また、カナダ人ジャズ・シンガーを見る。そして、カナダのジャズ水準はなかなかだな、なぞと思う。父親がカナダ・ジャズ界の重鎮ベーシストであるというバーロウさんは凛とした感じの、聡明そうな女性で、サポート陣はギター、テナー・サックス、ウッド・ベースという変則布陣。前回来日時はピアノやドラムがいたそうで、なるほど自在にワーキング・バンドを替えているのか。ふふふと思ってしまったのは、今回のバッキング奏者の風体。30代半ばだろうダーク・スーツに実をかためた彼らはみんな短髪/メガネで、生マジメ銀行員ふう。とくに、サックス奏者は50年代のリー・コニッツにけっこう似ている(顔がもう少しふっくらしている感じ)。

 そんな彼らによる端正/繊細なサウンドに乗ってバーロウは小粋ヴォーカルを楽に乗せて行く。アタマのほうはちょい質感が薄いかと思ったが、途中からはそうした疑問も溶け、軽妙傾向にある純ジャズ歌手としていい線行っているナとしかと思う。4曲は歌いながらシェイカーを振ってのボサノヴァ曲。そのさいはポルトガル語で歌ったりも。機知に富むMC(日本語の散りばめ方もうまい)をはじめショウの進め方や見せ方にも留意する彼女は10センチはあろうかというハイヒールをはいていた。もしかして歌いづらくなるのかもしれないが、それもまた一番いい感じに見られるようにしたいというまっとうなプロ意識ゆえですね。そう、いろんなとこで、彼女はとてもまっとうなジャズ歌手だった。丸の内・コットンクラブ、セカンド・ショウ。