ジェイソン・モラン(2007年1月16日、2007年1月17日、2008年4月6日、2013年1月6日、2015年1月20日、2015年1月21日)、そしてスガダイロー(2009年1月8日、2009年7月3日、2013年2月19日、2016年2月28日、2016年7月16日)。米国と日本の視野の広い高感度ジャズ・ピアニスト二人の公演は、昨年12月にNYでこの両者で持たれたものの続編となる。東京公演の会場は、赤坂・草月ホール。地下にあるこのホールは横を通る地下鉄の音が漏れ聞こえることでも知られていたが、今回その雑音が一切聞こえず。あら、改善されたのね。

 同じ楽器を奏でつつ、それぞれに培った語法や音楽観やオレ様ノリや瞬発力をシャープに解き放ち、ぶつけたり調和させたり。2部制で持たれ、1部はそれぞれのソロ演奏、2部は差しで丁々発止する。なんにせよ、ジャズの素敵やピアノの奥深さは存分に宙に舞った。2部の方では、最初の方からアンコールまで、ダンサーの田中泯も加わる。大昔からエスタブリッシュされているというイメージを持ってしまう田中泯は72才だが、ばっちり。大きく頷く。

 過去の記載を見てもらうと分かると思うが、ぼくはジェイソン・モランの大ファン。だが、この晩はモランの演奏を受けて始まった1部のセロニアス・モンク的な語彙を用いたりもするソロ・パフォーマンスの際からいたくスガダイローの指さばきに高揚。なにもそれは、スガの指さばきがよく見える席で見たからではないだろう。今回、スガは黒っぽいイディオムの使い方がセクシーだった。モランはこのホール付きのスタンウェイ、スガはレンタルのヤマハを弾いたという。なお、モランは客席に向かって右側に位置。右手(高音)が客席に近いピアノのセッティングが普通で、今回のスガのようにそれと反対側に位置するのはへりくだる側となるそうだ。

▶過去の、ジェイソン・モラン
http://43142.diarynote.jp/200701201417260000/
http://43142.diarynote.jp/200701201418210000/
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201501210901575140/
http://43142.diarynote.jp/201501220923108418/
▶過去の、スガダイロー
http://43142.diarynote.jp/200901091437341082/
http://43142.diarynote.jp/200907131158382767/
http://43142.diarynote.jp/201302201720351212/
http://43142.diarynote.jp/201603011023174338/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160716

<今日の、アフター>
 赤坂で飲むのは、いつ以来だろう。同い年のソウル・メイトと二人で流れようとした2軒目、入る店にちと困る。知人がやっている近くの店に電話したら、“この電話は使われておりません”メッセージが流れびっくり。ええ、閉店しちゃったのお? ともあれ、バーを見つけて入り、ジャック・ダニエルをごんごん頼みつつ3時間ほど陽気に話し込んじゃう。打てば響くような会話ができるというのは、ほんと楽しい。珍しく、この晩は映画の話をけっこうした。
 映画「ラ・ラ・ランド」の話にもなったが、ペケな映画という感想を交換する。音楽の扱いという項目を抜きにして(別に優れているとも、イヤだとも感じなかった)、ミュージカル映画としての華や技巧のなさや(昔のミュージカル映画って、もっとすごかったでしょう)、LAという土地のパっとしない撮り方や(ある意味、LA賛歌の映画でもありますよね)、最後の意図の分からぬ妄想映像パートなどへの疑問など、すべての点で意見の一致を見た。ぼくは渋谷の映画館で見たが、満員だったので、間違いなく話題作なのだろう。だが、ボケた映画と思う。これがもてはやされるというのは、逆説的にハリウッド映画の衰退を物語っているのではないか。それを撮った監督の前作となる音楽パワハラ映画「セッション」はもっと酷いということでも、見解は重なった。