映画「JIMI:栄光への軌跡」
2015年2月27日 音楽 昨日、<背番号10番のロック>と書いたが、ポップ・ミュージック史上もっともそうおいべき存在であるのが、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスではないか。な〜んて。ジミ・ヘンドリックスを扱った映画の試写に行った。4月中旬より、公開される。
“軌跡”なんて言葉が邦題に付けられていたので、不世出のミュージシャンの生涯を追う映画かと思えば、違っていた。彼が英国に渡る前夜のカーティス・ナイトのサポートをしていた1966年夏前のNYのクラブ(チーター。それって、ファニア・オールスターズのライヴ盤で知られる所?)のライヴのシーンが起点。そして、ソロとして英国でデビューし、翌1967年6月のモンタレー・ポップ・フェスティヴァルに出演するため米国の空港に降り立つまでの、1年間のヘンドリックスと周りの英国人(主に、女性)との様々なやりとりを時系列的に、映画は追っている。世界的存在になろうとする変動期の動きに絞って、ヘンドリックスという人間や当時の群像が主題、なり。この映画は、“アート・ロック”期前夜のロンドン音楽状況を知るための副読本となりえよう。映画には、エリック・クラプトン役やポール・マッカトニー役なども出てくる。
監督は、脚本やプロデュースもかねている、1965年生まれ米国人のジョン・リドリー。小説家/脚本家としての実績も持つ御仁のようだが、彼はソロ・デビュー前後のジミ周辺の女性(彼を最初に見いだしたのは、キース・リチャーズの元彼女である、いいとこのお嬢さんのリンダ・キース)を主とする人間模様に興味を持ち、周到にリサーチ。この映画を、ジミ・ヘンドリックスが主役であることを忘れて感動できるものを目指したという。なるほど、ヘンドリックスの音楽的革新性については、あまり言及しようとはしていない。映画は古いロンドンの雰囲気を求めて、ダブリンで撮影されたそう。
ジミ・ヘンドリックス役は、前米総合アルバム/シングル・チャート1位も獲得しているアトランタのヒップホップ・デュオであるアウトキャストの2分の1のアンドレ3000こと、アンドレ・ベンジャミン。これは、リドリーが打診したとのこと。当初はおやじくせえ、身体がゴツいとか思って見ていたが、台詞回しやギターの弾く姿なんかは結構似ていたりもし、徐々に違和感はなくなったので、ベンジャミンは好演と言える。彼、心酔するヘンドリックスの研究/練習をかなりしたみたいだ。ベンジャミンはコプロデューサーとしてもクレジットされていて、これは撮影資金を提供してもいることを示すのか。
音楽を担当するのは、西海岸スタジオ・ミュージシャンの重鎮であるワディ・ワクテル。劇中のヘンドリックス絡みの演奏音は、彼とリー・スクラー(ベース)とケニー・アロノフ(ドラム)という、米国西海岸ロックの立役者と言えるだろうヴェテラン3人が作っている。
謎と思わせるのは、劇中にはボブ・ディラン曲やいろんなブルース・マン曲など既発のものがワクテル主導の劇中音楽とともに使われるが、ヘンドリックスの既発曲は一切使われないこと。かつ、先に触れたワクテルら3人が作る、劇中のヘンドリックスの実演シーン等で出てくる新規録音曲も「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」(このライヴのシーンは、相当にドキドキできた!)や「マニッシュ・ボーイ」とかのカヴァー曲だけで、「パープル・ヘイズ」や「フォクシー・レディ」といった著名ヘンドリックス曲は採用されていない。唯一ヘンドリックス作曲の「レッド・ハウス」は選ばれているが、これはブルース・コードの曲だからなあ。それ、ジミ・ヘンドリックス財産管理会社であるエクスペリエンス・ヘンドリックスとのコネクションを得られなかった(かどうか、まったく知りませんが)から? まあ、受話器で恋人を殴るなんていう、あまり見たくないシーンも映画には出てくるしなー。
<今日の、左利き>
アウトキャストは2006年以降新作を出していないが、昨年フジ・ロックに出演した。女性ベーシストなんかも入っていて良かった、と聞ききました。ともあれ、アンドレ・ベンジャミンは2000年代を回ると俳優をしだして、いくつもの映画に出ているよう。ここでの姿を見ると、それもおおいにアリだろうと思わされる。LL・クール・J、アイス・T、ウィル・スミスら、俳優に転身し成功した米国人ラッパーは散見される。なるほど、楽器もなしにフロントに生身で立ち、そして肉声や言葉の力で勝負するラッパーは俳優業とつながる部分があるのかも、とは容易に思わせることだな……。
“軌跡”なんて言葉が邦題に付けられていたので、不世出のミュージシャンの生涯を追う映画かと思えば、違っていた。彼が英国に渡る前夜のカーティス・ナイトのサポートをしていた1966年夏前のNYのクラブ(チーター。それって、ファニア・オールスターズのライヴ盤で知られる所?)のライヴのシーンが起点。そして、ソロとして英国でデビューし、翌1967年6月のモンタレー・ポップ・フェスティヴァルに出演するため米国の空港に降り立つまでの、1年間のヘンドリックスと周りの英国人(主に、女性)との様々なやりとりを時系列的に、映画は追っている。世界的存在になろうとする変動期の動きに絞って、ヘンドリックスという人間や当時の群像が主題、なり。この映画は、“アート・ロック”期前夜のロンドン音楽状況を知るための副読本となりえよう。映画には、エリック・クラプトン役やポール・マッカトニー役なども出てくる。
監督は、脚本やプロデュースもかねている、1965年生まれ米国人のジョン・リドリー。小説家/脚本家としての実績も持つ御仁のようだが、彼はソロ・デビュー前後のジミ周辺の女性(彼を最初に見いだしたのは、キース・リチャーズの元彼女である、いいとこのお嬢さんのリンダ・キース)を主とする人間模様に興味を持ち、周到にリサーチ。この映画を、ジミ・ヘンドリックスが主役であることを忘れて感動できるものを目指したという。なるほど、ヘンドリックスの音楽的革新性については、あまり言及しようとはしていない。映画は古いロンドンの雰囲気を求めて、ダブリンで撮影されたそう。
ジミ・ヘンドリックス役は、前米総合アルバム/シングル・チャート1位も獲得しているアトランタのヒップホップ・デュオであるアウトキャストの2分の1のアンドレ3000こと、アンドレ・ベンジャミン。これは、リドリーが打診したとのこと。当初はおやじくせえ、身体がゴツいとか思って見ていたが、台詞回しやギターの弾く姿なんかは結構似ていたりもし、徐々に違和感はなくなったので、ベンジャミンは好演と言える。彼、心酔するヘンドリックスの研究/練習をかなりしたみたいだ。ベンジャミンはコプロデューサーとしてもクレジットされていて、これは撮影資金を提供してもいることを示すのか。
音楽を担当するのは、西海岸スタジオ・ミュージシャンの重鎮であるワディ・ワクテル。劇中のヘンドリックス絡みの演奏音は、彼とリー・スクラー(ベース)とケニー・アロノフ(ドラム)という、米国西海岸ロックの立役者と言えるだろうヴェテラン3人が作っている。
謎と思わせるのは、劇中にはボブ・ディラン曲やいろんなブルース・マン曲など既発のものがワクテル主導の劇中音楽とともに使われるが、ヘンドリックスの既発曲は一切使われないこと。かつ、先に触れたワクテルら3人が作る、劇中のヘンドリックスの実演シーン等で出てくる新規録音曲も「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」(このライヴのシーンは、相当にドキドキできた!)や「マニッシュ・ボーイ」とかのカヴァー曲だけで、「パープル・ヘイズ」や「フォクシー・レディ」といった著名ヘンドリックス曲は採用されていない。唯一ヘンドリックス作曲の「レッド・ハウス」は選ばれているが、これはブルース・コードの曲だからなあ。それ、ジミ・ヘンドリックス財産管理会社であるエクスペリエンス・ヘンドリックスとのコネクションを得られなかった(かどうか、まったく知りませんが)から? まあ、受話器で恋人を殴るなんていう、あまり見たくないシーンも映画には出てくるしなー。
<今日の、左利き>
アウトキャストは2006年以降新作を出していないが、昨年フジ・ロックに出演した。女性ベーシストなんかも入っていて良かった、と聞ききました。ともあれ、アンドレ・ベンジャミンは2000年代を回ると俳優をしだして、いくつもの映画に出ているよう。ここでの姿を見ると、それもおおいにアリだろうと思わされる。LL・クール・J、アイス・T、ウィル・スミスら、俳優に転身し成功した米国人ラッパーは散見される。なるほど、楽器もなしにフロントに生身で立ち、そして肉声や言葉の力で勝負するラッパーは俳優業とつながる部分があるのかも、とは容易に思わせることだな……。