挾間美帆

2014年7月10日 音楽
 出光音楽賞という賞の受賞者によるガラ・コンサート。初台・東京オペラシティコンサートホール。2005年のシャクティ公演いらい行くが、こんなにつんと尖った高い天井を持つ会場であるのか。

 同音楽賞は、石油販売の出光が提供しているTV朝日系の長寿音楽番組「題名のない音楽会」を端に置くもの(この日の模様は、同番組で放映されるようだ)だそうで、今回で23年目になるらしい。そして、今年は二人のクラシックのヴァイオリン奏者(小林美樹、成田達輝)とともに、ジャズ作編曲者の狭間も受賞。賞金は300万円のよう。若いクラシック音楽家/研究家を主に讃える賞のようでが、過去にも大西順子(1999年10月9日、2007年9月7日、2010年9月30日、2010年12月22日、2011年2月25日、2011年8月6日)や松永貴志(2003年 7月1日、2004年2月3日)というジャズ・ピアニスト(ともに当時、東芝EMI所属だな)が受賞したことがあるようだ。

 彼女のオーケストラやソロ・アルバム用に書いた曲を組曲風にまとめたものを、沼尻竜典(2008年7月3日、2009年9月4日)指揮の東京シティフィルハーモニック管弦楽団(2006年6月2日)で開く。挾間はピアノも弾くが、オーケストラの音量に負けていた。何も情報なしに聞いたら、ジャズの要素も入った、現代音楽風要素も通る、傾向外のクラシックのオーケストラ表現と思うだろうか。山下洋輔(1999年11月10日、2004年7月27日、2006年3月27日、2009年7月19日、2013年7月27日)の覚えもめでたいジャズ作編曲家という触れ込みのもとリリースされた彼女のNY 録音デビュー作『ジャーニー・トゥ・ジャーニー』(ユニバーサル、2013年。米国はサニーサイドからのリリース)はウェザー・リポートっぽいところが少しあったが、当然この日はそのかけらもないのはとても良かった。編成による柔軟性も彼女は大いに持ち、引き出しは多そうだ。

 それから、音以上に驚いたかもしれないのが、別にほめるところは何も見当たらぬ司会役女子アナウンサーの問いに対する、彼女の実にちゃんとした受け答え。相当に賢く、人知に長けてると、痛感させられてしまった。ぜんぜんテンぱらず、万人に対して明瞭に自分のことや自分の音楽について話す様はすごい。

▶過去の、大西
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/octber1999live.htm
http://43142.diarynote.jp/200709131138020000/
http://43142.diarynote.jp/201010030952428017/
http://43142.diarynote.jp/201012241100592422/
http://43142.diarynote.jp/201102261254532443/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110806
▶過去の、松永
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-7.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040203
▶過去の、沼尻
http://43142.diarynote.jp/200807041128510000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090904
▶過去の、東京シティフィルハーモニック管弦楽団
http://43142.diarynote.jp/200606101341360000/
▶過去の、山下
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040727
http://43142.diarynote.jp/200907221011377741/
http://43142.diarynote.jp/201307291053021427/

<今日の、追悼>
 出光というと思い出すのは、この6月18日に亡くなった大ジャズ・ピアニストのホレス・シルヴァー(1928〜2014年)だ。1950年代中頃のアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの人気隆盛期を支えた、ファンキーを絵に描いたようなピアニスト。とともに、ブルーノート・レコードを代表するアーティストでもあり、創設社主であるアルフレッド・ライオンが引退後に唯一付き合いを持ったミュージシャンとも言われていますね。その1962年作『トーキョー・ブルース』(ブルーノート)のジャケット・カヴァーは、着物を着た女性二人に挟まれてニッコリの彼の図。で、その手前に映っているほうの女性が出光興産創始者の娘というのはよく知られる話。その出光真子(1940年〜)さんは後に映像作家として活動した。ともあれ、作曲家としての才にも恵まれたシルヴァーは「シスター・セイデイ」ほか、いかしたグルーヴィ曲をいろいろと書いている。ぼくがジャズを聞き出すようになったころ、いわゆる新主流派と称された担い手以前の世代のなかで、もっともピンときたブルーノート契約アーティストが彼だった。彼がいなかったら、ぼくのブルーノート・レコード観は少し歪んだものになっていたかもしれない。なお、印象的な顔つきの彼は2分の1がカーボ・ヴェルデ、4分の1はアイルランドの血が入っていたと言われる。