス
クリューズ(1999年10月17日)のことを思い出したりも。

 とにかく、姿勢が正しい。というか、美味しい。これはあ
るべきもの。で、もっと受けてしかるべきという判官贔屓的
心情も加味され、ぼくはぐいぐいと入り込んじゃった。やっ
ぱ、彼らを見てて、ジェットとんじゃいました。見て良かっ
た! 今年見たロック・アクトのなかでは、これが今まのと
ころ一番。

ギャラクティック

2004年2月5日
 ニューオリンズのインスト部分も重視するファンク・バン
ド(2000年8月13日、同12月7日、2001年10月13日)、ジョ
ージ・クリントンやカール・デンソンが飛び入りして聞き手
を興奮のルツボに落とした02年フジ・ロック・フェス(雑誌
リポートとの重なりを避けて彼らのことには触れていないが
、2002年7月28日)以来の来日公演となるのか。いや、あん
ときは、常軌を逸して、と書きたくなるぐらい、逞しく、フ
ァンキーな実演だったなー。

 渋谷・クアトロ。うわあ、ってぐらい混んでいる。1時間
強のセットを二つ。ヴォーカリストはテリル・デ・クロウに
加え、黒人女性が新たに加わったようだ。アンコール曲以外
はコーラスをつけるだけでそれほど目立たないが、まあ視覚
的には変化が出ていいかな。変化と言えば近作『ラッカス』
でジ・オートメイターを器用し、スタジオ技巧応用路線に突
入した彼らだが、1部のショウではそっちっぽいノリでやっ
た曲も。その場合、サックス/ハープのベン・イールマンが
サンプラーで活躍したり。なんにせよ、基本的にギャラクテ
ィックはギャラクティックだが。

 ライヴ・バンドはいいのお、と素直に感じさせる実演。よ
くもまあ、楽しんでやってマスという風情を維持しているよ
なー(だからこその、スタジオ録音盤の方向転換なのかもし
れないが)。アンコール曲はエゴ・ラッピンの中納良恵が加
わって、ドーン・ペンのレゲエ・ヒット曲「ノー・ノー・ノ
ー」をやる。ギャラクティックのレゲエというのは珍しい。
前日はスカパラのホーンの二人が混ざったようだが、いいな
あ……皆入りたまえ、という開かれたノリは。ただ、終了時
刻10時は厳命されていたようで、セカンド・セットとアンコ
ールから1曲づつはしょったよう。残念。もう、行くところ
まで延々といってほしかった。次回は(集客は問題ないと思
うし)、それが可能な場所で是非に。                

ONJQ

2004年2月6日
 これまでとこれからが繋がったパフォーマンス。

 新宿・ピットイン。開演時刻に行くと、人が店の横にあっ
と驚くほど溜まっている。リハが長引いているのか、まだ客
を入れていない。うわ、100 人を軽く超える人が所在なさそ
げにいる。

 大友、菊地、津上、水谷、芳垣(2004年1月21日)、いつ
もの5人に加え、韓国ソウルからやってきたそうなアルフレ
ッド・ハルトという外国人テナー・サックス奏者が全曲で全
面的に加わる。これだとONJS、じゃん。と言うのはとも
かく、あのハルト=ゲッペルスの人? 彼、テナーを中心に
いろんな管楽器(なかにはマウス・ピースに透明の管をくっ
つけたようなものまで)を駆使する人で、そのフレイジイン
グ等も含め、本当にフリー側の神髄を会得しているんだなと
いう気にさせちゃう人ではあったよなー。

 管楽器が一つ増えた、饒舌なONJQという感じで、実演
は進む。ちゃんとリハするならONJOもアリか、と頭の片
隅で一瞬思う。いや、某セクステットの現代ストロング版み
たいなのも聞いてみたい、なんて。途中、大友が、今日で(
菊地)ナルちゃんは最後です、と言う。なるほど、それでそ
の代わりにこの外国人が新メンバーになるというわけか。納
得。菊地の体つきに似合わない、生理的に態度のデカい、切
れたブロウを聞けなくなるのは非常に残念だが(やっぱり、
ぼくはジャズ・マン=インプロヴァイザーとしての菊地が一
番魅力的に思える)、もっといろんな方面で、態度からイン
プロしたいということなのか。実は、海外公演も少なくない
ONJQにはなんとなく日本人だけで固めてほしいと、思わ
なくもないのだが。あれ、俺ってナショナリスト? ともあ
れ、ONJQ(2002年3月17日、2003年6月28日)・ゴーズ
・オン。                
 在シカゴと、アリゾナ。ながら、ともにスリル・ジョッキ
ーに所属する二組のジョイント公演、渋谷・ガボウルという
、古いビルの地下にあるカフェのような所で。客の外国人比
率が高い。なぜか、南アメリカのほうの血が入っているよう
な人が少なくないと思えたのは気のせいか。

 まず、キャリフォン。ステージ高がない場所なので、やっ
ている様はあんまし見えない。どうやら、選抜体(4分の2
)によるパフォーマンスらしい。基本はギターの弾き語りに
ドラム、そこにCDで聞けるものの7分の1ぐらいの効果音
が入るといった感じか。零れてくる音を聞けるだけでやっぱ
りいいナ、と素直に思わずにはいられない実演。まず、根本
になる曲がいい。とにかく、ゲキ渋の都会的な歌(彼らのこ
とを示すのにカントリーという言葉を用いる人がいるけど、
やはりぼくにはそのデリカシーのなかさが分かりません)が
質があるし、控えめながら、今のなかで異彩を放ちたいとい
う不思議音の味付けも良質。聞きながら、ぼくは彼らの新作
『ヘロン・キング・ブルース』を04年のロックのベスト10に
入れるんだろうナという気持ちを新たにしました。ちらりと
見えた顔は、いかにもの、ケンカ弱そうな丹精な青年顔なり


 そして、ジャイアント・サンドのハウ・ゲルプ。こちらは
一人でギター(ときにピアノも)の弾き語り。渋さとやんち
ゃさの、一人ごった煮。でも、どうやっているのか、ときど
き乱暴にサンプリング音/効果音が差し込んだりも。マイル
スのペット音との共演なんてのもやった。で、こちらはキャ
リフォンと比べると破格にがらっぱちで開放的、客席とのや
り取りがある実演を見せていく。人間くさいというか、変テ
コ、というか。言葉が分からない人間にとっては、ダレると
ころもあったが、やはり興味深い人であるのは間違いない。

 最後には、3人一緒に1曲。彼らはこの面子でイタリア等
を回ってきたのだという。

                

キーラ

2004年2月8日
 この日も、選抜体にてのライヴを見る。かつてクアトロな
どでライヴをやっているキーラで、アイリッシュ・トラッド
系きってのはみ出しグループと言っていいか。7分の3、そ
の中心となるオ・スノディ三兄弟によるもの。その兄弟、生真面目な顔した上からどんどん、顔がひょうきんなほうに崩れて
いく? 「98年だと思うけど、サンフランシスコのケルティ
ック・フェスティヴァルであなたたちを見たことがあります
」と伝えると、「あのデカい会場で。3月7日のことでしょ
」と一番上のおにいちゃん。明晰すぎます。

 つぎから次へと、それぞれ楽器を持ち替えたり(ギターや
マンドリン、各種笛、ボーラン他打楽器など、いったい、何
種類の楽器を用いたのか)、リードを取り合ったりし(コー
ラスもいける)、その核にある歌心や伝統の襞や広い視野な
ど、様々なものを見せる。ああ、才能も腕も心意気もあるな
と、あっさりと教えるパフォーマンス。いわゆるファンクや
ラテン系のグルーヴとは全然違うのだが、ある種のグルーヴ
にも富んでいたナ。

 肩肺編成によるもの、1時間弱の演奏になるのかな、なん
て思っていたら甘い。45分強のセットを2回、そして10分強
のアンコール。たっぷり、見せてくれた。選抜体でやるのは
初めての経験だそうだが、それが嘘のような、変化とヴァリ
エーションに富み、説得力もある実演。おそるべし、オ・ス
ノディ兄弟。その3人で、先にFM放送公録でズボンズと共
演したそうな。見たかった。この8月には完全編成でまたや
ってくる。
 会場は後楽園・文京シビックホール。ステージ美術/照明
がそれなりにちゃんとなされていて、ホール公演の良さを少
し感じたかな。

 電波系ジャズ偉人、ショーターが30年以上ぶりに唐突に組
んだアコースティック編成バンドも、これで3度目の来日と
なる(2001年8月3〜5日、2002年8月25日)。過去とまっ
たく同じ面子、配っていたちらしを見て知ったが、このレギ
ュラー・バンドはみんな生まれた年代が違うのだな。ウェイ
ンが30年代(33年生まれ)、ベースのジョン・パティトゥッ
チが50年代(59年)、ピアノのダニーロー・ペレスが60年代
(66年生まれ)、ドラムのブライアン・ブレイドが70年代(
70年生まれ)。こじつけだけど、原稿を書くときのネタには
なりますね。

 毎度の如く、の1時間半。プラス、アンコール。単純なジ
ャズのフォーマットからは逃げる、音の連鎖の集積、高尚な
マジ丁々発止、と言いたくなるカルテット表現。ジャズ、じ
ゃなー。とはいえ、過去2度の彼らの実演に触れて、行き方
が分かっている部分があったせいか、ぼくとしてはなんとな
く没入しきれない何かを感じて戸惑った面もあったのだが…
…。ただ、他の知り合いの方々は絶賛してしましたが。今回
は、ちょっとかちっとしたリフの積み重ねが目立つところが
あって、それをもっと煽情的に電気音を使ってやると、全盛
期電気マイルスになると少し感じた部分も。

 なんで、乗り切れなかったかなー。お酒飲めなかったから
かなー。ぜんぜん、ショーターの事知らなそうな人がいたか
らかなー。なんでブルーノートで彼はやらないのだろうかな
んて思ったら、かつてショーターに起こった悲劇を思い出し
てしまった。JFKから飛び立ったブラジルに向かうヴァリ
グ航空機に積まれた爆発物が離陸後爆発し墜落してしまった
ことがあったのを覚えている人もいると思う。そこにブラジ
ル人だったショーターの奥さん(ちなみに、彼の最初の奥さ
んは日本人。カミさんの国籍みても、やっぱ変わってますね
)が乗り合わせていたのだが、そのとき日本のブルーノート
をツアー中の彼は奥さんが亡くなったにも係わらず、仕事を
続けたのだった。ミュージシャンは辛い、でもそれもまたあ
るべき姿なのか、なんてチラリとそのとき思ったっけかな。               
 2001年2月7日いらいの来日公演。入りがものすごーく良
くなっかった前回と異なり、今回は会場が少し大きくなった
うえにまずまず。ちょっとホっとする。恵比寿・ガーデンホ
ール。ここに来たときの文章っていっつも飲み物事情のダメ
さを書いているような気がし、今回はそーゆーことに触れず
にいようと思ったら、なんと飲み物自体いっさい販売なし。
本当に、ここでは音楽公演が行われないことを願いたい。

 なんか、前回と別もののグループに思える。にっこり。前
回のライヴの項でちらりと触れているが、かつてNYのウェ
ットランズでジャングル・ブラザーズの前座で見たときの好
印象に近い感じ。バンドは、ギター、ベース、キーボード、
ドラム。過剰に腕がたつわけではないが、問題なし。男性3
MCに加えて、女性ヴォーカリストが加わっているのは新た
にして大きなポイントで、なかなか効いていたなあ。ちょっ
と歌モノ度数を増すことによって、<伝統をたっぷりと吸っ
た今の進行形ブラック・ミュージック>という風情もより出
るようになってもいるし。

 結局は生バンドはやっぱりいいなあと、頷く。ジュラシッ
ク5(2002年2月6日、2003年1月17日)ぐらい、キカイが通
った必然性を感じさせる凝った音を出してくれればまた別だ
が。

 本編はちょうど1時間。芸達者なラップ付きドラム・ソロ
で始まったアンコールはまずバック・バンドのソロを十分に
フィーチャーしたもの。ベース奏者はサックスを、キーボー
ド奏者はトペットを手にしてソロを交換し会う。白人のギタ
ーのソロはダサ過ぎ。プレイヤー陣をたっぷりフィーチャー
したたため、こちらも30分で、計1時間半の演奏時間でした


             
 青山・ブルーノート東京。人気テナー・サックス奏者(20
00年3月2日)、なんと今回は、ホーン・セクションとスト
リングス・セクション付きの15人編成のバンドを率いてのも
の。おお、只のセクション奏者として、ピーター・ゴードン
、ボブ・シェパード、ロビン・ユーバンクスといった名手た
ちがいる。さすが、ステージ上にそれだけの人数がいると壮
観ではありますね。なんか、それだけで非常に手間がかかっ
た感じとか、リッチな感じが非常に増幅される。

 大きな編成との共演……、凝ってて重厚な音の帯の上でゆ
うゆうと、ときにスリリングにソロを歌わせる。それは秀で
たソリストなら、やはり一度は取り組んでみたいものだろ
う。その絡みの部分の仕切り役はギル・ゴールドスタイン。
最後に彼のアコーディオンから始まった曲はアタマのほうが
アイリッシュ・トラッドっぽく、途中からジャズっぽくなる
という面白い構成のものだった。全体的な印象は保留。もう
少し、大胆な何かを示していても良かったかもしれない。そ
れから、今回マイケル・ブレッカーを見ていて思ったのは、
やっぱりテナー・サックス奏者は身長があったほうが吹き姿がいいナと
いうこと。その点、平均的な日本人は小さなアルトのほうが
持っていては様になる。逆に、アーサー・ブライスのような
大きめの人がアルトを吹くと、楽器がちょっと小さすぎると
感じ、音がきつく感じてしまう。まあ、全盛期の彼は、刺激
的なサウンドに乗ってリードをビリヒリ鳴らしている
というところが快感でもあったわけだけど。

キャレキシコ

2004年2月15日
 先日のハウ・ゲルプとは深い付き合いがあるバンド。あー
キャレキシコって、キャリフォルニアとメキシコの合成語な
のかと、ステージを見ながら今更気づく。芸達者にして自覚
的な6人の洒落た田舎者たちによるバンド、なんか前よりも
もっとマリアッチぽさとかを出すようになっていて、もとも
とはアリゾナ州がメキシコだったことを思い出させる? 地
をより出した? 

 最後のほうは、前回来日時(2001年12月18日)に前座で出
ていたダブルフェイマスの面々が混ざったりも。ぼくはその
ときのパフォーマンスにいい感想を持てなかったんだよなー
。楽しそうに重なるキャレキシコの人達って本当にいい人達
ね。

                  

スガ・シカオ

2004年2月18日
 新木場・スタジオコースト(ちゃんと、バーがある会場は
本当にうれしい)。スガ・シカオのライヴを見るのは2001月
2月18日の横浜アリーナ公演いらいだが、サポート・メンバ
ーは変わってないのかな。まず、バンド・サウンドの恰好良
さに唸る。もう、無条件に体が揺れちゃう。今回のツアーは
は“シングル・コレクション”という副題がついていて、デ
ビューしてからの16枚だかのシングル曲を全てやりますとい
う趣向のよう。いい曲、ソウル〜ファンクを巧みに日本人の
ものに消化した面白い曲を書いているナと感心。彼の歌声は
けっしてソウルフルではないと思うが、ぜんぜん違和感を覚
えずにニコニコ聞けてしまうのはそれゆえのことと再確認。
先の公演を見た感想として、MCだけがちょっとみたいなこ
とを書いているが、今回はMCもあまりせず、喋ったとして
も結構面白く、それについてもぜんぜん違和感を覚えず。ま
ったくもって、洋楽センスが素晴らしく活きた、日本人によ
る日本人のための娯楽音楽ショウであった。拍手! 

 メンバー紹介のところはハービー・ハンコックのライヴ盤
『V.S.O.P.』の死ぬほど格好良いエレクトリック・セットの
出だしを少し応用。でも、ハンコックたちは、キング・カー
ティスの『ライヴ・アット・フィルモア』(アリサ・フラン
クリンの前座演奏。本編のアリサの実演のほうもアトランテ
ィックからライヴ盤化され、名盤となっている)を例にして
それをやっているんだよね。

 楽しみまくったなか、どうしてなのと思わずにはいられな
かったのは、スガがほとんど生ギターを弾きながら歌うこと
。あれ、純粋に音楽的な響きからそうしているのかな? ス
ライ&ザ・ファミリー・ストーンを捩ってシカオ&ザ・ファ
ミリー・シュガーなぞとずっと名乗ってツアーをやっている
彼。もし、そういうスタンスに倣うなら、スライ・ストーン
(ストラトキャスター)でもカーティス・メイフィールド(
テレキャスター)でもいいのだが、やっぱりエレクトリック
・ギターを持っていたほうが収まりはいいと思えるけど。だ
けど、彼は頑に(と、書きたくなるなあ)アコースティック
・ギターを手にする。ふーむ。それは、ファンク〜R&Bの
底無しの魅力にやられ、オマージュを抱きつつ、それに準じ
たポップ・ミュージックをやりつつも、最終のところでは自
分の領域に留まるのダという、彼の決意のようにもぼくには
思えたのだが。おいらの音楽の自負の象徴、それが彼が持つ
アコスティック・ギターなのだと、ぼくは高揚した頭のなか
で思わずにはいられなかった。               
2月19日(木)
ダッシュボード・コンフェッショナル

 まず、夕方に六本木・タトゥーでV2の新人ケイティ・ロ
ーズのコンヴェンション・ライヴ。約30分。お父さんが大昔
のフォーク・ロック・バンドのポコのメンバーだったという
、まだ17才という(でも、ルックスは若々しさがなかったな
)ロック系シンガー。ギター、ベース、ドラム(この人が下
手な人でした)を従えてのもの。ベタぁっとした歌は良く聞
こえるが、シングル曲以外はいまいち耳に残らない。まあ、
あちらの歌謡曲と思えば、別にどうこう言う気もぼくはあり
ませんね。聞きたい人は勝手聞けばいいし、そういう人が多
いなら勝手に売れれば、という感じ。

 そして、渋谷・Oイーストで、結構売れているダッシュボ
ード・コンフェッショナルを見る。CDを聞いた限りはこの
人もそれほどぼくの趣味ではないが、あちらでは大合唱大会
になるという、ショウ自体に少し興味があった。

 最初、2曲は生ギターの弾き語り。へえ、ハンサムなんだ
ねえ。きちんとしたヘア・スタイルをしていて、アイビー・
リーガーの学生みたいだナと思う。その後はバンドでやった
のだが、演奏陣が出てくると身長がかなり低い人であるのが
分かった。また、それほど曲調に閃きがあるわけでないのは
了解していたが、思った以上にパフォーマンス能力が凡庸な
人であることも。少なくても、レット・ミラー(2003年2月
21日)、ブルー(2003年7月17日)、ジャック・ジョンソン
/ドノヴァン・フランケンライター(2003年9月30日)とい
った記憶に新しいギター弾き語り系の人と比べても、一番彼
が人を引きつける魅力に乏しいと客観的に感じる。少なくて
も、ライヴにおいては。とくにエレクトリック・ギターを彼
が持ってやる曲は閃きのない只のロックという感じに聞こえ
て、ぼくは困った。やっぱり、歌詞の人なのかな。でも、こ
こは東京、そんなに過剰な合唱大会にはならなかったんだけ
どね。

 MMW(2004年1月24日)のときは混んでいるせいもあり
非常に広い会場と感じたが、この日落ちついて見たら、とて
も前後が短い会場であることに気づく。でも、ワインをボト
ル売りしてくれて、それを会場内で気儘にグビグビできるの
は良い。


2月20日(金)
カシミール

 日本では紹介されたばかりの、そこそこのキャリアを持つ
デンマークの4人組。結論から書いてしまうと、なかなか持
ち味良好のロック・バンド。昨日と違って、ぼくはニコニコ
見ちゃった。ギター/歌、キーボード、ベース、ドラム。歌
とギター担当者の存在感をバンドがきちっとバック・アップ
する。歌はそんなに上手いとは思えないが、ちゃんとした歌
心を持っているにゃー。一部はレイディオヘッドを思わせる
ような、ひっかかりのある漂い感を覚えさせたりも。それを
、ゴツゴツとした好ましいロック的な流儀のもと開いていく
。アンコールの1曲目はボブ・ディランのカヴァーと言われ
たら、信じちゃう?                
 それにしも、ここのところの暖かさはいったいなんなのだ
。今年の正月も非常に穏やかなそれでほんわか嬉しくなって
しまったが、一時ちょっと冷えたぐらいで、今年はおうおう
にして温かい。2年前のように今年もサクラが早く咲いちゃ
うのだろうか(2002年3月24日)。なんか仕事つまってるせ
いか、目を細め先の娯楽のことを考えたりして。

 目黒・ブルースアレイジャパン。沼澤尚がリーダーとなる
、4人組の、インストのファンク・バンド。もう1曲1曲が
長〜い、グルーヴ/揺れの変化でずんずん持っていくバンド
。どの曲も20分ぐらいはあったようにも思えるが、基本的に
がちんこな曲調で、柔らいものはやらないので飽きない。と
きに、骨っぽいながらフュージョンみたいになるときもある
が、そういう部分抜きに最強のグルーヴ・バンドを目指して
精進していただきたい。この日は、三分の一の曲で三管が加
わる。キーボードの森俊之はハモンドB−3、ホーナーのク
ラヴィネット、フェンダーのローズという、三大(?)ヴィ
ンテージ・キーボードを並べて奮闘。その品ぞろえにも、バ
ンドの方向性は表れていると言えるか。ファンクの気持ちを
核においた、プラスな何か……それを求めるようとするのが
アズ・ウィ・スピークの進む道だと思う。              

キング・ブリット

2004年2月22日
 南青山・ブルーノート東京、EX−BLUEとういクラブ
形式の出し物。かつて、イヴニング・ブルーという同型のも
のがあったが(2000年5月14日)、その流れを組むものと言
えるか。

 フィラデルフィアの顔役的DJ/プロデューサーの名前を
全面的に出してのもの。彼のDJだけでなく、彼肝入りの7
人編成のバンドも登場する。トランペットも吹くフロントに
立つカナダ人の女性シンガーは近く出るスウィートバック(
シャーデーの男性陣によるユニット)の新作レコーディング
にも入っている人。グレイドの高いバンドではないが、ジャ
ズやソウルやポップなどのジャンル、70年代から現在までの
時制を、おおらかに飛び越そうとするものだったと書けなく
なもない? いや、それは好意的すぎるか。MCによれば、
バンドはキューバやポルトガル出身者などインターナショナ
ルな顔ぶれを揃えていたが、それは意識的なものか? キン
グ・ブリット(なんか拍子抜けするぐらい、ぱっと見は気の
良さそうな人だな)は演奏に加わることなく、ちょっと盛り
上げ役で出てきただけ。DJタイムにはレーザー光線ががん
がん飛んでいた。               
 26歳の、生まれは東海岸側のほうながらサンディエゴをベ
ースとする、ポップな優男シンガー・ソングライター。昨年
に取材したときに「僕の観客は女性ばかり。僕のショウに来
ると女性がいるということで、徐々に男性の客も来るように
なった」と言っていたが、なるほど女性客が多い。けっこう
、渋谷・Oイースト内(この日は会場の上階から客を入れて
いた)には黄色い声援飛んでいましたね。ただ、歌詞をとち
ってもキャーって感じで、本人もならばOKという感じであ
まり悪びれた様子を見せないのはバツ。

 興味深いと言えば、彼はジャム・バンド・ミュージックに
憧れを持っていて、ライヴの録音もその流儀に倣い自由に許
容している。自分の音楽性はジャム・バンドとは違うと認め
つつも。そしたら、03年版のボナルー・フェスの完成度の高
いライヴ盤にも彼のパフォーマンスが収められていたのには
ビックリ。やっぱ音楽性ではなく、その手のプロモーターと
付き合いを持つかどうかが、ジャム・バンド・ミュージック
に近いかどうかの分岐点でしょう。ともあれ、さすがジャム
・バンドに憧れを持つだけあって、けっこう腕の立つバンド
(ギター、ベース、ドラム、キーボード、パーカッション)
を率いていましたね。で、スキャットをかましたりとか、け
っこうバンドとやり取りをしたいという意思も曲によっては
滲ませていた。

 青く、まだまだなところも目についたけど、ダッシュボー
ド・コンフェッショナルよりは違和感なく接っせたか。途中
で、ホール&オーツのヒット曲「アイ・キャント・ゴー・フ
ォー・ザット(ノー・キャン・ドゥー)」(下町兄弟の「結
婚しないシンドローム」もこの曲の有名リフを用いている。
それ、発表されてから10年以上たつな)をあっけらかんとコ
ピーっぽくフルでやったのにはびっくり。高校を出るまでは
ギターを弾いたことがなく、カラオケでマドンナやマイケル
を歌っていたんだよ〜ん、と言っていたのを思い出した。ん
ーやっぱし、よく分からん奴。

ヤン・ガルバレク

2004年2月25日
 ヒリヤード・アンサンブルと一緒にやった公演(2002年2
月13日)いらいの来日。今回は、この北欧の巨人サックス奏
者のメインの表現と言えるだろう、バンドによるニュー・ミ
ュージック路線だ。ずうっとECMから出しているアルバム
はその流れですね。

 エバーハルト・ウェバー(ベース)、マリリン・マズール
(パーカッション)という、ECMのファンだったら身を乗
り出したくなる人達をバックに従えてのもの。もちろん、彼
の同路線を支えるライナー・ブリューニングハウスも同行。
パット・メセニー表現におけるライル・メイズの役を担う彼
はでっぷりしたおっさんだったのにはありゃりゃ。メイズ同
様に、少女趣味的なキーボード音を淡々と載せる人とは到底
思えない。

 なんか、北欧的なキブンとも多分に繋がっているのかもと
思わせるセンチな曲想を柱に、いろいろなパートをどんどん
プログレッシヴ・ロックのようにつないでいく。超然とした
情緒を振りまきながら……。レゲエ調のパートもあったな。
終盤はようやく、そうしたちんたらした曲調のもとガルバレ
クはそれなりにソロをとる。<ジョン・コルトレーンから得
た様々なものを北欧の白人的な体質にイマジネイテウィヴに
転化させた>と言えるだろうその高尚ムード・ミュージック
表現、90年に(『アイ・トック・アップ・ザ・リューンズ』
を出したとき)ガルバレクに電話インタヴューしたことがあ
ったけど、本人も即興音楽の要素があるのは認めつつも「こ
れはジャズではない、でもいろんなものをミックスさせたな
かから新しい芽が見つけられれば」みたいなことを言ってい
たっけ。なんか固定した芸風になってますね。あながち悪い
意味ではなく。

 場所は錦糸町・トリフォニーホール。半蔵門線が延びたお
かげで、うちからは電車一本で行ける。新宿に行くより、気
分的に楽なところあるかも? 距離は3倍ぐらいあるけど。
帰りに、駅前のつばめグリルでご飯を食べていたら(質、下
がったね。ファミレスと思いなさいということか)、やはり
ガルバレク帰りの、プログレ好きの編集者とレコード会社社
員と別々に会う。なるほどなあ。

                   

ワイヤー

2004年2月29日
 なんか、終わったあと、皆ニコニコしていたギグ。

 自分たちが傾倒したパンク/ニュー・ウェイヴ・ムーヴメ
ントはやはり確かなものだったという、ポジティヴな気持ち
を与えてくれたのからかなー。いい実演でした。キレと心意
気とコクと、口ではなかなか表せえないニュー・ウェイヴ的
な美意識がナチュラルに交錯しあっていて。決して過去のも
のではなく、今のイナセなギター・ロックとして響いていた
し。いまだ痩身のおじさんたちの風情も良かったし。

 広がりある効果音的音楽を15分ぐらい流した後に出てきて
サクっとやって、アンコールも2回。でも、演奏してからア
ンコール終了まで、50分にも満たなかったかも。でも、それ
できっちり語り尽くしていたから、問題なくOK。そんな彼
らの前に、フュー(やっぱ、ぼくは苦手ですね)のビッグ・
ピクチャーとメルト・バナナがそれぞれ出てきて好演。それ
も、ワイヤーというバンドの価値を物語っていたと言えるか
。渋谷・クラブクアトロ。