渋谷・オーチャードホール、満場。わあ、よく作ったなと、大きく頷く。ドキドキしながら、見れました。

 自然信仰を持ってきた日本とアイルランドの共通するバックグラウンドを、外交関係設立60周年をきに問い直す出し物、と書けるか。その根底にあるのは、ノーベル文学賞も受賞しているアイルランド人詩人/劇作家のウィリアム・バトラー・イェイツ(1865〜1939年)の創作。彼が伝え聞く能への憧憬を秘めて書いた1916年初演戯曲の「鷹の井戸」は後に日本に持ってこられ、能の出し物として改変された「鷹姫」として定着。今回はそこに、アイルランドの革新的コーラス集団であるアヌーナ(2007年12月15日、2009年12月12日、2011年12月7日、2011年12月10日、2014年12月4日、2014年12月6日)の表現を交錯させることで、イェイツの求めた世界や日本とアイルランドの親和性を問い直そうとする。

 能の方は、人間国宝の梅若玄祥を筆頭に伴奏陣や地謡を聞かせる人たちなど19人が登場。一方、アヌーナは7人の男性シンガーと6人の女性シンガーからなる。基本能の流儀で進められる中、アヌーナがいろいろと重なっていき、音楽的にも、視覚的にも、佇まいとしても、いろいろな情報量が幽玄かつ鮮やかに広がっていく様には息を飲む。その足し算、引き算の様は、本当によくできていた。

 実はちゃんとした能の出し物は過去一度しか見たことがなく、どうしても馴染みのあるアヌーナの側からこの公演を見てしまったというところはあったと思う。だが、改めて能の身のこなしや演奏や歌群の凄さを再確認しまくり。とともに、絶妙の触媒となったアヌーナ側のポテンシャルの高さも改めて痛感。(多分)やる方にとっても、見る方に方にとっても得るものだらけであり、これは再演されなきゃ嘘だと感じた。

▶過去の、アヌーナ
http://43142.diarynote.jp/200712161423560000/
http://43142.diarynote.jp/201001051620426983/
http://43142.diarynote.jp/201112171633334584/
http://43142.diarynote.jp/?day=20111210
http://43142.diarynote.jp/201412151250144917/
http://43142.diarynote.jp/201412221527313725/

<今日の、情報>
 バレエ・ダンサーと絡む出し物を持つなど広がる活動も持っているという、主役の梅若玄祥はまさに大御所のよう。能の観覧料は高くないが、彼の名を出した国立能楽堂でのこの1月の出し物は通常の倍の1万円をとっていたので、相当なスターなのだと思う。ちなみに、この日は高い席で6000円だった。入場の際に、今回公演について詳細なブックレットを配っていて、ありがたや。なお、よく聞こえた歌のコンソール扱いは、ザ・チーフタンズ(1999年5月29日、2001年5月20日、2007年6月1日、2012年11月22日、2012年11月30日)やアルタン(2000年5月21日、2002年9月1日、2004年12月17日、2005年3月21日、2009年12月6日、2009年12月12日、2015年12月5日)やアヌーナなどを根こそぎ扱っているアイルランドのトップ・エンジニアであるブライアン・マスターソンがわざわざ来日して担当した。この日のことは、日経新聞電子版に今月中に出ます。
▶過去のザ・チーフタンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm
http://43142.diarynote.jp/200706061351080000/
http://43142.diarynote.jp/201211241109408189/
http://43142.diarynote.jp/201212111331075592/
▶過去の、アルタン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-5.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200412212105020000/
http://43142.diarynote.jp/200503240456350000/
http://43142.diarynote.jp/200912091113106654/
http://43142.diarynote.jp/201001051620426983/
http://43142.diarynote.jp/201512091352434769/