朝5時半起きで、今日締め切りのCD解説原稿を3本仕上げる。昼一に一本打ち合わせを挟んでだから、再発モノとはいえ、かなりいいスピードで仕事したことになるな。この土日はいろいろ用事が入っていてあまり机に向かう時間が取れそうにないし、プロとしてちゃんと仕事をしたい(締め切りを守りたい)ぼくはちゃんと仕上げたかった。途中で、一瞬やる気が萎えかけるも、なんとか6時過ぎにすべて終わる。ふう。最近、原稿を書くのが遅くなっているような気がしたりもするので、少し自信をとりもどす。眉を吊り上げての仕事でついた澱を落とさんとするかのように、シャワーを浴びる。ふうふう。新宿・ピットインに向かう途中、地下鉄駅のホームで鏡に映った自分の顔をみたらやたら疲れきっていて、びっくり。うひゃあ。

 会場入りすると、ある人から親しげに声をかけられる。が、ぜんぜん誰だか分からない。それは疲労とは別。腹をくくって、「ごめんなさい。ぼく、ぜんぜん誰だか分からないんです」と伝える。そしたら、かつてレコード会社の洋楽制作にいた人で、10年以上ぶりの邂逅。彼はぼくが覚えてないことに少なからずショックを覚えていたようだが、入院療養生活を経たりダイエットしたりしたそうで、見た目は別人。確かに、ぼくは人の顔や名前をすぐに忘れるけど、こりゃしょーがないよー。とはいえ、確かに近しい気持ちを持てた人であったわけで、とってもごめんなさい。

 シャープなピアノの弾き手であるスガダイロー(2009年1月8日)の、ソロ2作目となる「坂本龍馬の拳銃」リリースをフォロウするライヴ。完全にトリオによるパフォーマンスで、アルバムでのリズム隊と同じ人たちを擁するもので、それは大きなポイント。オリジナル曲にせよスタンダードにせよ、そこでの表現はかなりリズム楽器とピアノ音の仕掛けの妙を重視したものであり、ライヴではその噛み合いがさらに鮮やかに大胆になっているところがあったから。彼のそういう志向はジョン・ルイス愛好から来るもののようだが……。あまりロック経験を持たずクラシック→ジャズという経路(だからか、仕掛けに凝っていてもプログ・ロック的手触りは嬉しいことに希薄)はザ・バッド・プラス(2008 年2月20日、他)のイーサン・アイヴァーソン(ピアノ)と同じであり、新作のなかでちょいザ・バッド・プラスを思わせるものもあったが、ライヴはぜんぜんそう感じず。なんでこう行くのという嬉しい戸惑いはスガのほうが与えるわけで、彼はきっちり自分ならではの冒険するジャズを作っていると痛感。いいぞいいぞ。がんがん、海外に呼ばれて不思議じゃないのになー。このフォーマットによる録音は2作分録ってあり、この秋には『坂本龍馬の革靴』という同ソースのアルバムが出る。