渋谷・O-ウェスト。もう、超満員。ココロあるロック愛好者がいいっぱいいるゾと思えて、なんか胸を撫で下ろす。

 まず、ディア・ハンターのシンガー・ギタリスト、ブラッドフォード・コックスがソロ・パフォーマンスする。アトラス・サウンドと名乗りアルバムも出している彼だが、響くエレクトリック・ギター・サウンドに詠唱とも言いたくもなる、透明度の高い漂う声をのせる。好マッチなその一人パフォーマンスは一部シガー・ロスなんかも想起させるところもあったか。

 続いては、NYブルックリンで結成された自由自在バンド(かつてはフリー・フォークなんても言われたけど、今はきっちりサウンド重視)のアクロン/ファミリーの出番だが、その前にスライ&ザ・ファミリー・ストーン(2008年8月31日、9月2日)の曲が延々と流される。その09年新作『セッテム・ワイルド、セッテム・フリー』のジャケット・カヴァーはスライの『暴動』を想起させるものがあったわけだが……。確かな歌心を柱に好奇心たっぷりにあちこちに行く様に、ぼくはヨ・ラ・テンゴ(2007年2月19日、他)を思いだしたりも。とにかく、広がりかたは鮮やかで、もろにロック・バンド編成でアフリカ音楽をやっているような曲もあれば、80年代初頭のトーキング・ヘッズのファンキー路線を思い出させる曲もアリ。彼らは人力音勝負だがサウンドのリフと肉声がおいしく拮抗する局面にはアニマル・コレクティヴ(2008年3月18日)がちらりと頭をかすめたり……。なるほど、『Meek Warrior』(Young God,04 年)では激腕フリー・ジャズ・ドラマーのハミッド・ドレイク(2004年6月9日)を迎えたことがあるのも納得ですね。実は混んでいてほとんど見えなかった(楽器持ち替えたりもしたのかな?)。でも、音だけでもあまりにうれしい感興を受けたし、今年のトップ級のロックのライヴ・ギグになると確信できました。

 そして、ジョージア州アトランタで組まれた4人組のディアハンターが出てくる。誠実に、やはり歌心に満ちた音響ギター・ロックを披露。ツアーに誘われるなどトレント・レズナーに気に入られていることでも知られるが、シューゲイザーっぽい行き方のなかに心の嵐や心智が存在するか。ぼくはアクロン/ファミリーのほうが気に入ったけど、彼らも聞くにおおいに値するバンドだった。