実は、この日はベン・ハーパーにしようか、それともモー
ション・ブルー・ヨコハマでやるジョディ・ワトリーを見に
行こうか迷っていた。でも、ライヴ評の依頼が来たので素直
にこちらに。そんだけライヴに行ってて、やっぱりライヴ評
はけっこう書いているんですかと問われることがあるが、な
らせば月に1〜2本だと思う。基本的には夜は遊びの時間で
あり、(後で原稿を書くときのネタにはなるけど)ライヴを
見るのは完全に余暇です。

 今週はまた寒くなって、会場は行くのに時間と手間がかか
る青海のゼップ東京だから、普段だったら飲めなくても絶対
に車で行っちゃうところだが、昨日のインキュバスをクルマ
で行ってひもじい思いをした(なんか両隣の人達がアルコー
ル持ち込みしてて、余計にそう感じちゃった)のと、ハーパ
ーのライヴだったらそれなりに長いことが分かっていたので
、迷わず電車とモノレールを乗り継ぐ。原稿頼まれている手
前、途中で飲みたくってぷいっと帰ることできないしい。

 ほんと、強くなったよな。多少ボブ・マーリー的味つけあ
りの、地に足つけたどすこいアメリカン・ロックを繰り広げ
る様を見ながら、そう思わずにいられない私。少しソウル色
は後退し(かつてやってたマーヴィンの「セクシャル・ヒー
リング」のカヴァーなどはやらなくなった)、フォークっぽ
いパートも減少し、ロック度数が増している。レコード・デ
ビューして10年たつが、実のところ、当初ぼくは彼のことを
この業界では生き残っていけないと思っていた。その繊細さ
、あまりにいい人ぶりから。昔、日本初来日公演からしばら
くして、偶然NYの路上で会ったとき、日本での公演見まし
たよと話しかけたら、それだけでうるうるしながら抱きつい
てきた、なんてこともあったっけ(そのとき、スカンク・ア
ナウシーの公演会場でノーナ・ヘンドリックスと邂逅したり
も。今ちょっと音楽を離れてて、事業をやっているみたいな
ことを言ってた。ぜんぜん老けてなかった)。

 ステージに出てきたバンドを見てあれれと思ったのは、新
たにギターとキーボード奏者を入れていること。彼らは昨年
のフジ・ロックにも来ているが、そのときもこの新ラインア
ップだったらしい(ぼくは、そのとき別なものを見ているの
で、2001年6月18日以来ハーパーと接することになる)。彼
の強さの獲得は、バンドの充実に比例しているとも書けるか
な。ただし、ソロ・パートをそこそこまかされたギタリスト
(ソツなく、古臭いとも言える単音弾きでたっぷり歌う)は
ぼくのなかではペケ。アウトする感覚がまったくないそれは
、与えられた枠組のなかできっちり規則を守って危なげなく
存在しているという感じのもの。それは、ぼくの生理をイラ
つかせるものだった。なんで、みんなああいう“公務員ギタ
ー”が好きなの?